7月12日:BO NINGEN w/tricot @代官山UNIT

〈VS〉シリーズ第2戦は、スロバキアのフェスで初めて会ったtricot。対バンが決まる前から、彼女達のヨーロッパ・ツアーで撮影されたこのPVを観まくり、聴きまくっていた。

tricotの2016年のEP『KABUKU EP』収録曲“節約家”
 

彼女達のバッキバッキのライヴを最初から最後まで鑑賞。やはり自分の足で海外ツアーをしているバンドは性別関係なく、サヴァイヴァル力みたいなものを感じる。

そんなtricotのステージを観ながら衣装に着替え、ストレッチもステージ脇で行い、そのまま気合いを入れて自分達のライヴをする。本当に楽しみにしていたからこそ、殴り合いで負けるわけにはいかない。

対バンとはこのようであるべき。と噛み締め、楽しい時間は一瞬で終わってしまった。いつかまた、再戦希望です。

 

7月13日:EROS ERRORS @阿佐ヶ谷harness

この日はAcid Mothers Temple総帥、河端一氏 とのDuo=EROS ERRORSの1st Album『Physical Eros』Launchパーティー。

こちらのCDは限定300枚プレスにして、シリアル・ナンバー入り、B5ピンナップ・ジャケット仕様。〈過去2度のライヴ音源を編集、更に吉田達也のドラムもオーヴァーダブされ、破壊力も更に増幅! 世代を越えたサイケデリア達の邂逅、暗黒面より光明界へ至らんとする恍惚曼荼羅!!〉

ということで、現在会場販売のみ。筆者の来日公演(次はいつだよ)か、河端さん関連の現場でゲットしてほしい。

表ジャケ
 
裏ジャケ
 

Mainlinerの時もそうだが、河端さんには本当に色々なものを引き出して貰える。特に僕は即興中、理論等で考えるほうではないのだが、一緒に演奏していて自由を与えて貰える。自分は大学在籍中にDavid Toopの即興Workshopの授業で自分の即興演奏についての地盤が出来たと思っているのだが、食品さんや河端さんと即興でDuo公演をさせて頂くうちに、まだまだ拡張していってるのを感じ、嬉しい限りであります。

 

7月14日:Mainliner @UFO club

前日に続いて河端さん、そして志村さん(みみのこと、ex Acid Mothers Temple)を加えてのMainlinerとして1年半ぶりのライヴである。このMainliner、ご存知の方も多いと思うが僕は2013年に加入。ベース/ヴォーカルとしては2代目でして、加入当時はかなりのプレッシャーがありました。

初代はHIGH RISEとしても有名な、言わずと知れた南条麻人氏。Mainliner初期の名曲にして、90sサイケの金字塔。ヴォーカルもベース・ラインも色気がヤバイ。

Mainliner“Black Sky (from mellow out)”
 

この曲を聴いてもらっても分かる通り、Mainlinerは1曲の長さが大体20分ぐらいあり、同じリフが永遠と続くミニマル・サイケ・ミュージックである。BO NINGENを中距離走(×曲数)に例えるならば、Mainlinerは長距離マラソンである。腕への負担も半端なく、あの河端氏をして〈これまでで演奏が一番辛いバンド〉と言わしめるこのプロジェクト。演者もお客さんもランナーズ・ハイになってなんぼのグルグルサイケ空間、僕も1年半ぶりに酔わせて いただきました。

 

7月16日:KISEKI @名古屋JB's

本当に色々なところに挟まってくるKISEKI、この日は食品さんの地元である名古屋でのライヴ。さらに名古屋Hip Hopの聖地であるJB'sでのステージである。ライヴ5連発の初日の出番が28時、さらに即興で1時間というのは大変に鬼畜であったが、踊りまくった後にどのようなライヴができるのか挑戦でもあった。

そしてこの日はLILYちゃん(Seapunkの開祖として知られるUltradamonが性転換して帰ってきた!)from USA、KISEKIは食品さんは地元だが僕はfrom UK、日本フットワーク第一人者であるD.J.Fulltono氏 from 大阪、フットワーク任侠アニキことCRZKNY(くれいじーけにーちゃん)from 広島、そしてそれを迎え撃つ名古屋勢という、まさにベース・ミュージック宇宙戦争と言っても過言でないメンツ。これを一晩に呼んで、DJとしてもブチあげてくれた GOODWEATHERのERI氏にはガチな感謝とリスペクトしかない。

そして名古屋勢のSOMA奏間はロンドン時代の音楽仲間でもある。住む国は違えど、低音で宇宙をめざしていると世界のどこかで会えるものである。僕は過去にクロアチアの〈Dimension〉という低音フェスに出演した際、ステージでサウンドシステムのクルーとして来ていた高校の同級生と再会したこともある。

僕がイギリスに行ってからベーシストとして多大なる影響を受けた低音音楽だが、日本で体験できるだけでもありがたい。それなのに、一晩でこれだけ色の違う低音音楽を聴けるとなれば、自分のライヴ前であろうと踊るしかあるまい。踊りまくったのちに1時間のライヴ(28時開始)は正直かなり疲れたが、素晴らしい低音体験により、とても清々しい朝を迎えられた。

ウルトラデーモンの2012年のEP『Step Into Liquid』収録曲“Step Into Liquid”
 

LILYがUltrademonだった時代からの1曲。Vaporwaveと並び、 Seapunkもインターネットの歪さが表れた音、そしてヴィジュアルである。筆者はこのようなピュアさと悪意、それすらもまとまってミュータントになっている音楽シーンが大好きだ。

