キースは1990年代末、休慢性疲労症候群で休養に入った。それまでの八面六臂な活躍からして、そのことは周囲を驚かせた。今回、休養前の最後の96年10月のソロ演奏が作品化された。その時のことを冷静に顧みているキースの言葉を知ると彼にとって休養は必要なものだったことが確認できる。キースの中に降臨したメロディが発露され、さらにそのメロディからの触発の連鎖によってキースは演奏を作り出していった。ジャズのフォーバース小節交換における相互インスパイアを自己の中に完結してさらに高みに駆け上がることは、研ぎ澄まされた感性と自由な心の場を必要とするだろう。