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【starRoのLos Angeles云々】Vol.9 Uber運転手からグラミー賞候補になるまで、怒涛の展開見せた個人的な2016年を総括

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  • 2016.12.27

いやあああ、すみませんすみません、すっかり遅くなっちゃいました。前回の投稿はなんと8月? ヤバイっすね。僕はもともとIT会社でプロジェクト・マネージャーをやっていたんですが、辞めた途端に自分のプロジェクトも管理できない始末……。いやでもね、僕がサラリーマン辞めてから1年半が経とうとしていまして、それまでは結構左脳を使っていてバランスも取れていたという自己評価なんですが、その仕事を辞めて音楽制作に専念するようになってからというもの、左脳系機能の後退っぷりが恐ろしいです。よく右脳開発なんちゃらみたいな商品とかがありますけど、もう見たくもない状況。誰か俺に左脳を分けてください!

まあ、それはそうと、今年もそろそろ終わりですね……。2016年は本当にいろいろあったんですが、僕の今年のスタートはホントにしょぼかったです。1月には仕事が入る見込みがまったくなく、おまけに2015年の大晦日もいろいろあってカウントダウン・パーティー出演の話が破談に。とはいえとにかく食っていかないといけないので 、2016年に切り替わった瞬間、僕はUber(タクシーの一種)の運転手として車の中で一人、新年を迎えました。まあ、こういうことを10年以上経験しているアーティストさんもたくさんいると思うので、僕のこんなエピソードは挫折にも入らないと思うのですが。ただ、本来なら出演しているはずのカウントダウン・パーティーに参加すらできず、そのパーティーのお客さんをひたすら送迎するという、その時の自分の立場を象徴するような状況に置かれ、ちょっと自分の心構えが試されている感じがしました。

で、結局1月は音楽の収入は見事にゼロでして、Uberの運転手もしばらくやっていたんですが、はっきり言って収入はスズメの涙。その半年前に辞めた仕事に戻らせてもらう選択肢もなくはなかったかもしれませんが、その時完全に気付いてしまいました――もうあの頃には戻りたくない、ということです。というか、もう後戻りできない。これからどういうふうに収入が入ってくるかも知らんし、どうなるかもわからんが、音楽しかやりたくないと思ってしまったわけです。

そこからですね、2月になって急に流れが変わりました。2月頭の自身初のワンマン・ライヴはオープン前に完売。3月にはBeats 1 Radioで初めて日本の音楽を取り上げた番組のホストに選んでいただいたのです(放送は6月)。世界最大のネット・ラジオで日本にフォーカスを当てた番組をできたということ、そしてその案内人として僕に声をかけてもらったことは、本当に光栄でした。

5月には日本で初めてSound Museum Visionに出演させてもらい、その後、定期的に日本で出演するきっかけを与えていただきました。

夏はアメリカでのフェスの出演やヨーロッパ・ツアーなどもありました。

9月はヒップホップ絡みのアーティストにとっては定番の人気ラジオ「Sway In The Morning」にも出演できました。

「Sway In The Morning」のホスト、スウェイ・ホロウェイ
 

あと、10月にはアルバムも出しましたね。タイトルは『Monday』。リリース後即完売!!!!といったことは全然ないので、買ってない方、ぜひ買ってください! 3年もかけた大作なんです!!

★参考記事
パーティーから離れた安息の場―starRoが初フル作『Monday』でめざした、フロアを意識せずに自分のスタイルで描く新しい音像

あ、そうだ。『Monday』の日本盤限定で入っているボーナス・トラックの“ カクレンボ feat. Chara” が、なぜか海を越えてアメリカで急に評価されております。アメリカの音楽シーン最大のテイスト・メイカーの一つであるラジオ局・KCRWコールドプレイノラ・ジョーンズシガー・ロスベックなどがここで紹介されてブレイク)の〈Today’s Top Tune (今日のオススメの1曲)〉に選ばれました。 僕にとってKCRWは本当に憧れのラジオ局だったので、本当に光栄です。そして何より大好きなCharaさんの歌った曲、しかも日本語で歌われた曲がアメリカでこんなふうに評価されるのは、アメリカで音楽をやってきたアジア人として本当に大きなことです。

