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チェインスモーカーズ『Memories...Do Not Open』 2016年制したデュオ、コールドプレイとの共作含む新作で内省的なポップへ

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  • 2017.04.10
チェインスモーカーズ『Memories...Do Not Open』 2016年制したデュオ、コールドプレイとの共作含む新作で内省的なポップへ

 〈このアルバムには全身全霊を込めたし、それを感じ取ってくれると信じてる〉——チェインスモーカーズがInstagramにそうポストしたのは3月初めのこと。先だってのグラミー賞では〈最優秀新人〉を含む3部門にノミネートされ、そのうち〈最優秀ダンス・レコーディング〉部門を“Don't Let Me Down”で見事に受賞したわけだが、そうでなくても彼らが2016年のポップ・シーンにおける最大のヒットメイカーだったのは満場一致の事実だろう。ホールジーをフィーチャーした“Closer”は全米チャートの首位を12週独走し、デイヤをフックアップした先述の“Don't Let Me Down”も全米3位を記録。そうした伝統的な権威を離れて換算するならば、音源や動画の再生回数も桁外れである。そんな最強コンビが、最高のタイミングでいよいよ初めてのフル・アルバム『Memories...Do Not Open』を完成させたのだ。

THE CHAINSMOKERS Memories...Do Not Open Disruptor/Columbia/ソニー(2017)

 チェインスモーカーズは、アレックス・ポール(写真左)とドリュー・タガート(写真右)から成るDJ/クリエイター・デュオ。2012年にアレックスと別メンバーによってNYで結成されるも、相棒の脱退を受け、マネージメントに引き合わされた同士で組んだコンビだ。当時は北米に〈EDM〉が上陸し、北欧をはじめとするヨーロッパ各国やカナダ、オーストラリアから多くのEDMクリエイターたちがUSメジャー入りをしていた頃だ。チェインスモーカーズのデビュー・シングル“Erase”もインタースコープから出ているが、その関係は長く続かず。彼らが最初にブレイクするのは、ディムマックから2014年に発表した“#Selfie”だった。いわゆる〈自撮り〉を主題にしたことから多くのセルフィーと共に楽曲が拡散され、その頃はバウアーの“Harlem Shake”に続くバイラル・ヒットと騒がれていたものだ(日本ではMAXのカヴァーで記憶している人もいるかも?)。そして、まだ比較的ストレートな プログレッシヴ~エレクトロ・ハウスを作っていた2人の志向は、トレンドの変遷にもリンクして徐々にキャッチーなポップ性を追求していくことになる。

 現在にまで至るチェインスモーカーズなりの王道路線が定まったのは、ロゼスが歌うスナッピンなフューチャー・ベースの“Roses”あたりからだろう。ソニー系列のディスラプターを新たな拠点として放ったこのシングルは全米チャートの6位まで浮上。いわゆるビッグルーム的なスタイルのダンス・ミュージックが(USのポップ・マーケットにおいて)落ち着いていった時流にもうまくハマったのだろう。そこからはBPMもさらに下がり、トラップ・ポップとでも形容すべき“Don't Let Me Down”、そして“Closer”やフューチャー・ベースの“All We Know”など2016年に入ってのヒットはいずれもベッドルーム的な内省のフィーリングを音の面でも表現することになっている。そう思えば、アルバムの先行曲となった“Paris”やコールドプレイとのコラボ“Something Just Like This”がよりメランコリックなシンセ・ポップに移行した理由も明白じゃないだろうか。

 〈曲作りを進めていくうちに、楽曲がどんどんパーソナルなものになっていって、言いたいことがたくさんあるんだって気付いた〉とは、ふたたび本人たちの弁。プライヴェートな記憶を集めて生まれたアルバム『Memories...Do Not Open』にはこれまで以上にソング・オリエンテッドな楽曲が並んでいる。馴染みのエミリー・ウォーレンをはじめ、本国フランスではすでに大人気のシンガー/女優であるルアンヌ、さらにジェネイ・アイコもフィーチャーしているとあれば、そこに漂うトーンやマナーもある程度は推し量れるかもしれない。磨き上げられた楽曲と共に、彼らの進化が体感できるのはもうすぐだ。

 


チェインスモーカーズ
アレックス・ポールとドリュー・タガートから成るDJデュオ。2012年にアレックスとレット・ビクスラーによって結成される。同年のレット脱退後にドリューが加入し、ファースト・シングル“Erase”をリリース。2014年にディムマックから発表した“#Selfie”が各国のチャート入りするヒットを記録。翌年にディスラプターと契約し、ロゼスをフィーチャーした“Roses”が全米6位まで浮上する。2016年に入るとデイヤを迎えたシングル“Don't Let Me Down”が全米3位、続くホールジーとの“Closer”は12週連続で全米1位を記録。今年に入ってグラミー受賞も話題となるなか、ファースト・アルバム『Memories...Do Not Open』(Disruptor/Columbia/ソニー)を4月7日にリリースする。