INTERVIEW

生活がどうなっても音楽はできる―my letter × cinema staff辻友貴が語る、〈超ツボ〉な音楽性と終わりのないバンド・マジック

my letter『僕のミュージックマシーン』

(左から)おざわさよこ、キヌガサ、辻友貴、まつもと

 

70年代のNYパンクに対する憧れと、リアルタイムで吸収してきた90~2000年代のUSインディー・ロックを背景に、美しくも歪な、心地良くも切れ味鋭いアンサンブルを聴かせる京都発のアート・パンク・バンド、my letterがセカンド・アルバム『僕のミュージックマシーン』を完成させた。2014年の前作『my letter』の発表後、ドラマーが脱退し、さらにはメンバー全員が京都を離れ、現在はそれぞれが離れた場所で暮らしているものの、旧知のサポート・メンバーを迎える形で曲作りと録音を敢行。音色や曲調の面でより自由度が増していると同時に、わずかに零れ落ちるメランコリーが胸を打つ作品に仕上がっている。ヴェルヴェット・アンダーグランドからヨ・ラ・テンゴ、そしてmy letterへ――そんな系譜を感じずにはいられない、音楽の豊潤な歴史の流れがここには確かに存在している。

今回はかねてよりmy letterの大ファンを公言するcinema staffのギタリスト・辻友貴を迎え、彼が店長を務める東京・新代田のレコード・ショップ兼立ち飲み居酒屋〈えるえふる〉にて、お酒を酌み交わしながらの座談会を実施。作品の魅力を語り合ってもらうのはもちろん、メンバーそれぞれ住む場所も仕事も違いながらバンドを続けるmy letterと、メジャー・レーベルから作品を発表しつつ、個人でお店や自主レーベル〈like a fool records〉の運営も手掛けている辻に、バンドを続けることの難しさと喜びについても語り合ってもらった。

my letter 僕のミュージックマシーン &(2017)

 

my letterはギター2本の絡みが超ツボ

――まずは両者の出会いから話していただけますか?

辻友貴「実は、まだ僕が名古屋でディストロをやってたときに、〈CD扱わせてほしいです〉って、キヌガサさんにメールしてるんです。今日ここに来る前に履歴を見返してきたら、2011年でした」

キヌガサ(ヴォーカル/ギター)「一番最初のデモCDを出したときですね。“壁”と、今回のアルバムに入ってる“明日になれば”が入ってました」

――辻くんはどうやってmy letterのことを知ったんですか?

「当時は京都のdOPPOとかbedのシーンが盛り上がってて、名古屋にもよく来てたので、その流れでmy letterのことも知って、メールを送ったのかな」

おざわさよこ(ベース/キーボード/コーラス)「でも、その頃は私たちにとってbedとかってめっちゃ憧れだったし、めっちゃビビってた(笑)。FLUIDとかもそうで、ライヴ観に行って、喋りかけずに帰ってくるみたいな(笑)」

――辻くんは以前からmy letterのことを〈超ツボ〉だと言っていましたが、具体的に、どのあたりがツボなのでしょう?

「自分はギタリストなので、やっぱり最初はギターを聴いちゃうんですけど、my letterはギター2本の絡みが超ツボなんです。シネマもギター2本なんで、それをどう使って曲にするかはずっと考えてきたんですけど、my letterはすごく絶妙な絡みで曲になってて、そこはギタリストとして憧れます」

キヌガサ「自分がバンドを始めるにあたってのコンセプトというか、自論としてあったのは、鳴ってるフレーズが全部カッコ良かったら、カッコイイ音楽ができるはずだってことだったんですよね。ピンバックとかそうですけど、どのフレーズを抜いてもそれぞれがカッコ良くて、それが合わされば、アンサンブルとしてもカッコイイはずだって。まあ、そもそも曲の作り方をあんまりわかってなかったので、フレーズを一個一個作って、それを足していけばいいだろうとしか考えられなかったんですけど(笑)」

2014年作『my letter』収録曲“アメリカ”
ピンバックの2004年作『Summer In Abaddon』収録曲“Fortress”
 

――絡みが超ツボだっていうのは、おそらく聴いてきたルーツが近いということで、ピンバックは辻くんも大好きだと思うんですね。実際、それぞれのギタリストとしての影響源を挙げてもらうと、どんな名前が出てくるのでしょうか?

キヌガサ「ピンバックとか、あとはペイヴメントみたいな、ちょっと力技なギター・アレンジも好きなんですけど、現時点で一番すごいと思ってるのはテレヴィジョンのセカンド(78年作『Adventure』)ですね。トム・ヴァーレインのソロも一通り聴いたんですけど、何かちょっと物足りなくて、そこはやっぱりバンド・マジックなのかなって」

――ファースト(77年作『Marquee Moon』)でもサード(92年作『Television』)でもなく、セカンドなのはなぜなのでしょうか?

キヌガサ「ファーストは音がちょっと歪み過ぎてて、悪い感じなんですよね。逆に、サードはモダンな音になってて、ギラッとしちゃってる。セカンドはポップスに寄せてる感じがあって、音数が増えて、シンセも上手く使われてて、キラキラしてる。あの感じが今の自分には一番しっくり来るんですよね」

テレヴィジョン『Adventure』収録曲“Days”
 

――まつもとさんはいかがですか?