そして2016年も終盤に差し掛かり、今年のクライマックス! グラミー賞〈最優秀リミックス・レコーディング賞〉の候補に選ばれるという、自分にとっては〈事件〉に近い出来事が起こりました。

さてさて、そのグラミーですが。ちょうど前回の投稿でもグラミー賞のことに触れていましたし……もっと言うと、3年前にやった日本のメディアのインタヴューでは半ばハッタリで〈3年後にはグラミーを獲ってる〉なんてほざいたこともありました。さらに僕は小学生の頃から洋楽ファンなので、グラミー賞をいつか獲りたいなんて夢を抱いたりもしていたものです。しかしはっきり言って、このタイミングで候補になることは想像だにしていませんでした。そもそもリミックス部門なんて存在さえ知らなかったので、グラミー=歌モノのプロデュースで獲る賞みたいに考えていた僕は、ヒット曲をプロデュースしたわけでもないし……と、完全にグラミーは他人事。

グラミー賞にノミネートされたシルヴァー・レイク・コーラス“Heavy Star Movin’”のstarRoリミックス
 

候補が発表された日――もちろん僕は発表があることさえ知らなかったんですが――朝起きたら前述のBeats 1のディレクターさんから〈おめでとう〉というツイートが入っていまして。寝ぼけていたのもあるんですが、それを見てもしばらく現実と結び付きませんでした。で、とりあえず複数のウェブサイトで確認したところ、確かに僕のリミックスが選ばれている。しかも僕のアーティスト名のスペルが間違っている状態で(笑)。そこでやっと〈あら本当だわ〉とまったくテンションの上がらない状態で認識しました。

というか、正直いまだにテンションは上がっていません(宝くじに当たったらこういうテンションなんだな俺は、ということは再認識)。だって、小学生の時でさえ何かで表彰されたこともないんですもん、現実味なさすぎです。いまの状況を言いますと、周りがざわついているのは確か。これまで連絡をまったく返してこなかった数々の音楽業界の人たちが、手の平を返したように連絡してきます。あとは、これは良い意味で、ですけど、何千年も連絡を取っていなかった元知り合いたちからたくさん祝福の連絡をもらい、また繋がりはじめました(笑)。

そんなわけで、いまは勝手に周りの世界がどんどん変わっている感満載なんですが、冷静に考えてみると、単純に自分の歴史のなかでもっとも大きな出来事の一つになるのはもちろんのこと、これまでこの連載で書いてきたことに関連して、グラミーが非常に意義のあることなのは認識しないといけないし、それを僕は潰さずにちゃんと活かしていかないといけないなと襟を正しています。まず、僕らのようなインターネット内でワイワイやっている超インディーズのシーンでは、たまにグラミーに選ばれた楽曲の制作に関わった人々のなかの一人、みたいな形で受賞した人はこれまでに何人もいますが、名前が前面に出るのはあくまでそれを歌っているメジャーの歌手やラッパーたちです。なので、実はその裏にいる制作者が真の立役者なのにもかかわらず、脚光を浴びることはほとんどなかったりするのです。

★参考記事
【starRoのLos Angeles云々】Vol.7 アメリカをめざす人へ、僕から言える2つのこと

で、今回のリミックス部門ですが、非常にマイナーな部門ではありますが、音を作っている本人が受賞する張本人になってしまうという、プロデューサーにとってはレアな部門でして、良くも悪くも目に留まりやすい。こういう立場に、まだ駆け出し状態の僕が出てしまうのは本当に本当に恐縮なことです。まだ約20年という浅い歴史の部門なのですが、これまでにノミネートされているのは90年代、2000年代のリミックス界を席巻したハウス・ミュージックの巨匠たち、そして最近はEDMのスターたち。そのなかで、今回なぜかコーラス隊の曲のリミックスという変化球なトラックが選ばれたのは、これまでの流れとは全然違います。もちろん、だからこそ今回の受賞レースでは東京都知事選で言うところのマック赤坂氏的な存在になる可能性もかなり高いですが(泣)、万一受賞しちゃったら、単純に一人の音楽ファンとして嬉しい。

