INTERVIEW

cali≠gari『13』 メジャー・デビューから15年、〈ダーク〉というテーマのぶっ飛んだ解釈が当時のバンドへのオマージュに結び付いた13番目の新作!

cali≠gari『13』 メジャー・デビューから15年、〈ダーク〉というテーマのぶっ飛んだ解釈が当時のバンドへのオマージュに結び付いた13番目の新作!

仄暗い空気で統一された音像と、悪意をエンターテインした詞世界――2003年に活動休止する前のバンドを彷彿とさせるいかがわしい攻撃性と音楽的なブラック・ユーモアが表出したcali≠gariのニュー・アルバム『13』。メジャー・デビュー15周年というタイミングに〈忌み数〉を冠したアルバムを発表する彼らは、〈ダーク〉というテーマの多角的な解釈によって、自身のベーシックな個性を改めてあぶり出してみせたとも言えるだろう。そんな本作について、メンバー3人に話を訊いた。

cali≠gari 13 VAP(2017)

サウンド面でダークになれば理想的だったんでしょうね

――今回の『13』はジャケットのイラストを魔夜峰央さんが担当されていて。しかもアスタロト(同名のコミックに登場する魔界の大公爵)が登場となると、作品全体の方向性もある程度は決まってくるような気がします。もしかして、本作の制作はジャケが先でした?

桜井青(ギター)「ジャケが先っていうのはありましたよね。それはもう、遡ること2010年のことなので。(村井)研次郎君の繋がりで、魔夜先生がcali≠gariの武道館(2010年2月11日に開催された日本武道館公演)にいらっしゃったときにご挨拶させていただいたんです。それで、ひょっとしたらジャケを描いてもらえるかもっていう話になったんですけど、タイミングって難しいじゃないですか。当時だと、次の作品は『≠』(2010年)とか『11』(2012年)ですよね。ただ、『11』でやるにしても、関連性が何もないんですよ。パタリロを代表に、魔夜先生が描かれている有名なキャラクターはいっぱいいますけど、そのなかでお願いするとしたら……って考えたとき、今後cali≠gariが解散しないで『13』を出すことがあるんだったら、そこでアスタロトをお願いしようって。だから研次郎君に、〈ごめんなさい、ここはちょっと寝かせといてください〉って言って、今に至るという感じですね」

――研次郎さんの謎の人脈には、魔夜先生もいらっしゃったんですね。

村井研次郎(ベース)「10年以上前かな?  cali≠gariとはまったく関係のないライヴ現場で、魔夜先生の娘さんと偶然知り合って。あとで〈私のお父さん、『パタリロ!』描いてるんです〉って聞いて、〈そうなんだ!?〉って」

――そういう経緯でジャケが決まっていたなか、作品の音楽的なテーマはありました? 紙資料には〈cali≠gari史上、もっともダークな作品〉とありますが……。

桜井「『12』を出した時点でなんとなく、次に『13』を出すんだったら暗い感じのものがいいなとは思っていて。で、去年ミニ・アルバムの『憧憬、睡蓮と向日葵』を出したでしょ? そのとき、石井さんにテーマは〈夏〉だとか〈憧憬〉だとか話したじゃないですか。そしたら〈俺はそういうのは無理だから。曲調がどうのこうのだったらできるけど〉って言われたから、じゃあ『13』は歌詞とか世界観うんぬんは置いといて、サウンドだけでもダークだったらいいんじゃね?って。そこからはいつも通りに各自の作業だったんですけれど、結果的にはダークなアルバムにならなかったっていうオチですよ。たぶん、サウンド面でダークになれば理想的だったんでしょうね、ヴィジュアル系っぽく。でも、うちは〈ヴォオオオオ!(デス・ヴォイス)〉とかそういう感じでもないので、そうすると〈このへんが落としどころかな〉っていうのが出てくるじゃないですか」

 

“0’ 13” I” “0’ 13” II” “0’ 13” III”

――では、ここからその落としどころの数々についてお訊きしましょうか。まず今回、13秒のSEが3曲入ってますが……。

桜井「それは、わかりますよね?」

――あ、曲が足りなかったですか?

