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ティグラン・ハマシヤン『An Ancient Observer』 ピアノと声と少しのシンセのみ、最小限の要素でアルメニア音楽更新した新作

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  • 2017.05.17
ティグラン・ハマシヤン『An Ancient Observer』 ピアノと声と少しのシンセのみ、最小限の要素でアルメニア音楽更新した新作

Nonesuch移籍第二弾となるリリース、5月には日本初のホールコンサートも!

 5年ほど前になるが東京国際フォーラムで開催された東京JAZZにファーマーズ・マーケットを見に行った折、一台のピアノと対峙しアイディアを駆使し、ジャズに留まらない表現を次から次へと繰り出す若者の演奏に目を奪われた。あのビルの挟間の特殊な空間での彼の姿をありありと思い出す。ティグラン・ハマシヤンが最も注目されるジャズ・ピアニストなのは、あらゆる音楽を呑み込み新しい音楽を創造し続けるから。その内最も大きな要素として彼の故郷であるアルメニアの音楽がある。

TIGRAN HAMASYAN An Ancient Observer~太古の観察者~ Nonesuch/ワーナー(2017)

 デビュー作より一貫して採り入れてきたフォークロアや古典音楽の語法は、最近作であるECMからの2作品におけるアルメニア聖歌隊を従え挑んだ宗教音楽、そして北欧電子音響勢とのコラボレーションにおいてもアルメニア・クラシック音楽の父、コミタス・ヴァルダペットの楽曲などを演奏したことで一つの到達点を得た。それに続き、再びノンサッチよりリリースされる本作は5年ぶりのソロ作品。『太古の観察者』と題されたのには決して平穏な歴史を歩んできたとは言えないアルメニアの土地、そして人々、それらを先史より現代に至るまで観察し自らに刻んできたのが芸術作品であるとする意図がある。故郷アルメニアに戻ったティグランが、ノアの方舟が漂着したといわれるアララト山頂にかかる雪と鉄塔群が同居する様子などを眺めながら「観察するもの」の一つとして自らの音楽にも刻むべく挑んだのがソロという最小単位での表現なのだ。

 そこにはヘヴィなベースリフも変拍子を叩くドラムもなく、ピアノと声と少しのシンセのみ。しかし、これまでの集大成のように越境する表現力でアルメニアの音楽を豊かに彩り新たなものにしていく。その姿はかつての丸の内の空に挑戦的な音を放っていた若者のそれではなく、全てを消化した上での彼自身の言葉としてのヴァリエーションなのだ。まだ29歳、次の到達点はどこにあるのか、楽しみは尽きない。

 


EXHIBITION INFORMATION
『Tigran Hamsyan Solo Japan Tour』

○5/24(水)19:00開演 浜離宮朝日ホール 音楽ホール
○5/26(金)19:00開演 沖縄 がらまんホール
○5/27(土)19:00開演 古民家SHIKIORI(福岡県宮若市)
○5/28(日)18:30開演 尾久島 尾久島総合自然公園(鹿児島県熊毛郡尾久島町宮之浦)
www.shalala.co.jp/tigran/

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