今年度のグラミーは、メジャーの力を借りずにずっとインディペンデントでやってきたチャンス・ザ・ラッパーが複数のメイン部門で候補になっていますし、ここ数年はグラミーのみならず音楽業界の表舞台でもメジャーとインディーの壁が崩れつつある転換期。そんななかで僕は豆粒より小さい存在ではありますが、その一部になれれば嬉しいです。だからこそちゃんと受賞して、チャートTOP10常連の音楽だけが音楽じゃないんだぞってことを示したい! 示したーい!

チャンス・ザ・ラッパーの2016年のミックステープ『Coloring Book』。チャンスは第59回グラミー賞で最優秀新人賞、最優秀ラップ・パフォーマンス/ソング/アルバムなど複数部門でノミネートされている(一般流通作品はリリースしていないが)
 

そしてこの連載で何度も触れていますが、アメリカでの音楽業界、とかくポップスやエレクトロニック・ミュージック界ではアジア人の存在感はゼロに等しく、毎日歯痒い想いをしているアジア系の一人として、ここでちゃんと受賞して、アジア系の台頭に微力ながら貢献できたらいいなあと思います。っていうか、グラミーのことは来年2月の授賞式前に書けって感じっすよね。2月までまた書く気ないのか!ということになっちゃいますが。

さてさて改めまして、2016年もあと数日となってしまいましたが、活動的には年内はLAであと1本DJ、そしてアトランタでのカウントダウン・パーティーを残すのみとなりました。ツアーもこの前終わったので、いまはまたひたすら新曲を作っています。来年は新年早々日本へ飛びまして、1月7日に幕張メッセで開催されるフェス〈Electrox 2017〉に出演します(ちょっと他のラインナップと毛色が違うけど大丈夫かな……)。あとはまたアナウンスしますが、2月~3月には立て続けに東京でのイヴェントへの出演予定もありますし、日本のアーティストとのコラボみたいな企画も待っているので、日本にはちょくちょくいますよ。というか、今年もかなり頻繁に東京へ来ていたので、最近東京で人と会ってもみんなリアクション小さい小さい……。なんなら明日渋谷で打ち合わせできますか?という打診も結構いただきますが、毎回LAから11時間かけて飛んできているので、次に街で僕と会った時は、もっと大きなリアクションをお待ちしてます!

とにかくとにかく、今年も日本の皆様には本当に本当にお世話になりました! これからも末長くお力添えのほど、宜しくお願いします。皆様の2017年に幸あれ!! 良いお年をお迎えください。では、また らいねーーーーーん(深いリヴァーブ)。

2016年最後の来日の際、アメリカから付いてきてくれたバンド・メンバー、スタッフ、ツアー・クルー、そして日本でサポートしてくれているトイズファクトリーのスタッフと集合写真。今年はこれまで以上に、日米においてこういった人たちのサポートに助けられた1年でした。来年もよろしくお願いします!

 

PROFILE:starRo


LAを拠点に活動するプロデューサー。いま注目を集めるかの地のレーベル/コレクティヴ・Soulectionに所属し、オリジナル曲の制作に加えてフランク・オーシャンアウトキャストリアーナアッシャーなどのリミックスを自身のSoundCloudで多数公開するほか、滴草由実ら他アーティストへの楽曲提供なども行う。2015年2月に初EP『Emotion』をリリース。コンスタントに現地でライヴ/ツアーも行っている。また、今年はファースト・フル・アルバム『Monday』(MIYA TERRACE/トイズファクトリー)をリリース! そのほか最新情報はこちらでチェック! 

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