左から、TAXMAN、ROY、紗羅マリー、堀口チエ、松田“CHABE”岳二
取材協力:新代田FEVER

 

紗羅マリー(ヴォーカル)と松田“CHABE”岳二(ギター/ヴォーカル)のデュオとしてスタートし、2015年より堀口チエ(ギター)、元Riddim Saunterのリズム隊である古川太一(ドラム)と浜田将充(ベース)が加わり5人編成となったLEARNERSドゥワップガール・ポップなど1940~60年代のナンバーをレパートリーの中心にしつつ、音楽的背景の異なるメンバーがそれぞれのセンスやスキルをぶつけ合ったパンキッシュなアレンジでカヴァーし、その圧倒的な熱量を放つライヴ・パフォーマンスが多くのリスナーを虜にしている。

そうした〈現場〉での熱狂の拡がりも後押しとなり、2015年12月にリリースしたファースト・アルバム『LEARNERS』はロングセラーを記録中。いまだその熱冷めやらぬ彼らが、セカンド・アルバム『More Learners』を発表した。前作同様にカヴァー中心であるものの、90年代初頭に人気を博したUKオルタナティヴの雄、デイジー・チェインソーのヒット曲や、渋谷系文脈で再評価された60年代フランス映画「赤と青のブルース」の主題歌など幅を拡げた選曲と、リズムのコンビネーションやコード進行の面で多彩さを増したアンサンブルが、バンドの現在の勢いを映している。また、音作りの面でもアップデートが窺え、各楽器の輪郭を際立たせたサウンドは、彼らのライヴさながらに活き活きと躍動しており、前作以上にこのバンドの魅力を余すところなく収めた作品だ。

今回はそんな『More Learners』のリリースを記念して、同時期に2年ぶりの新作『NEW』をリリースしたばかりのTHE BAWDIESとの座談会を実施。LEARNERSから松田”CHABE”岳二と紗羅マリー、堀口チエ、THE BAWDIESからROY(ヴォーカル/ベース)、TAXMAN(ギター)の5人に、古のポップ・ミュージックに深く魅了されながら、いまの時代のバンドだからこそ鳴らせるロックンロールを探求している両者の哲学を語り合ってもらった。

LEARNERSの2017年作『More Learners』収録曲“WATER THE FLOWERS”

 

子どもみたいにキラキラした感じがめちゃくちゃ良い

――チャーベさんとROYさん、TAXMANさんは以前からの友人だそうですね。

松田“CHABE”岳二(LEARNERS)「そうなんです。CUBISMO GRAFICO FIVEが〈フジロック〉の前夜祭(2010年)に出たとき、ステージ袖にいたJIM(THE BAWDIES)を引っ張り出してギターを弾かせたんだけど、そのときにはもう友達だったもんね」

ROY(THE BAWDIES)「そんなこともありましたね(笑)。なので知り合ってから10年くらいは経っています」

――それぞれの第一印象は?

チャーベ「たぶん最初はRiddim Saunterか誰かとの対バンで観たんだけど、ROYくんの声にビックリした。〈うわ! こんなバンドがいまいるんだ!〉と、凄く驚いた覚えがある」

ROY「チャーベさんは僕らが物心ついたときからいる人というイメージ(笑)。ライヴハウスにもクラブにもいるし、親しくなる前でも、自分がどこかに行くと〈あ、チャーベさんがいる!〉ということがたくさんあった。だから、いろんなジャンルを越えてアプローチしていく人、いろいろな所との架け橋になっている人なんだなと思っていました」

――確かに。チャーベさんという存在自体が一つのメディアみたいな面がありますよね。

紗羅マリー(LEARNERS)「それ、めちゃくちゃわかりやすい(笑)!」

ROY「僕の言葉にしておいてもらえますか(笑)?」

――ハハハ(笑)。紗羅さんもTHE BAWDIESの2人とはお知り合いみたいですね。

紗羅「私はROYくんとは同じスペシャ(スペースシャワーTV)の番組に出ていたんですよ。曜日は違ったんですけど、私はチャーベさんとやっていて、ROYくんはYOUR SONG IS GOODJxJxさんと共演していた。そういう繋がりもあって、仲良くしていて」