桜井「違いますよ! 研次郎君も僕も持ち曲はあったし、石井さんもたぶん、出せたと思うんですよ。ただ、時間がないですよね。石井さんは3月にGOATBEDのあれこれを入れちゃってたし。そうではなくて、まあ、SEを3曲入れて〈『13』だから13曲〉っていうのはありがちだけど、今回はその〈ありがち〉に乗ってみましょうよ、と。それプラス、ジョン・ケージの“4’ 33””をやりたかったんですよ(笑)。ちょっとテーマのわかりづらい曲の前にそういったものを入れておくと、なんとなくどういう曲かわかるかもしれないし、あと、ガラッと流れを変えることもできるかなと思って。今回、トータル時間が短いのってお気付きになりました?」

――はい。40分弱ですね。

桜井「僕の中ではLPのA面/B面ですよ。しかも、(カセットテープに落とすと)40分テープに収まってる。こんな素敵なのないじゃないですか。B面に移ったときに〈ガチャン!〉というSEっていうか“0’ 13” II”がきて、最後の“深夜、貨物ヤード裏の埠頭からコンビナートを眺めていた”の前にもう一回“0’ 13” III”があって。それによって、一度リセットできるじゃないですか」

――アルバムの最後にはサウンドの方向的にかなり極端な切り返しがありますからね。その間のワンクッションとして。

桜井「そういう意味でもSEは大事かなと思ったんですよ。それぞれ3分あってもおもしろいなと思ったんですけど、流石に怠いだろうなと。それなら、トータルで40分以内に収められるなってところで、各13秒に」

 

“ゼロサムゲーム”

――各SEには住所が付いていて。1曲目が永田町で、続く2曲目が“ゼロサムゲーム”。これがポリティカルな曲だということもわかりやすく。

桜井「まあ、わかるっちゃわかるけど、言葉遊びで収めとこうかなって」

――はい。ただ、ご自身としてはそういうテーマでした?

桜井「今回自分が書いたものって、基本はTwitterなんですよ。皆さん、匿名アカウントで好きなことをつぶやいてるじゃないですか。そこで、よくつぶやかれがちなことを書いてるんですよ。もちろん、自分が同調できるものをちゃんと選びましたよ? 特に、この“ゼロサムゲーム”なんかはまさにそうですよね。〈皆さん、国益を守るために政治をしてるんじゃないんですか? いまはそういう時期じゃないのに、なぜ、どうでもいいようなことで国会を開いてるの?〉って」

――サウンドは相当アヴァンギャルドですよね。ジャンル的に表現しにくい。

石井秀仁(ヴォーカル)「なんか、フィータスの初期にすごい似てますよ。全部自分で演奏してる頃の、最初の2枚(81年作『Deaf』と82年作『Ache』)とかなり近いかも。これ、聴く人がどんな音楽が好きかによって捉え方が全然違うと思うんですよ。ジャンクな感じですよね」

フィータスの81年作『Deaf』収録曲“I Am Surrounded By Incompetence ”
 

桜井「参考資料でいろいろ聴こうと思ったんですよ。ノイズっぽい、いま石井さんがいったようにジャンクな、ノイズっぽいものとか。(アインシュテュルツェンデ・)ノイバウテンとかSPKとか、音を崩していったバンドっていっぱいいるじゃないですか。ただ、聴いちゃうとそっちに寄ってしまう気がして、結局、参考資料は聴かないで作ったんですよ。もうGarageBand(音楽制作ソフト)でバスドラだけ入れていって、マイクで〈あ~あ~あ~♪〉って歌いつつ(笑)、使えそうなところを切り張りしていって。そこに拍子を加えていった感じですね。各パートがそれぞれの解釈で、(リズムを)4拍子で取る人と3拍子で取る人がいないと成立しない曲って、あんまりcali≠gariでやってないんですけど、久々にこういうのもいいかなって」

――この曲にはサックスのyukarieさんとピアノの林正樹さん、パーカッションの大家一将さんが参加されていて。yukarieさんは最近の作品やライヴでもお馴染みですけど、林さんと大家さんの参加はどういう経緯で?

