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次の展開を窺わせるメモリアル・イヤーの逸品たち

 野心的な試みと豊潤な成果を詰め込んだソウルフル&ファンキーな傑作『Blue Blood』をひとつのピークに、KEITAのソロ作『FRAGMENTS』も含め、w-inds.が自然体で追求する音楽的なスリルやカッコ良さ、ヴォーカル・スタイルやサウンド・デザインの先鋭的な魅力は、もはや大仰に説明する必要もなくなっている。デビュー・シングル“Forever Memories”のリリースから15周年の節目を祝し、両国国技館で敢行した記念ライヴでは歴代のシングル全曲を披露した3人だが(その勇姿はBD/DVDの「w-inds. 15th Anniversary Live」で確認されたし)、そんなメモリアル・イヤーならではの賑わいに囲まれた2016年にあっても、新曲リリースの部分で変わらず進行形の姿勢を見せつけてくれたのは頼もしい限りだった。

 まず、5月に投下したシングルが“Boom Word Up”だ。ニュー・ジャック・スウィング感の導入も話題となった表題曲は、80年代のハネたNJS感とはまた異なる意匠を得て、非リアルタイム世代ならではのしなやかなダンス・チューンへ昇華。『Blue Blood』の延長線上にあるシックなライト・ファンク“FUNTIME”などのカップリングも粒揃いだった。一方、8月の“Backstage”では季節も睨んで隆盛のトロピカル・ハウスにアプローチ。チルな音色のトレンディーな意匠をスムースな歌世界と結び付けて咀嚼してみせている。

 そうした流れを思えば、新年の幕開けを告げる“We Don't Need To Talk Anymore”が、メジャー・レイザー以降のモード変化に応じたチェインスモーカーズらとの同時代性をマイルドに備えつつ、独自性の豊かなダンス・トラックに仕上がったのも当然だろう。これらを軸に制作されていると思しきニュー・アルバムの到着が楽しみでならない。 *出嶌孝次

 

2016年にリリースされたw-inds.のシングル。