――チエさんとTHE BAWDIESの2人は初対面だと聞いています。

堀口チエ(LEARNERS)「実は私、THE BAWDIESのファンで、ROYさんとも会ったことがあるんですよ」

ROY 「えー!!」

チエ「何年も前のことですけど、シモキタにいたとき、偶然ROYさんがスタジオから出てきたんです。そこで〈すみません、ROYさんですよね?〉と話しかけて(笑)。当時やっていたガールズ・バンドのデモCDを渡したんですよ」

ROY & TAXMAN「うひゃー」

チエ「タワレコで『Awaking of Rhythm And Blues』(2008年)を試聴して、声を聴いた瞬間に一目惚れしちゃいました。なんて言うんだろ……昔の人の声みたいで(笑)。サム・クックとかもTHE BAWDIESを通じて知ったんですよ。その頃はもうロカブライアン・セッツアーは聴いていたんですけど、黒いフィーリングのものはあまり聴いたことがなかったので新鮮でした。ライヴもよく行ってましたよ」

ROY「いやー、嬉しいです」

THE BAWDIESの2008年作『Awaking of Rhythm And Blues』収録曲“I BEG YOU”
 

――では、ROYさんとTAXMANさんはLEARNERSの活動をチェックしていましたか?

TAXMAN(THE BAWDIES)「実は俺、LEARNERSがブラック・リップスの来日公演に出ていたとき(2015年6月)に観ているんですよ」

チャーベ「ホントに!? いまの5人での初ライヴだよ!」

TAXMAN「俺はそのライヴを観て、めちゃくちゃワクワクしたんです。バンドって楽しいんだよなということを再認識したというか。それから昔よく聴いていたガレージをまたメンバーで聴き返して、改めてMC5ソニックスにハマった。LEARNERSの持つ初期衝動感には影響を受けていると思う」

ROY「自分たちが好きな時代の音楽をカヴァーしていることもあって、僕も常に気にはしていました。ライヴはまだ観られていないんですけど、音源からもこの5人は本当に音楽が好きで、演奏していて楽しくて仕方がないという気持ちが伝わってくる。楽しさを伝えるために説明するのではなく、自分たちが楽しんでいるのを観てもらって〈最高じゃん〉と思わせられるバンドですよね。その子供みたいにキラキラした感じがめちゃくちゃ良い」

――ROYさんがLEARNERSに見たキラキラ感と近いものを発しているほかのバンドはいますか?

ROY「僕はもともとガレージが好きなので、いまパッと思いついたのはスワンプ・ラッツという60年代のバンド。とにかくソニックスになりたいという憧れが全開の、良い意味でバカっぽさがあるバンドで、その真っ直ぐな感じが最高に格好良いんですよ。ソニックスよりもさらにファズで歪ませているんだけど、無性にキラキラしていて、音楽が大好きという気持ちが溢れまくっているんですよね。お客さんに対して音楽をやっていない、自分たちの楽しさがいちばんというところがLEARNERSっぽいと思う」

チャーベ「へー、知らなかった。聴きたい!」

スワンプ・ラッツの66年のシングル“Psycho”

 

アカレンジャー4人とマネージャーのチャーベって感じ

――では、ROYさんがLEARNERSの前作と新作『More Learners』を聴いて、変化/進化していると感じた箇所は?