桜井「大家君のティンパニを入れたいっていうのがまずあって。ピアノは、研次郎君の“三文情死エキストラ”で林さんに参加してもらうことが決まってたから、この曲でも弾いてもらっちゃおうかな?って。デモの段階では、僕が調子っぱずれのピアノを弾いてたんですよ。それを林さんにやってもらったら、案の定、そっちのほうがカッコ良かった(笑)。林さんみたいにわかってて破綻できる人だと、〈調子っぱずれ〉といってもだいぶ意味合いが違ってくるんですよ」

――大家さんはいかがでしょう?

桜井「大家君は、普段はアニメの『ユーリ!!! on ICE』のサントラとか、いろんなCMソングとか、最近だと渡辺宙明さんのバックで演奏したりしてるんで、わりとカッチリした譜面のなかでやってる人なんです。そこを今回は〈自由に、ティンパニじゃないティンパニやってみてよ〉って発注してみたら、あんなのが出来上がって。〈何が行われてるんだ? これ〉って(笑)。レコーディングは見てておもしろかったです」

 

“トカゲのロミオ”

――そして次は、石井さんの曲で“トカゲのロミオ”。ちょっとポスト・パンク調というか、抑制された導入から、サビでグッと開ける。

石井「サビでZIGGYみたいになるっていうね。これ、局地的に有名な2曲をくっ付けたんです。コード進行もキーも同じで。〈13〉で〈暗い曲〉といえばゴシックじゃないですか、やっぱり」

桜井「ははははは(笑)」

石井「それで、ゴシック好きなら誰でも知ってるバウハウスの“Lagartija Nick”とクリスチャン・デスの“Romeo’s Distress”をくっ付けたんです。〈Lagartija〉って〈トカゲ〉って意味なんですけど、だからタイトルも“トカゲのロミオ”。そこもパロったんです。でもこの曲、明るいでしょ? クリスチャン・デスのいちばん有名な曲って、すごい明るいんですよ。それも皮肉っていうかね、みんな暗い曲が好きだって言ってるけど、なんだかんだでこういうのが好きなんじゃん、って(笑)。そういうふうに作った曲なんですけど、一切、誰にも説明してない。俺、青さんは普通に知ってると思ってたんですよ。で、研次郎君は一切そういうのに興味ないじゃないですか(笑)」

村井「(小声で)バウハウス好きですよ……」

石井「(聞いてない)一切興味がないから、まったく違うものになってくるのがおもしろいって」

村井「確かにいつも説明受けないですね。この曲はアイアン・メイデンみたいな感じかなあと思って弾いてたんですけど。一応、イギリス繋がりか」

石井「そういうのがなんか、cali≠gariのおもしろいところじゃないですか? この曲は結構最初のほうに作ってたんですよ。その頃に聴いてた曲も、アルバムの最後に入ってる青さんの曲だったんで、トータルで暗いアルバムなのかなって思ってて。だから、この“トカゲのロミオ”が一曲だけめちゃくちゃ明るい曲になるんじゃないかっていう予想で作ったんですけど、まあ、そうならなかったっていう、ネタみたいなものですね」

――歌詞は、久々に言葉遊びの要素が強いもので。

石井「最初のほうはそうですね。もう何言ってるかわからないような、〈英語か?〉みたいに聴こえるっていう。全部、歌詞の通りの日本語で歌ってるんですけど、俺が聴いても〈因果応報〉しか聴き取れないですからね。サビはまあ、別に普通の歌詞ですよね」

――はい、「ロミオとジュリエット」の……。

石井「普通に『ロミオとジュリエット』の話を説明しただけ(笑)。こういう開けた感じのコード進行のサビは、日本の昔のビート・ロックによくありますけど、ビート・ロックって〈ジュリエット〉とかよく出てくるじゃないですか。BOOWYの影響もあると思うんですけど」

――それもあってのジュリエットということで。

石井「そうですね」

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