本当に最初期から日本のFootwork/Jukeを支えるFulltono氏、今年の10月には食品まつりと共にPolandで開催された〈Unsound Festival〉への出演も果たし、12月にはLAでの〈Low End Theory〉を含むUSツアーも行っている。この2人が世界に羽ばたいていくのは、日本の誇りである。

DJ Fulltonoの2016年のBoiler RoomでのDJセット

 

7月17日:Mainliner @難波Bears

そんな低音体験を終えて少し仮眠、そして電車で2時間半ほどかけて大阪へ。2週間前に自身がショットtheマーライオンと化した大阪へ再上陸である。

大阪のアングラ聖地、難波bearsでMasonna大先生との再会を果たした。この日のMasonna氏は2分20秒という、氏にしてはかなりのロング・セットであった。しかもSTOP & GO的な構成など、かなりの新境地。本人に伝えると笑顔で「今年はこんな感じでいこうかなと思って」と嬉しそうに話してくれた。

10年前にMasonna氏のこのビデオを観て、僕の音楽、パフォーマンスに関しての価値観は180度変わったと言っても良い。ノイズだけでなく、ロックの大先輩なのだ。

そんな短距離走中の短距離走であるMasonna氏のライヴの後に、マラソン的なMainlinerのパフォーマンス。本当に今回、毎日のブッキングが絶妙すぎた。


7月18日:Mainliner @神戸Helluva Lounge

関東にお住まいの方には東京のForestlimitに行くのをオススメしたいのだが、関西地方にお住まいの方にはぜひとも、神戸Helluva Loungeに足を運んで頂きたい。この2店の共通点は、日本にいながら外国にいるような感覚が味わえる、貴重なスポットというところだ。雰囲気やかかっている音楽だけではなく、カルチャーとして日本の音楽シーンとは一線を画している。

Helluva Loungeからは、バンドと共に関西のカルチャーを育てていこうとい気概を感じる。とても色が濃いお店ではあるが、音楽が好きであれば必ず同調できる。と、筆者は思う。この日はそこでRuins吉田達也氏と再会した。河端さんとのEROS ERROSの1stアルバムにて、吉田氏にマスタリングを頼んだのだが、なんとアルバムの大半をしめる2曲目に「ドラム入ってたほうがいいかなと思って」という理由により、ドラムがオーヴァーダブされていた。

たぶんマスタリングを頼んで、ドラムが入って返ってくるのは世界初だと思う。しかもそのドラムが、テンポも拍も変わりまくっている僕と河端さんの音にピッタリ合っているのだ。楽曲として良い方向に昇華したのは言うまでもない。

Ruinsが93年にサンフランシスコで行ったライヴ映像
 

長いことRuins Aloneという吉田氏のソロ・プロジェクトとして活動していたRuinsであるが、期間限定で 第3期ベーシスト増田隆一とのRuinsが活動再開するとの大ニュースが。12月4日には高円寺SHOWBOATでもライヴが行われた。ズルい! UKにも来て!!!

そしてこの日でMainliner千秋楽。今回は3発だけだったけど、新しいことをいっぱい学びました。プライヴェートでは、この日のライヴ前に人生で初めての競艇場に行く。よりによって人生初が尼崎競艇場である。ここでは公開できないようなおっさんの罵声など、最高の音素材が録音できたので、7,000円スッたけど心は穏やかに大快晴。

 

7月19日:Taigen Kawabe Solo @大阪

翌日は大阪に戻り、Kill My 27というバンドにソロで呼んで頂く。この日は自分のライヴの後、Kill My 27のステージにも飛び入りでヴォーカル参加させて頂いた。そして、今年のSavagesツアーから導入した時代遅れのiPhone 5sの液晶がついに割れる。過酷なツアーの身代わりになってくれたのだと思いたい。

そして、この日はまた物凄い再会をすることに。Facebookで数か月前に連絡をくれていた小学生の同級生との、本当に何年ぶりだ?という再会である。しかもその同級生がやっているバンドが 空間現代という、かなり近いところのシーンにいるバンドであったことに驚きを隠せない。前々からmentionしている通り、僕が通っていた和光高校出身のバンドで交流があるのは、先輩のTHE BAWDIES在日ファンク(トランペットの村上基は同級生)、後輩にOpen Reel EnsembleOKAMOTO’Sチャランポランタンなど、数えればキリがないほどいるのだが、まさか小学校の同級生がこんなにカッコ良いバンドを第一線で続けているとは! 数年前からBO NINGENのTaigenはあの〈大元(筆者の名前の漢字はこう書きます)〉ということに気付いていたが、何か音楽的に交わるまで連絡するのはダサい!と、時を待ってくれていたらしい。そしてロンドンでのライヴが決まりそうとのことで、連絡をくれたのだ。こんなに嬉しいことはない。

空間現代の2015年のライヴ映像
 

ライヴ後はカプセルホテル(今回のツアーでどっぷりハマってしまった)の天然温泉とサウナにて、その感動を噛み締めながら身体を浄化させる。翌日はついに、5連戦最後となる渋谷WWWでのBO NINGEN公演だ。

後編へ続く

 

PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。〈フジロック〉やオーストラリアの〈Big Day Out〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、2014年に最新作『III』をドロップ。さらに、37分に及ぶ大曲となる盟友サヴェージズとの共作シングル“Words To The Blind”を発表。そして、2016年には日本限定のミニ・アルバム『Kizetsu no Uta / Live in Paris』(ソニー)をリリースし、2年ぶりに〈フジロック〉へ出演。現在は今年2度目となるプライマル・スクリームのUKツアーに帯同中! そのほか詳しい情報はこちらへ!

BO NINGEN“Kizetsu no Uta”