ゲルギエフに「新しいムラヴィンスキー」と呼ばれたユロフスキ(1972~)が、首席指揮者を務めるロンドン・フィルとともにこの秋、いよいよ初来日する。エイベックスは同コンビのCDを続々と発売しているが、これもその1枚である。音楽をさり気なく進めながら、全ての楽器が見渡せる透明感と最高の感覚美をもち、その中で楽器の浮き沈みや多彩なニュアンスで意味深い表情をつけてゆくところ、確かにムラヴィンスキーを思わせるものがある。第1楽章序奏部の軽やかな歩みなど、独墺系の巨匠達によるヒロイックな解釈を知る耳には衝撃的でさえあるが、この独創的な美の世界こそユロフスキの魅力なのである。