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新世代ジャズ、トップ・ドラマーの特異な〈スタイル〉を紐解く

MARK GUILIANA 『マーク・ジュリアナ Exploring Your Creativity On The Drumset』 Hudson Music(2016)

 デヴィッド・ボウイの遺作『』を支えたバンド、ダニー・マッキャスリン(テナー・サックス)のグループ(2月/Blue Note Tokyo公演)で来日したドラマー、マーク・ジュリアナを取材。新世代ジャズのトップを走る彼の特異な〈スタイル〉を紐解く教則本『Exploring Your Creativity On The Drumset』が昨年発表され話題となっている。8分音符→3連符→16分音符→3連符というサブディヴィジョン(拍をどう細分化するか)の変化を基として展開していくその内容は、まさにマーク・ジュリアナ・ドラミングの核となるものだ。「サブディヴィジョンが一定の方が一般のリスナーにとっては、音楽と自分との関係を築きやすいのは理解している。でも僕は、サブディヴィジョンが変化する効果が気に入ってるし、それこそが僕が表現したいことだった。さらにエレクトロニカの影響から、完全に正確なテンポで、サブディヴィジョンの変化でも乱れない、正確なリズム感を身につけることが重要になった。それでこの練習法を考えたんだ」

MARK GUILIANA JAZZ QUARTET 『Family First』 Beat Music Productions/AGATE/インパートメント(2015)

 その〈スタイル〉は、マークの2つの異なるプロジェクト、Beat MusicとJazz Quartetと確実に繋がっており、Jazz Quartetの『Family First』のM1“One Month”(2つのプロジェクトの橋渡し的な意味もある楽曲)にも顕著に表出される。「いかにその音楽にふさわしいプレイを提供するかが重要だ。音楽によってサウンドも違うし、必要なダイナミクス・レンジも違うし、音量自体も違う。そのために楽器を選んだり、チューニングを選んだり、シンバルの選択を変えたりはするけど、目的、音楽的な役割、考え方は、2つはまったく同じだよ。ただ、Beat Musicの曲はドラムのパターン、フレーズがモチーフになって、そこからベース・ライン、メロディを考えたりする。Jazz Quartetの曲は、メロディやコード進行、そういったものが先に出来たものが多い。逆に言うと、曲のアイディアをドラム・パターンから思いつくか、メロディから思いつくかで、どっちのプロジェクトの音楽になるのかが決まる。そしてサウンドはやっぱりどっちの音楽に合うのかっていうのが一番わかりやすい要素でもあるから、そこで決まることもある」

「僕が好きなドラマーは、バンドの一員として一緒に音楽を演奏して、その中で反応し合ってアンサンブルを構築していく、そういうタイプだ。自分の境地として、これから目指していくのもそういうドラマーなんだ。自分の個性も、あくまで音楽を通じて伸ばしていく。音楽に対して、どれだけベストな貢献ができるのかを常に考えているんだ」と今後の向かうべきドラマーとしての〈スタイル〉をマークは教えてくれた。