ブリット・アワードの批評家賞を獲得し、BBCの〈Sound Of 2017〉にも選出された、いま注目すべき自作自演歌手のデビュー作。15歳でヒップホップ・グループのMCとしてラグ・ン・ボーンズを名乗りはじめるも、19歳の時にパブでブルースを演ったところ歌唱力が絶賛され、そこからシンガーに転身したそうな。何しろ歌がうまい。堂々としていて迫力がある。ブルースの感覚も確かに内包しているが、魂で歌っているという意味では〈ソウル・シンガー〉と言ったほうがいいかもしれない。フォーキー・ポップを基調に、曲によってはヒップホップ的なビートも用いながら、聴く者の心に直接訴えかける歌を披露していて、とりわけ中音域から高く伸びる瞬間がシールを想起させる。〈アデルの男性版〉とも言えそうなスケール感のあるバラードも、ただただエモーショナルで素晴らしい。アカペラによる本編のラスト曲を聴くだけで、その類い稀な表現力に唸らされるはず。広い層から支持されそうな大器だ。