音楽史の理論的文化的パースペクティヴを提示してみせた近藤秀秋氏は、その自著『音楽の原理』にギターのための自作品をCDRでこっそり忍ばせてもいた。フーガ的な方法によって精緻に構成された作品を聴いた後、同氏がレーベルも主催していることを知った。Bishop Recordsの最新作は、ピアニストとパーカッショニストによるアルバムで、全編即興。ライヴ・レコーディングしたものを近藤氏が編集したものだ。二人のデュオを眺めつつ、記録された音のパースペクティヴから、濃密な表現のテリトリーを探り、アルバムの消失点を作り出す。演奏の記憶を超えた視点と、演奏の記録の起点である二人のアーティストの見事な記録。