INTERVIEW

大切な作品を末永く聴かせたい―ハープ奏者・吉野直子がブリテンら20世紀の楽曲に挑んだ、自主レーベル第2弾アルバムを語る

吉野直子『ハープ・リサイタル2~ソナタ、組曲と変奏曲』

(C)Akira Muto

 

世界的ハープ奏者の自主レーベル第2弾は、珠玉の20世紀ソロ作品集

 世界的なハープ奏者として長年国際的な活躍を続ける吉野直子。録音もソニーやユニバーサルなどに多くの名盤を残しているが、2016年に自主レーベル・グラツィオーソ(grazioso)を設立。2020年までに毎年1枚ずつ計5枚を録音予定で、この度、注目の第2弾がリリースされた。5つの収録曲は、いずれも20世紀の重要な作曲家の傑作だ。

吉野直子 ハープ・リサイタル2~ソナタ、組曲と変奏曲 grazioso(2017)

 「レーベル名は、“優美に”や“優雅に”を意味する音楽用語。軽すぎず重すぎもしないから好きなんです。この自主レーベルは、音楽の流行などに左右されず、自分にとって大切な作品を長いスパンで楽しんでいただきたいという思いで作りました。そうなると、再録音したい作品も自ずと増えて。今回は、タイユフェール&クシェネクのソナタとサルツェードの《古代様式の主題による変奏曲》が再録音になります」

 サルツェードは、前回の録音(1987年ソニー)では8つの変奏を抜粋した短縮版を採用したが、今回は11の変奏をすべて演奏した完全版を収録している。

 「昔、ローマやイスラエルのコンクールで自由曲に選んだ、友達のようになじみの深い作品。一般的には聴き映えのする短縮版での演奏が多いのですが、完全版は作曲者の意図がよくわかり、変奏曲としての幅の広さを味わえると思います」

 新録音は、ブリテンの組曲とヒンデミットのソナタ。いずれも吉野らしい知的な解釈と作品への深い愛がよく伝わってくる秀演だ。

 「ブリテンの組曲は、恩師スーザン・マクドナルド先生の得意曲で、私も10代の頃からよく弾いてきました。全5曲の作風は多彩ですが、共通点は男性的で堂々としていること。今回は、全体的にゆったりとしたテンポで、一つひとつの音が美しく粒立つように弾いてみました。ヒンデミットのソナタは、ハーピストの必須項目のような作品。録音も山のようにあるので、昔は何となく避けていたのかも(笑)。若い頃は感覚やノリで弾いている感が強かったですが、近年は全3楽章の立体的構造や、隠れた名旋律の存在などを分析的に把握できるようになってきた気がします」

 今回の自主レーベルでは、プロデューサーも兼任する吉野。そのこだわりはジャケットやレーベルのロゴ(吉野の頭文字N・Yがモチーフ)のデザインにまで及び、当盤のジャケット(マティスを彷彿とさせる色鮮やかなな抽象画)も実に美しい。来年発表予定の第3弾は、J.S.バッハなどの鍵盤作品と弦楽作品をハープ用に編曲した名曲集。瑞々しく充実した名演が期待される。

2011年のパフォーマンス映像
 

LIVE INFORMATION

兵庫芸術文化センター管弦楽団 第96回定期演奏会
○5/26(金)27(土)28(日)
共演:下野竜也(指揮)
曲目:ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ハープ版)
会場:兵庫県立芸術文化センター

吉野直子 ハープ・リサイタル
○6/10(土)
会場:浦安音楽ホール

吉野直子&宮田まゆみ デュオ・コンサート
○6/17(土)
会場:小金井 宮地楽器ホール(小金井市民交流センター)

www.naokoyoshino.com

タグ
関連アーティスト
募集