INTERVIEW

NakamuraEmiの歌に息づく人生―ヒップホップから得たリアリズムが特別なドラマ生み出した新アルバムを語る

NakamuraEmi『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』

NakamuraEmiの歌に息づく人生―ヒップホップから得たリアリズムが特別なドラマ生み出した新アルバムを語る

 メジャーデビューにまつわるあれやこれやを赤裸々すぎる歌詞にして、そのまんま“メジャーデビュー”というタイトルで堂々と世に放つ。そこまで言っちゃう?と驚かされつつ、〈ぶれんじゃねーぞ〉とみずからを鼓舞するメッセージに、じんわりと胸が熱くなる。NakamuraEmiの“メジャーデビュー”は、この遅咲きのシンガー・ソングライターが持つ特別な才能を満天下に知らしめる、エポックメイキングな一曲だった。

 「メジャー・デビューすると、やりたいことができなくなるんじゃないか?ってビビっていたんですけど。でも、実際は毎日が楽しくて、スタッフも家族みたいだし、幸せだなあと思って出来た曲です。私は性格的に、良い意味でも悪い意味でも人に合わせるのが得意で、ただ、人に合わせようとするとどんどん自分らしくなくなっていく。そういう弱さに対して、ビシっと自分に言い聞かせるために、最後に〈ぶれんじゃねーぞ〉という言葉を書きました」。

NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4 コロムビア(2017)

 その“メジャーデビュー”をエンディングに置いた、14か月ぶりのセカンド・アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』は、同曲と対を成す“Rebirth”で幕を開ける。それは20代の終わり頃、弾き語りのバラード・シンガーだった彼女が、ヒップホップを取り込んだ新しいスタイルへと転生する、大きなきっかけになった一曲だ。

 「28、9歳の頃に初めてヒップホップを聴きました。RHYMESTERさんを聴いた時に、人生のこと、家族のこと、世界のこと、平和のこととか、こんなこと歌ってたんだ!って驚いたんです。いままで、恋愛の曲で人を感動させたいと思って歌っていたのが恥ずかしくなって、完全に人生観が変わりました。メロディー先行から言葉が先行になって、初めて韻を踏んで書いたのがこの曲です。〈Can't keep running away 逃げられないぞ〉という歌詞は、大好きなファーサイドの“Runnin'”という曲から貰いました。私がヒップホップの人たちみたいになりたいと思っても、奥底が全然違うから、なかなか精神的には変われないけど、逃げていても同じことばかりだし、変わるしかない。いまもライヴの1曲目にやることが多いんですけど、歌う時にはものすごく喝が入りますね」。

 サウンド面の鍵を握るのは、インディー時代から彼女をバックアップしているプロデューサー、カワムラヒロシとバンド・メンバー。アコースティック・ギターを活かしたオーガニックなヒップホップ・ビートを基本に、ファンキーな“大人の言うことを聞け”、ジャズ風味の“晴人”、フォーキーな“ボブ・ディラン”、サンバのリズムの“ハワイと日本”など、細かな味付けが絶妙に心地良く響く。

 「アレンジは完全に預けてます。私の好きなヒップホップ、ジャズ、レゲエとか、〈こういう感じがいいんです〉というふわっとしたイメージを、全部形にしてくれる。作曲者と言っていいほど、曲に色をつけてくれるのはカワムラさんです。素晴らしい方です」。

 30代半ばの彼女から若い世代へ、大人の言うことを参考にするのも反面教師にするのも君次第だよと語り掛ける“大人の言うことを聞け”。実家で親と暮らす日常を淡々と慈しむ“めしあがれ”。ヒップホップから貰ったリアリズムが、女性らしい丸みを帯びた、柔らかく伸びやかな声で歌われる時、特別なドラマが生まれる。NakamuraEmiの歌には、いまを懸命に生きる人だけが表現し得る、確かに息づく人生がある。

 「がんばっている人、悩んでいる人に聴いて貰えたら嬉しいなと思います。私はいろんな経験をして音楽をやるタイプで、せっかく女性として生まれてきたわけだから、女性としていろんなことを感じながら、経験していきたいですね。結婚して子どもが生まれたりしたら、また全然違う曲になると思うし。ずっと曲を作って、おばあちゃんになっても歌っていたいなと思います」。

 


NakamuraEmi
82年生まれ、神奈川は厚木出身のシンガー・ソングライター。幼少からJ-Popに触れて育つ。2007年に中村絵美として活動を開始。その後、ヒップホップやレゲエなどに感化され、2011年より名義をNakamuraEmiに改める。2012年から始めた〈NIPPONNO ONNAWO UTAU〉シリーズが話題を呼び、2016年1月にこれまでの楽曲を再録した初のフル・アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』でメジャー・デビュー。7月には配信とアナログ限定でライヴ盤『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST RELEASE TOUR LIVE!』を発表。先行配信中の“メジャーデビュー”も話題を集めるなか、ニュー・アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』(コロムビア)を3月8日にリリースする。

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