COLUMN

ギラッド・ヘクセルマンらジャズ新世代が参加、ドラマーのアリ・ホーニッグが変拍子多用したインプロでおとぎ話描いた新作

アリ・ホーニッグ『The Pauper & the Magician』

Ari Hoenig @ Smalls, NYC

 

メロディアスなドラムスがストーリーを描く、架空のサウンド・トラック

 アリ・ホーニッグ(ds)の5年ぶりにリリースしたリーダー作。ホーニッグは10年以上前か ら、グリニッチ・ヴィレッジのジャズ・クラブ、スモールスに毎週月曜日の夜にレギュラー出演し、トリオ、クインテット、ノネットと異なるフォーマットで自らのサウンドを深めてきた。本作は、ホーニッグの2人の子供に聞かせている自作のおとぎ話のサウンド・トラックとして作曲され、ジャズ・フォーマットのインプロヴィゼーションで、ストーリーを語ることに挑戦した。魔法使い(magician)に、不思議な世界に閉じ込められた貧者(pauper)が、子供の無邪気さによって脱出するまでの2人のキャラクターの相克を、遠い国の物語を感じさせるエキゾチックな音階も駆使し壮大な音楽で描いている。

ARI HOENIG The Pauper & the Magician AH-HA Records(2016)

 ナチュラルに聴こえる変拍子を多用し、メロディアスなホーニッグのダイナミックなドラミングを支えるレギュラー・クインテットは、低音部をがっちりと担う長年の盟友オランド・ル・フレミング(b)以外は、ホーニッグの次の世代のアーティストで編成されている。今のニューヨーク・ジャズ・シーンを席巻しているイスラエル出身のアーティストの中でも、最も高い評価を受けていると過言ではないギラッド・ヘクセルマン(g)とシャイ・マエストロ(p)は、コンピング、メロディと目まぐるしく役割をチェンジしサウンドに鮮やかなカラーリングを施している。激しいグルーヴの嵐を、シャープなメロディで突き抜けるのは、エスペランサ・スポルディング(b,vo)、ロイ・ハーグローヴ(tp)の共演で頭角を顕してきているティヴォン・ペニコット(ts) だ。唯一のカヴァー曲 《You are My Sunshine》は番外編で、ショート・フィルムのサウンド・トラックとして録音された。ホーニッグのドラムスでテーマを奏で、ハッピーなセカンド・ライン・ファンクで、エンディングを飾る。ホーニッグのドラミングだけでなく、ヴァーサタイルな作曲の才能も存分に発揮された快作である。