音楽の理論書も随分といろんなものが出てくる時代になった。音律だけについて解説したものから、前号で紹介したアフロ・ラテンのリズムについての技術書などなど、テーマは細分化されそれぞれの問題意識にそった音楽書は、世界的に見てももりだくさんだ。しかし、『音楽の原理』のように美学、カルチュラルスタディーズ的な考察から、演奏技術や作曲法についてまで網羅したものまでとなるとどうだろう。音が音楽化される原理、背景についてこれほど饒舌な本は果たして存在しただろうか。音原理を見つめてきた著者が日本の音楽界に提出したパラダイムの分厚さに納得しつつも、驚きつつ、この総体をシフトする強者の出現が待ち遠しい。