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【ろっくおん!】第50回 ドアーズのオリジナリティーの萌芽がここに! 蔵出しライヴ音源集『London Fog 1966』

ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり! 専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!

ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。bounceが400号を迎えるタイミングに、おかげさまでこの連載も50回目に突入しました。まあ、そんなことは露知らず、部員たちはいつも通りロック談義に夢中なようで……。

 

【今月のレポート盤】

THE DOORS London Fog 1966 Elektra/ワーナー(2016)

逗子 優「ユノ先輩、どうしたんですか~? もうすぐ卒業だというのに浮かない顔をしていますね~」

梅屋敷由乃「はい。ドアーズの『London Fog 1966』という作品を買ってきたのですが、何だか中身が違うみたいで……。交換してもらおうかしら!?」

逗子「いま流れているこれですか~? ガレージっぽいブルース・ロック・バンドですかね~」

キャス・アンジン「Hello! あら、ドアーズね。素敵だわ」

梅屋敷「え、では間違いないのですね!? それにしても、キャスさんはよくわかりましたわね」

アンジン「当然よ。私の地元LAが誇るレジェンドだし、それにこんなにもセクシーなヴォーカリストはジム・モリソンだけだもの」

逗子「言われてみれば、この歌声はジム以外の何者でもないですね~。だけど、サウンドは僕らがイメージするドアーズじゃないですよ~」

梅屋敷「これはアルバム・デビュー50周年を記念して蔵出しされたライヴ音源なんですって。結成の翌年、かつ初作『The Doors』の前年に録音されたものなので、言われてみれば、まだあのスタイルが確立されていなくても当然ですわね」

アンジン「タイトルの〈ロンドン・フォグ〉とはサンセット・ストリップにあったライヴハウスのことで、この後、彼らは数メートル先のウイスキー・ア・ゴー・ゴーに拠点を移して有名になっていくのよ。ちなみに、当時のステージはブルースのカヴァーが中心だったらしいわ」

逗子「この盤でもBB・キングマディ・ウォーターズを取り上げていますね~。さらに、ウィルソン・ピケットリトル・リチャードらソウル/ロックンロールの有名曲も披露しています~」

梅屋敷「ドアーズは哲学的/文学的な歌詞の評価も高いですが、私たち日本人からすると少し難しい部分もありますよね。それもあって、この初期の音源を聴いていると、良い意味でオーソドックスなロック・バンドみたいで親しみが持てますわ」

アンジン「でも山ほどいた当時のガレージ・バンドとは、やはり一線を画していると思うの。それがもっともわかるのは“Strange Days”かしら!?」

ドアーズの67年作『Strange Days』収録曲“Strange Days”
 

逗子「これって2作目『Strange Days』のタイトル・トラックじゃないですか~! まだ粗削りではあるけど、しっかり曲として完成されていますね~。強烈にサイケだな~」

梅屋敷「陰影のあるオルガンが前面に出ている感じといい、ジムさんの扇情的な歌い回しといい、これこそ私の考えるドアーズの音ですわ!」

アンジン「そうよね。ブルースやソウルのカヴァーに混ざって、“Strange Days”や“The End”など後の代表曲がすでに重要なレパートリーとなっていたことは注目に値するわね」

逗子「おっ、70年の『Morrison Hotel』に収録された“You Make Me Real”も披露していますね~。こっちもアレンジはあまり変わっていないな~」

ドアーズの70年作『Morrison Hotel』収録曲“You Make Me Real”
 

梅屋敷「そう考えますと、このライヴ音源集はドアーズのルーツが知れるのと共に、彼らのオリジナリティーの萌芽も窺えるという点で、とても貴重で歴史的なドキュメントと言えますわね」

逗子「流石はロッ研の前会長らしいまとめですね~」

梅屋敷「友達の付き添いで何となく入部してしまった私も、気付けば卒業までここにいたわけですからね」

アンジン「あら、それは初耳だわ」

逗子「ユノ先輩が入部した頃のロッ研ってどんな感じだったんですか~?」

梅屋敷「じゃあ、お紅茶でも飲みながら話しましょうか。私が初めて部室に来た時は子安先輩というおもしろい方がいて……」

 2012年の連載開始からの部員たちを見守ってきたと思うと、感慨もひとしおです。ところで、もう1人卒業を控える4年生がいたはずですが、彼はいったい!? 【つづく】

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