モータウンとヴァーヴのロゴを背負う時点で破格の大物ぶりが感じられるワシントンDC出身のシンガー/ソングライター。初EPから2年半近く、バークリー音大在学中に彼の才能を見込んだトロイ・テイラー、エゼキエル・ルイスとのトライアングル体制を中心として作り上げたファースト・アルバムは、クラシックなソウル・センスが薫る先行ヒット“Long Song Away”で印象づけた青臭さを残すエモーショナルなテナー・ヴォイスに加え、SWVやジョニー・ギルの復活作に貢献したピアノ弾きとしてのセンスも随所で光る。その魅力はレクレーの絡むピアノ・バラード、BJ・ザ・シカゴ・キッドやMCのチャズ・フレンチといったモータウンの同僚を招いての各リミックスにも溢れているが、なかでもマイケル・ジャクソン“Butterflies”をアンビエント以降のモードで解釈したような“Don't Go”は美しく裏返るセンシティヴな声もメロウな楽曲自体も極上。ベイビーフェイスらが手掛けたミディアムのバラードも力強く歌い切る傑物の快作だ。