Page 3 / 4 1ページ目から読む

フレンチ・タッチ2016

 90年代にカシアスダフト・パンクエティエンヌ・ドゥ・クレシーらが台頭して盛り上がった、いわゆる〈フレンチ・タッチ〉の潮流。そこからハウス勢が盛り上がったのを下地に……ロック・リスナーも魅了した2000年代半ばのエレクトロ・ブーム期を経て……ヒップホップの血を引くパラ・ワンサーキンらが台頭するも……2010年代にはマーブルサウンド・ペレグリーノを興してよりアンダーグラウンドな方向へ潜っていきました……ってことで、2016年。欧州ではフィジカル・リリースのない作品や流通が不安定なブツも多いものの、それでも大雑把に括ってフランス産のクラブ・ミュージックには多様なアプローチによる大粒の作品が(各世代から!)揃っていたように思えます。やや強引ながら、その様子をここで一望しておきましょう。 *出嶌孝次

 

BREAKBOT Still Waters Ed Banger/Because/ワーナー(2016)

マイケル的なカクテル・ディスコや疑似ブラコンをずっとやってきた彼らにすればいろいろ思うこともあっただろうが……ってことで、時代が彼らに追いついたなかでの強力な一作がこちら。ジャスティス、カシアス、オアゾと、もはや老舗なエド・バンガーの勢いは2016年も目立っていた。

 

CASSIUS Ibifornia Interscope(2016)

エデンを抜けてイビフォルニアへ。ダフト・パンクと並んで現行シーンの礎を築いた重鎮の10年ぶりのアルバムも2016年の重要な出来事だった。客演を軸にしたインターナショナル対応な作りはやや予想外だったものの、サウンド・オブ・大自然なムードの表題曲を聴けば今後への期待も膨らむ。

 

CERRONE Red Lips Malligator/Because(2016)

世界的なディスコ復古の影響もあるのか、前年のジョルジオ・モロダー復活を羨んだか……70年代から活躍する元祖フレンチ・タッチ(?)の大御所がナイル・ロジャーズらの演奏を従えて超キャッチーな快作を仕上げてきたのも2016年。妙な色目は使わないけど音に色気はあるのがフレンチらしさ。

 

VARIOUS ARTISTS Bromance Presents Homieland Vol.2 Bromance/ランブリング(2016)

この界隈はブツにならないのも多いので、ブロマンスの看板コンピ第2弾が日本でCD化されたのは嬉しい収穫。ディスタルもいたりしてフレンチ産だけじゃないけど、ヒップホップ・オリエンテッドなワルいエレクトロ系はやはり彼ら。サム・チバがリミックスしたKOHH曲の収録も話題でした。

 

KUNGS Layers Universal(2016)

トゥーロン出身の弱冠19歳(当時)が全仏1位を獲得した“This Girl”は、今様ディープ・ハウストロピカル・ハウスのアーシーな潮流をロスト・フリクエンシーズに続いて証明。いわゆるフレンチ・タッチの流れとは関係ないけど、フロアライクにしてチルな情緒は世界中に波及しているってことで。

 

JEAN TONIQUE You Partyfine/ritmo calentito(2016)

ユクセク主宰のパーティーファインに所属、タキシードのリミックスも手掛けたパリジャンのEP。これぞフレンチ・タッチ!なフィルター・サウンドをアーバンに展開し、やっぱこれだろ感が満点! ユクセク絡みではレーベル・コンピの常連になってるプームの『2016』も超おフランスな良品でした。

 

CLUB CHEVAL Discipline Parlophone(2016)

ヴィタリックリアーナのリミックスで知られたルール出身4人組は、首領ブロディンスキーと同ルートを辿ってブロマンスからメジャー侵攻。表題曲のように硬質なアーバン・エレクトロから昔のニューウェイヴっぽいシンセ・ポップまで、この初作でも現代的な器用さが光っていました。