COLUMN

アルカ『Arca』 少年ぽさの残るヴォーカルが文学的な詩情を醸造、これまでと異なるセクシャルでストレンジなイメージの背景

アルカ『Arca』 少年ぽさの残るヴォーカルが文学的な詩情を醸造、これまでと異なるセクシャルでストレンジなイメージの背景

ベネズエラ出身、世界が注目するトラックメーカー/プロデューサーの新作には初のヴォーカル作品も!

 まるでチャントのような、どこか宗教的でプリミティブな情感が伝わってくるヴォーカルと、最小限のノイズ的な電子音でつくられる独特の世界。ミュート・レコーズからの衝撃的な2枚のアルバムを経て、今回XLレコーディングスに移籍したアルカこと、アレハンドロ・ゲルシの3作目がリリースされた。

 先行して公開されたシングル「Piel」では、初めて自身によるヴォーカルを披露。どこか少年ぽさの残る訥々としたヴォーカルは、極めて内省的で、どこかメランコリックだ。不穏なムードを盛り上げる、切り裂くような、でも控えめな電子音と合わさり、なんとも文学的な詩情を醸し出す。同じくリリース前に公開された 『Anoche』では、前2作でもタッグを組んだジェシー・カンダの手によるミュージック・ビデオも制作され、確認することができるが、どこかイキ過ぎた感のある前作までの様相とは異なり、少しベクトルの異なる、セクシャルでストレンジなイメージを模索しているようにも感じられた。

 自らの内面への探求と耽溺と表現、肉体、あるいは生体の機能や質感に対する執着と興味、そしてセクシュアリティーに関することへのためらいのない表出、そして異質なものや異形なものへの共感にも似た感情など、アルカの発する音像は、どんな人をも極めてパーソナルな存在に立ち返らせてしまうようなパワーがある。だからこそ、聴く人によっては、“生理的に”嫌悪感をもつ人もいるのかもしれない。

 今やカニエ・ウェストやビョークらの大物からも支持され、FKAツイッグスなどの新鋭らとのコラボも盛んな、ヒップな存在となったアルカ。そのサウンドやビジュアルからエイフェックス・ツインと比較されやすいが、その系統は認めるにしてもむしろ、デヴィッド・クローネンバーグの映画作品の感覚に近いのではないのだろうか。ともかく、この世界観が今後またどんな進化をみせてゆくのか、興味は尽きない。

 


LIVE INFORMATION

〈フジロック〉にジェシー・カンダと共にAVセットで初登場
○7/28(金) 29日(土) 30日(日)
会場:新潟県湯沢町苗場スキー場
www.fujirockfestival.com/

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