石橋を叩いて渡らない
――作曲に関してはどういう行程で進めていきました?
「主に鼻歌で、それこそメロディーから作っていきました。最初に作ったのが“White Guitar”なんですが、この曲はギター・メーカーのDEANとS7Gがバトルする〈IMGPヘビーメタル級王座決定戦〉というイヴェントで、DEANのチームで演奏をすることになったときに披露するために作ったんですけど、ヘヴィー・メタルって言っているのに8分の6拍子の曲を作っちゃって(苦笑)。自分としては良い曲ができたと思ったんですが、コンセプトからはだいぶ外れちゃったので、同時期に“RUSH OUT”を作ったんです」
――それこそバランスをとったと。
「そうです。“White Guitar”はまったりしてるから、“RUSH OUT”では激しい、メタルっぽいのを作ろうと。イントロからタッピングで始めて、ギター・バトルとかゲーム・ミュージックのサントラじゃないですけど、〈戦い〉をイメージして作りました」
――今作はギター・インストのみでなく、YASHIROさんがヴォーカルをとっている曲も収録されていますよね。
「ギター・インストって、やっぱりギターをやっている人が聴くイメージというか。普段音楽を聴くときに主にヴォーカルを聴いている人たちにとって、オール・ギターのインスト・アルバムはやっぱりハードルが高いと思うんです。でも、今回はよりたくさんの人に聴いてもらいたいと思っていましたし、バンドのサポートをしているときにコーラスをさせていただくことも多かったので、じゃあやってみようと。ただ、決めた後に〈待てよ、これは私が歌詞を書くのか……?〉って」
――歌詞を書くのは今回が初めてだったんですか?
「かなり昔にやっていたバンドで一曲書いたことがあるぐらいのレヴェルでしたし、書いたものにダメ出しをされることもなかったので、もう本当に大変でした。特に“All Ways”は急遽収録することが決まったので、メロディーを作って、歌詞を書いて、仮歌を録るという行程を一晩でやらないといけなかったんです。そんななかで坂本さんとアコギを抱えて2人で作業していたんですが、2人とも疲労困憊でストレスも凄かったから、殺伐とした空気になっていて。〈YASHIROの歌詞は稚拙なんだよなぁ〉と言われて〈それは私が稚拙な人間だからじゃないですかね?〉と返したり」
――だいぶ空気が悪いですね(苦笑)。
「もう売り言葉に買い言葉ですよ(笑)。でもプロデューサーさんは本当に偉大だなと思いました。こんなガキンチョ相手にあんなに凄まじい量の仕事をしながら、一切妥協をせずにレコーディングしてくださって。あと、私のことを〈女性ギタリスト〉として見なかったんですよね。女性だからタッチが弱くなるところも抜かりなく指導していただけましたし、本当に感謝しています」
――今作ではMary's BloodのSAKIさんと魚住有希さんがゲスト参加されていますが、今後共演してみたいギタリストはいらっしゃいますか?
「自分が尊敬している仲のいいギタリストだと、Gacharic SpinのTOMO-ZOちゃんとか。昔から凄いギタリストだなと思って一方的に知っていましたし、TOMO-ZOちゃんもバンドではバキバキに弾いていますけど、考え方は私と結構似ていると思うんです。〈ギターのスタイルが似ているよね〉ってお客さんから言われたこともあるぐらい。あとはBAND-MAIDのKanamiちゃん。彼女はもともとシンガー・ソングライターだったのもあって、それこそギタリスト然としているというよりは歌ありきのギターを弾くから、価値観が似ているのもあって話が合うんですよ。2人とも忙しくて今回は実現しなかったんですが、いつか何か一緒にやりたいです」
――まだ面識はないけど気になるギタリストはいらっしゃいます?
「弓木英梨乃さんが気になりますね。最近はKIRINJIに加入されたのと、Base Ball Bearや柴咲コウさんとかのサポートをされていますけど、何よりギターの音にプレイもいいし、とにかく上手いなぁって。私からすると、弓木さんは全教科90点以上を取れるタイプに見えるんですよ。スケジュールが合わなくてまだ生で拝見したことはないんですけど、ライヴも観たいですし、お話もしてみたいですね」
――いつか対談などもできるといいですね。最近よく聴いている音楽や次作で挑戦したいジャンルなどはありますか?
「興味があるジャンルや音楽はいろいろあるんですけど、もし次にアルバム作るとしたらファンクをやってみたいです。オズ・ノイみたいなちょっとご機嫌な感じのやつとか」
――ファンクはよく聴かれるんですか?
「そうですね。タワー・オブ・パワーとか好きなんですよ。ああいう明るいテイストでノリがいいものがやってみたいです。今回は自分の内面を多角的に見て、いろんなギターを弾けたし、歌えたと思うんですけど、今度はそれをもっと掘り下げる作業もしたいんですよ。“Colorful Stage”よりも、もっと明るい曲をやってみたいですし、その反対でもっとドロドロしている曲もやってみたい。引き続きいろんなことにチャレンジしていきたいです」
――そこはYASHIROさんのモットーなんですね。まずはとにかく挑戦しようと。
「そうですね。ノリ重視というか(笑)。私、石橋を叩いて渡らないんですよ。様子は一応見るんですけど、もうそのときには橋の上を歩いているので。石橋をガンガン叩きながら歩いていくタイプなんだろうなと思います」
リリース記念ワンマン・ライヴ・ツアー
〈Colors of ASTRAIA〉
日時:2017年6月30日(金)
会場:東京・渋谷TAKE OFF 7
会場/開演:19:00/19:30
日時:2017年7月7日(金)
会場:愛知・名古屋ell.SIZE
会場/開演:19:00/19:30
日時:2017年7月8日(土)
会場:大阪・KING COBRA
会場/開演:17:00/17:30