75年作『Discreet Music』を起源とするアンビエント・シリーズの最新版は、〈熟考〉と名付けられた全1曲54分のサウンドスケープ。とりとめもなく静かに湧き上がる電子音が、緩やかなグラデーションを描いては消えていき、その繰り返しが次第に時間という概念を消失させる。緻密な計算に基づいた構成に違いないが、そこに一切の作為を滲ませない周到さこそが、イーノの類い稀な天才性を物語っていると言えよう。