本書はマイルス・デイヴィス本人が語った詳細な自分史のフィクションでありながら、その取材現場の緊張に満ちた空気感、会話までをも網羅した“ドキュメンタリー”の記録。録音禁止が前提の上、気難しく繊細なマイルスへの取材は非常に難しい状況の中、小川隆夫氏は独自の機転をきかせつつ(もちろん苦労もいろいろあり)進行させ、著者でなくては聞けなかったことも多く、本人の口から飛び出すさまざまな話を受け止めた。マイルス語録&エピソード録としての中身の濃さは天下一品。また医師でもある氏をマイルスは「マイ・ドク」と呼び、それが晩年の5年間の交流の深さをも物語る。