スナーキー・パピー作品への客演も記憶に新しいUSのシンガー・ソングライター。エイミー・ワインハウス仕事で有名なトロイ・ミラーとスナーキーのマイケル・リーグが共同プロデュースしたこの初のソロ名義作では、フォークやチェンバー・ポップ、インディー・ロックが隣り合うハイブリッドなジャズを展開している。そのなかで耳を捉えるのは随所に配置された緻密なコーラスワーク、それらが生み出す玄妙な音宇宙だ。声のトーンや重ね方に変化を加え、さまざまな物語を浮かび上がらせていく設計が実に巧みで、挑戦的かつ実験的ながら落としどころはことごとくポップという点も見事。そんな美しきアルバムに彩りを添えるローラ・マヴーラやデヴィッド・クロスビーら、ゲストの貢献ぶりも見逃せない。とりわけハーモナイザーの天才的な使い手、ジェイコブ・コリアーが参加したスティーヴィー・ワンダー“As”のカヴァーは出色で、コクのある両者の歌声が極上の時間を与えてくれる。