ROY「まずファーストを聴いたときは、ルーツの異なるメンバーが集まっていることにおもしろさを感じたんです。1950~60年代のソウルやロックンロールに傾倒しているバンドは往々にして泥臭くなりがちなんですけど、LEARNERSはまったく古臭さを感じさせない点が新しい。チエちゃんとチャーベさんはルーツ感を出しつつも、リズム隊の2人――太一くんとハマくんは絶対に泥臭くならない。で、紗羅ちゃんのヴォーカルにはルーツを感じられるけれど古臭くない。その異なった5人の魅力が、良い意味でゴチャッとした形で出ていたのがファーストだったと思います」

LEARNERSの 2015年作『LEARNERS』収録曲“I WANT YOU TO BE MY BABY”
 

ROY「そのうえでセカンドは、バンドを続けていくうえで整理されていったものをよりスマートに出した印象でした。紗羅ちゃんのヴォーカルを立てる姿勢が明確になっていますよね。ファーストの時点で、過去の音楽をいまのポピュラー・ミュージックとして鳴らしていたバンドだったけど、新作はいっそう若い人に届く音楽になったと思います」

LEARNERS More Learners KiliKiliVilla(2017)

 

――LEARNERSの皆さんはROYさんの感想を聞いていかがでしょうか?

紗羅「私、こんなこと言えないよ(笑)」

チャーベ「もう100点です(笑)。凄く嬉しいな。言ってくれた通りで、太一とハマがロカやロックンロールをやっていることがおもしろいよね」

ROY「あの2人はLEARNERSの音楽に染まっていかない感じがありますよね。常にミクスチャー感があるというか」

――ルーツの異なる5人という話に通じますが、メンバーそれぞれのキャラクターや個性が立っている点もLEARNERSの魅力です。

ROY「まるで映画みたいなバンドだと思います。チャーベさんという名プロデューサーがいて、センスの塊であるリズム隊がいて、超絶ギター職人のチエちゃんがいて、紗羅マリーというスターがいる。その5人のバランスが凄い」

チャーベ「アカレンジャー4人とマネージャーの俺って感じだよ(笑)。でも、いまの自分にとっては、その感じが楽しい。俺だけときどきキレンジャーやミドレンジャーとして登場する感じ。ちょっと格好つけたいときは、アオレンジャーとしても出ていい?みたいな(笑)」

2015年作『LEARNERS』収録曲、チャーベがメイン・ヴォーカルを取る“SHAMPOO PLANET”。
 

――紗羅さんは前のインタヴューで〈ライヴは5人同士が戦いながら演奏している感じ〉と言っていましたが、それはいまも変わらないですか?

紗羅「むしろ戦いが増える一方ですよ(笑)。太一くんがまず喧嘩を吹っかけてくる」

チャーベ「そうだよね。僕らはほとんどリハに入らないから、基本ぶっつけ本番なんです。にもかかわらず太一は急にデクレッシェンドしたりするから、俺らは戸惑いつつ必死で合わせる。だからライヴに関しては、太一が指揮者なんだよね」

紗羅「そして、そのときにドラムを見ると顔が輝いてるんですよ(笑)」

TAXMAN「ハハハ(笑)。あんなに主役になれるドラマーは見たことがないかも。THE BAWDIESは4人が戦っているという感覚はなくて、4人で団結して向かっていくという気持ちが強いかな」

ROY「でも、〈団結しよう!〉と思って演奏しているわけではない。小さい頃から一緒にいるメンバーだから家族みたいな感じなんですよ」

THE BAWDIESの2015年のライヴ映像
 

チャーベ「THE BAWDIESは幼馴染みだもんね」

ROY「25年以上、一緒にいますからね。だから、誰かが〈よーい、ドン〉と言ったら、4人全員が一斉にダッシュできる。それが染み付いているんです」

TAXMAN「別にリズムがヨレたとかじゃなくても、全員が同じところでミスったりするんですよ」

紗羅「へー、凄い! 双子みたいだね」

ROY「でも、ずっと一緒であるが故に、THE BAWDIESは4人のルーツもほとんど同じだから、更新していくことに苦労する。古く固まった感覚を新しい人に届けるためにはどういう形にすればいいんだろうと、凄く時間をかけて考えています」

チャーベ「LEARNERSはそもそもカヴァーありきで始まっているから、その部分は楽かもしれないね。THE BAWDIESのアルバムを聴くと毎回新しい試みが必ずあるし、常に変化しようと努力しているバンドなんだと思う。LEARNERSはまだそこまで行っていないから」