特別な輝きを放つ歌声がいよいよソロ・デビュー!

 声優デビュー作「神のみぞ知るセカイ」に登場するアイドル、中川かのん名義でフル・アルバム『Birth』を発表したのがちょうど6年前。その時点ですでに新人らしからぬ歌唱力を発揮し、以降もRhodanthe*ワルキューレといったユニット活動を含む膨大なキャラソン仕事や、Q-MHz作品へのゲスト・ヴォーカリストとしての参加など、ここ数年のアニソン界隈において特別な輝きを放ってきた東山奈央。そんな彼女が、待望のファースト・シングル『True Destiny/Chain the world』にて、ソロ・シンガーとしての〈誕生〉を迎えた。

東山奈央 True Destiny/Chain the world flying DOG(2017)

 戦記ファンタジー「チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~」とのWタイアップとなる本作。TV版のエンディング・テーマ“True Destiny”は、Tridentへの曲提供で名を広めたHeart's Cryによる疾走感のあるロック・チューンで、勇ましいなかにも柔らかさを感じさせるのは、彼女の歌声にふくよかな倍音が含まれているからだろう。劇場版のオープニングを飾る“Chain the world”は烈々たる弦アレンジが目まぐるしく場面を転換させていく嵐の如きアップ。可憐なイメージの強い東山だが、ここでは無力PことPowerlessの作/編曲によるダイナミックなサウンドに凛々しく対峙している。両曲とも〈運命〉や〈繋がり〉をテーマに不安を乗り越え前進する強固な意志が歌われており、アニメはもちろん彼女自身の現在の心情ともチェインしていることが、普段より力強い歌唱から伝わるはずだ。

 また、タイプ別で用意されたカップリング曲も充実。〈アニメ盤〉収録の挿入歌“風空花人”ではケルト音楽をベースに雄大な歌世界を広げ、初回限定盤及び通常盤の“I WILL”ではヒゲドライバーを迎えてエアリーな声質を活かしたふんわりと切ないデジタル・ポップに挑戦している。この4曲の振れ幅の大きさが実証する通り、さまざまなタイプの音楽に順応しつつ、自身の清廉な魅力をしっかりと刻む表現力の高さは超一級。早くも次の一手が楽しみでならない。