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尾崎裕哉がクラシックの殿堂に立つ! ピアノとストリングスなど従えた単独公演〈premium ensemble concert〉をレポ

尾崎裕哉がクラシックの殿堂に立つ! ピアノとストリングスなど従えた単独公演〈premium ensemble concert〉をレポ

厳しくもあたたかい聴衆たちに見守られ、クラシックの殿堂に立つ

 クラシックの新しい魅力と可能性を追究する人気プロジェクト〈billboard classics〉に、ひとりの若い才能が登場し話題を集めた。Digital 1st Single《始まりの街》の配信を翌日に控えた2016年9月4日。シンガー・ソングライターの尾崎裕哉はよみうり大手町ホールのステージに立ち、特別編成の弦楽クァルテットの演奏で瑞々しいオリジナル作品の数々を披露。彼にとって初の本格的なコンサートを成功させた。実はこの新人の異例ともいえるデビュー劇には長いバックストーリーがあるのだが、同年8月に出版された彼の自叙伝『二世』(新潮社)を読めばわかるはず。「誰もが、誰かの二世である。」という名文で始まるこの本で、彼は亡き父親、尾崎豊の“息子”である自分を受け入れ、同じミュージシャンの道を選んで前に進むことを既に宣言していた。

 そして11月27日、今度はクラシックの殿堂である上野の東京文化会館 大ホールを舞台に〈premium ensemble concert〉と題した単独公演に挑んだ。今回はピアノと12人のストリングスにハープが加わった編成で、より多彩で深みのある音色を意識。会場を埋め尽くす観客には彼と同じ20代の若者も少なくはないが、やはり目立つのは40代以上で、間違いなくかつて尾崎豊の歌に魂を揺さぶられた世代。恐らくその多くは、自身が誰よりも尾崎豊のファンであり、父の歌声(息づかいまでそっくり)と意思を受け継ぎつつ、さらにその先を見据えていることまで、全て知り尽くしているかのようだ。そんな先代からの熱心な支持者たちの厳しくも、またあたたかい視線に見守られつつ、コンサートは幕を開けた。

 

【第一部】
[01] Prologue~The Night~
ピアノとストリングスの調べに乗せた英語のポエトリー・リーディングからプログラムはスタート。舞台作品のプロローグ風でもあり、まるでミュージシャン尾崎裕哉の“所信表明演説”のようにもきこえる。

[02] つかめるまで
打ち込みのビートをバックにラップのような歌唱で、父親譲りのファルセットも効果的に使う。「いつまでたっても、前に行けない」というフレーズが印象的。

[03] 君と見た通り雨
10月に淡路夢舞台 野外劇場で行われた〈AWAJI ACOUSTIC MUSIC ISLAND 2016〉出演の際、行き帰りの新幹線の中で書いたという新しい楽曲。ギターの弾き語りで。

[04] 瑠璃色の地球
1986年に発売された松田聖子のアルバム『SUPREME』が初出の名曲をカヴァー。最初はギター弾き語りで、途中(2番)からストリングスが入る展開。

[05] Moonlight
大学時代に書いた曲。低い声から、この日随一の力強い歌声まで駆使。

[06] Road
2012年に「バークリー・カレッジ・オブ・ミュージック」の短期サマー・プログラムに参加して、自分で書いた初めての曲。自らに宛てたメッセージ・ソング的な内容。

[07] With You
禁断の愛についての曲だとか。

 

【第二部】
[08] Smile
ストリングスの演奏に迎えられてステージに登場し、第二部がスタート。

[09] Flower
ギターの弾き語りで始まり、途中からストリングスが入る。思わず手拍子をしたくなるような曲。

[10] 黄昏ゆく街で
1990年発売、尾崎豊の9枚目のシングル曲のカヴァー。ピアノとギター、ヴァイオリンが織りなす美しいアレンジ。

[11] 離れていても
ストリングスだけで。「二人はきっと出会うために生まれた」というフレーズが印象的。

[12] 流れる風のように
ギターで弾き語り。新宿を歩いていた時に、自分の中のボブ・ディランが降りて来てできた曲だとか。日常で感じた現代社会への違和感、寂寥感を歌う。

[13] ふたつの心
日本語のモノローグから、ハープやピアノに導かれて歌い出す。「あたためあう」とか「ふたりは」というフレーズにドキドキ。

[14] 27
27歳の誕生日を迎え、亡くなった父の年齢を超えた時に書いたという曲。裕哉版《僕が僕であるために》かも。

[15] 始まりの街
Digital 1st Single。15歳まで10年間を過ごしたボストンと母親に向けて書かれた。

 

【アンコール】
[16] 音楽が終わる頃
ピアノに導かれ、アンコールの1曲目。ファルセットを多発し、どこか宇多田ヒカルにも通じる路線。

[17] OH MY LITTLE GIRL
最後に…元々はデビュー・アルバム『十七歳の地図』(1983年)の収録曲だが、死後の1994年にテレビドラマ『この世の果て』(フジテレビ系)の主題歌となり、放送に合わせてシングルカットされ、尾崎豊最大のヒットとなった、この名曲をカヴァーしてお別れ。「他の誰でもなく、尾崎裕哉が尾崎豊の曲を歌うことには意味がある」(『二世』より)と自身でも語っている通り、やはり心を掴まれる。

 

 2017年2~3月には初の単独ツアーもスタートし、春にはデビューCD『LET FREEDOM RING』(キング牧師のスピーチからインスピレーションを受けたというタイトル)の発売も控えている。「父が成し遂げられなかったことを果たしたい」という想いを胸に歩き始めた彼にとって、この日のクラシックの殿堂での成功は確かな礎になりそうだ。

2016年11月27日(日)東京文化会館にて

尾崎裕哉の2017年のEP『LET FREEDOM RING』収録曲“サムデイ・スマイル”
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