まつもと(ギター)「僕はギターの絡みに関してはmy letterに入ってからキヌガサさんに教えてもらった部分が大きくて、その前はシューゲイザーとか、(音が)ブワーっていうのばっかり聴いてたんです。マイブラ、ペイル・セインツ、オール・ナチュラル(・レモン&ライム・フレイヴァーズ)とか、その辺の界隈を聴いてて、40個くらいエフェクターを並べれば勝ちだと思ってたんですけど、お金がなくて無理でした(笑)」

――好きなギタリストを一人だけ挙げろと言われたら?

まつもと「難しいな……全然違っちゃうんですけど、エリオット・スミスのギターがめっちゃ好きです。アコギのアルペジオのきれいな感じもすごく好きなんですよね」

――辻くんはいかがですか?

「一人挙げろと言われたら、ジョン・フルシアンテですかね。シンプルで、単純なことをやってるんだけど、熱を感じるギターがすごいなって。でも、絡みがかっこいいなって思うようになったのは、エモを聴くようになってからで、アメリカン・フットボールとかミネラルとか、アルペジオの絡みがすごく好きになって、それからギター2本でっていうのを意識するようになりました。だから、〈歌いながらこれ弾いて〉って、ヴォーカルに負担を与え続けてるんですけど(笑)」

おざわ「それ、キヌガサもよく言ってる。〈これ弾くの?〉って。自分で作ってるのに(笑)」

5月17日にリリースされるcinema staffのニュー・アルバム『熱源』収録曲“pulse”
ミネラルのコンピ盤『1994 - 1998: The Complete Collection』収録曲“Gloria”のライヴ映像

 

〈自分たちらしさ〉を決めつけないほうがおもしろい

おざわ「シネマはみんな同じようなバンドが好きなんですか?」

「最近はそれぞれが好きなのを聴いてる感じですけど、もともと高校から一緒で、当時はCDを貸し借りし合ってたので、わりと同じ感じのを聴いてきてはいます」

キヌガサ「それって、ともすれば〈cinema stafはこうあるべき〉ってなっちゃわないですか? 僕はそれをいつも不安に思ってて、〈my letterはこうあるべき〉っていう共通認識がメンバー間にないほうがおもしろいと思うんです」

「〈こうあるべき〉と思ってた時期もありましたね。次の『熱源』が6枚目のアルバムなので、その過程では〈ギターが引っ込んだ方がいいかな〉って思ったこともあるし、ずっと試行錯誤して来ました。でも、〈こうあるべき〉と意識しなくても、シネマっぽさは出るなって感じるようになったので、今は自由にやった方がいいなとなってます」

〈えるえふる〉にはLike a Fool Recordsの実店舗が併設されており、お酒を楽しみながら数百枚のCD/レコード(愛情溢れる推薦コメント付き!)を試聴/購入できる
 

キヌガサ「自分たちで自分たちのことを決めちゃうと、新しいものが出てこなくなっちゃいますよね。結局〈いい曲だったらいい〉というのがあるので、意図的に〈こうしなきゃ〉っていうのはない方がいいと思うんですけど、でも(2007年の結成から)10年もやってると、〈こんな感じだよね〉と思っちゃうから、それを気にせず、常に何か新鮮なことができたらなって」

おざわ「でも、最初はそれこそ〈ピンバックいいよね〉みたいな感じで、ベースの音とかも決めてやってたんです」

キヌガサ「理想があったんですよね。〈USインディーのこういうバンドになりたい〉っていう気持ちが強くて、〈こうあるべき〉っていう正解を探してた」

〈えるえふる〉にはLike a Fool Recordsの実店舗が併設されており、お酒を楽しみながら数百枚のCD/レコード(愛情溢れる推薦コメント付き!)を試聴/購入できる
 

おざわ「そうやってやっていくなかで、向いてる向いてへんが見えてきて、〈このリミッターいいや〉って、外しまくってきた感じ。最初の頃はキヌガサが、〈これはmy letterとしてはやっちゃダメ〉ってよく言ってたんですけどね。〈空間系のエフェクターは踏まへん〉とか」

キヌガサ「〈ドラムはおかず入れちゃダメ〉とかね。僕の性格なんですけど、一番のAメロと二番のAメロの最後のおかずが違うのは嫌なんですよ。〈一番カッコイイの一個でいいのに〉ってなっちゃう。最初はそういうこだわりがすごく強かったんですけど、徐々に気にしなくなってきましたね。シネマは最初に〈こうなりたい〉みたいな理想像ってあったんですか?」

「僕らが最初にバンドを始めたのが高1で、その頃は普通にチャートに入ってるような邦楽を聴いてたし、何になりたいかもよくわかってなかったですけど、だんだんいろんな音楽を聴くようになって、変なひねくれ方をしちゃったんでしょうね。大学生のときとかは、いっぱい音楽を聴いてる自分に酔ってたというか、〈これは違う〉とか〈これはダサい〉みたいに、いろんなのをディスってた気がする(笑)」

キヌガサ「それはギターに関しても? 〈ピロピロとソロなんか弾かねえ〉とか〈ハイポジでチョーキングなんかしねえ〉みたいな」

「ありましたね。飯田くんの声にしても、綺麗なのがすごくいいのに、〈もっと汚せ〉って言ってた時期もあったり(笑)」

キヌガサ「どのバンドにもそういう時期があるんですね(笑)」

次ページ『僕のミュージックマシーン』はアメリカを通過した京都の感じ
関連アーティスト
ポール・マッカートニー