INTERVIEW

文化に向かい風吹く時代、水曜日のカンパネラの役割とは? J-Popとしての境界線上で変化肯定する新作『SUPERMAN』を語る

文化に向かい風吹く時代、水曜日のカンパネラの役割とは? J-Popとしての境界線上で変化肯定する新作『SUPERMAN』を語る

シリアスさとコミカルさの綱引きが生んだ異端なる時代の寵児。音楽で変化を肯定するこのシンボルの元に集まれば、新たな時代の潮流を目のあたりにできるはず――

 

いつだって渇望している

 「2016年はゾッとする出来事が多かったなって思うんです。年始から怪しい波が来ているなと感じることが多かった。周りでも病気で倒れる人が多かったり、海外に目を向ければフロリダのLGBTの人たちのコミュニティーになっているバーで銃乱射事件が起こったり、オークランドではレイヴ・パーティーが開催されていた倉庫で大きな火災が起きて、音楽家や芸術家が犠牲になってしまったというニュースを見てすごくショックを受けたし、文化に向かい風が吹いているような感覚を覚えたんですよね。そういう時代に自分は何を表現するべきか、すごく考えることが多かった1年でした」(コムアイ)。

 コムアイはいつだって渇望している。そして、広い視野で世界中の人間社会と文化が発する息吹を浴び、ときに愉悦に浸り、ときに危難を察知する。水曜日のカンパネラの楽曲や存在が全国区になっていくほどに彼女のクリエイティヴィティーが更新される速度は増し、達成したことよりも、達成できなかったことへの口惜しさを強く実感するように。例えば、昨年末の「紅白歌合戦」に出場できなかったことも素直に悔しがり、「まだまだですね」と口にする。

 さりとて、2016年の水曜日のカンパネラの活動は、やはり刺激的であり続けた。3月には〈SXSW〉のステージでアメリカでの初ライヴが実現。そのステージ上でワーナーミュージック(Atlantic)と契約を交わしたことを発表し、6月にEP『UMA』をリリースした。同作にはLAビート・シーンの奇才マシューデヴィッドをはじめ、海外のビートメイカーが4組参加し、〈水曜日のカンパネラ〉という日本生まれの音楽ユニットを広くリプレゼンテーションすると同時に、形成されつつあったパブリック・イメージをみずから破壊するような作品だった。

『UMA』収録曲“ツチノコ”
 

 それと平行して、コムアイは音楽番組のみならず「ワイドナショー」でコメンテーターを務めるなど地上波のTV番組にも数多く出演し、雑誌のカヴァーで彼女の姿を見る機会も増えた。現在進行形で多くのメディアが水曜日のカンパネラ=コムアイという異端なる時代の寵児を語りたがっている。だからこそ、コムアイはライヴという現場におけるパフォーマンス力やエンターテイメント性を向上させることにも余念がない。そして、11月にリリースしたデジタル・シングル 『SUPERKID』を経て、ニュー・アルバム『SUPERMAN』が完成した。

水曜日のカンパネラ SUPERMAN ワーナー(2017)

 

シリアスさとコミカルさ

 「ホントは『SUPERKID』のタイミングで『SUPERMAN』をリリースする予定だったんですよ。だから、『SUPERMAN』というアルバムのタイトルとテーマはだいぶ前から決まっていて」(コムアイ)。

 コムアイが『SUPERMAN』というタイトルに込めた思いは後述するとして、まず本作におけるサウンド面のポイントを挙げていこう。『SUPERKID』に収録された“アラジン”と“カメハメハ大王”を含む全10曲の作詞/作曲はすべてケンモチヒデフミが手掛けている。ジュークフットワークなどのベース・ミュージックフューチャー・ハウスのフィーリングを独創的に昇華したドープなビートと融合するのは、J-Popとしてのボーダーライン上で遊びまくるような構成とキャッチーな旋律。水曜日のカンパネラがここまで築き上げてきた方法論をさらに研ぎ澄ませているトラック群は、サウンド的にもこのアルバムを新たな名刺にしようとする気概を感じさせる。

 「新しさという意味ではクワイト(南アフリカ発祥のアフロ・ハウス)を採り入れた“チャップリン”くらいで。今作は、初めて聴くリスナーに向けて〈これが水曜日のカンパネラですよ〉って伝えられるような、全方位に開かれたサウンドにしたかったんです。今まで採り入れてなかった新しいビートに固執することって、フラットに聴くリスナーには関係ないことなので。一曲一曲、シンプルにビートがカッコ良くて、歌詞もおもしろくて、ラップや歌もキャッチーということにフォーカスして作った10曲ですね」(ケンモチ)。

 「アルバムのコンセプト自体はシリアスな感じなんですけど、そのイメージをケンモチさんに投げて曲を作ってもらうと、真面目な層とバカげた層が幾重にもサンドされるんですよね。トラックは鋭利な感触もあるんだけど、そこに乗っている歌詞はバカげているから。で、最終的に曲を歌う私はまた強い思いを込めている。それはこれまでやってきたことでもあるんですけど、そういった層の厚みやシリアスさとコミカルさが綱引きしている感じがより強くなったと思うんです」(コムアイ)。

 「あと、今作はいつになくコムアイが曲作りをする前にしっかりコンセプトを僕やスタッフにプレゼンしてくれたんです。だから、イメージを共有しやすかったんですよね」(ケンモチ)。

 

シンボル的な立ち位置で

 そこで『SUPERMAN』というタイトルについてである。

 「変化を肯定するアルバムにしたかったんです。数年後か10年後かわからないけれど、大きな時代の変化が訪れてスーパーマンのような救世主が現れたときに私はそこに立ち会いたいし、音楽で応援しておきたくて。それと同時に、時代が変化する過程で死んでいく人も多いから。その人たちを水曜日のカンパネラなりの表現で弔いたいという気持ちもありました。そういう思いもあって、曲のタイトルとなっている人名の(属する)世界地図的な分布も幅広いものになることを意識して。アフリカの神様もいたりね(笑)」(コムアイ)。

 そう語る彼女へ筆者が最後に訊いておきかったのは、水曜日のカンパネラであるコムアイ自身がスーパーマンの役割を背負うつもりはないのか?ということ。コムアイから返ってきた回答はなるほど、このユニットの本質を明示するものだった。

 「私は旗振り役みたいになれたらいいなと思ってるんです。最近、消防博物館に行ったんですけど、江戸時代の町火消って、いろは48組に編成されていて、各組に纏(まとい)という旗印を屋根の上で振り回す人がいるんですよね。で、その纏持ちは実際には火を消さないんですよ(笑)。あくまで〈ここの火はウチの組が消しますよ〉というシンボルであって。その人は火消しが終わるまで屋根の上に立ってなくてはいけない。それで、私もそういうシンボル的な立ち位置でいたいなって思ったんです。水曜日のカンパネラがスーパーマンであるか否かという質問に対する答えは、そんな感じかな」(コムアイ)。 

 
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