どこでどうしていたのか、ベスト盤『あとがき』の後に何を綴るのか——姿を消していた鬼が帰ってきた。オリジナル作としては『蛾』以来5年ぶり。自身の煩悶をやおら語り出す“懊悩”から変わらぬラップのいかがわしい情緒に誘い込まれてしまう。己の業の深さと足取りの危うさを、自嘲を交えつつ妙に軽やかに描いていく筆致は彼ならではのもので、総じて簡素なループも印象的だ。堕落の終幕“壊れた玩具”の読後感が凄まじい。