TRI4TH
「『ワンピース』でいうところの〈悪魔の実の能力者の集まり〉(笑)」——西崎ゴウシ伝説(カルメラ)

 写真の黒い人たち。カルメラの西崎ゴウシ伝説いわく「ジャズの匂いを薄めずにポップやロックなメロディーを入れてて、バップのカッコ良さをわかりやすく現代に噛み砕いているバンド。カルメラはアレもコレもやりたいのですが、TRI4THはカルメラよりも芯の〈ジャズ〉を太めに設定してるのが大きな違いかなと思います」というTRI4THは、織田祐亮(トランペット)、藤田淳之介(テナー・サックス)、竹内大輔(ピアノ)、関谷友貴(ベース)、伊藤隆郎(ドラムス)から成る5人組。2006年より活動を開始し、2015年にPlaywrightへ移籍。10周年を迎えた昨年には『Defying』(Playwright)を発表している。

 

カルメラ
「日本一ハッピーでソウルフルな、愛すべき、なにわのインスト・ジャズ・バンド!」——伊藤隆郎(TRI4TH)

 写真の赤い人たち。TRI4THの伊藤隆郎いわく「僕らが出会った頃から、ジャズを知らない人にも伝わるキャッチーなカルメラ節に昇華していましたが、近年はよりわかりやすくロックやポップスを柔軟に採り入れて、さらに楽曲の楽しさにも磨きがかかってますし、まさに〈エンタメジャズ〉と呼ぶのに相応しいバンドだと思います」というカルメラは、西崎ゴウシ伝説(アジテーター/トランペット/ギター/パーカッション)、小林洋介(トランペット)、辻本美博(アルト・サックス)、たなせゆうや(トロンボーン)、PAKshin(キーボード)、宮本敦(ギター)、HIDEYAN(ベース)、西井“いがっちょ”啓介(ドラムス)の8人組。2006年に大阪で結成され、10周年を迎えた昨年には『THE PARTY!』(B.T.C.)を発表している。

 

TRI4TH,カルメラ HORNS RIOT Playwright(2017)

1. N.I.N.K.Y.O by TRI4TH

「TRI4THが近年大事にしてきた〈攻撃的〉なサウンドの最新版ですね。そこに〈和〉のエッセンス全開で、同じリフを連発しながらの竹内くんのピアノ・ソロでコードが開放されるところでは昇天しそうになります」(西崎)

「『AWAKENING』以降のTRI4THらしい、ファストでアッパーな楽曲に仕上がりました。最初から最後まで全力疾走で駆け抜けることにこそ意味のある曲なので、5人全員がレコーディングで限界に挑んだ息遣いを感じてください! ホーン2人の荒々しさはもちろんですが、これまででもっともパンチのあるソリッドなボトムの音作りも感じてもらえたら嬉しいです。これからのTRI4THを鼓舞する漢気溢れる一曲!」(伊藤)

 

2. 追憶の赤い日々 by カルメラ

「僕らが出会った頃のカルメラの印象に近く、カルメラ原点回帰の一曲、と感じました。熱さと共に哀愁を帯びたカルメラらしいキャッチーなメロディー。ここ最近のロックなアプローチも大好きですが、ジャズ・バンドとしての根幹がブレないからこそ演れる、〈カルメラ流ハード・バップ〉に胸が熱くなりました」(伊藤)

「今回はPlaywrightからのリリースでもあったので、カルメラのジャズな部分をより推していきたいと思いました。TRI4THと出会うきっかけになった須永辰緒さんのコンピ『夜ジャズ外伝』に収録してもらったのが、“地中海に浮かぶ女”という当時の代表曲で、今回はその続編を作る思いで書き下ろした楽曲です。僕らも10年やってきていろいろやりたいことも増え、時にお笑いめいたこともやりますが、結成当初から揺るぎないカルメラの〈芯〉の部分を具現化したような楽曲にできたと思ってます」(西崎)

 

3. GAME CHANGER by TRI4TH

「『Defying』に入ってる“FULL DRIVE”を聴いた時は〈ついにスカやっちゃうのね!〉とびっくりして、TRI4THらしいメロのカッコいい曲だなと感動してたのですが、今回もスカで来た!とびっくりしました。でも、ジャンルがどうとか、そんなのどうでもいいよ! TRI4THはTRI4THなんだよ!という思いを感じるジャジー・スカでカッコいい!」(西崎)

「今回もあえてスカで攻めました。前の“FULL DRIVE”が4つ打ちのダンス・ビート寄りだったのに対し、今回はオーセンティックなスカに近いビートで、バリトン・サックスを全編裏打ちでオーバーダブしたこともきっとスカ感を増しているはずです。自分たちの格好いいと思うものを咀嚼してTRI4TH流のジャズに昇華していく、そんな意気込みも感じてもらえたら嬉しいです!」(伊藤)

 

4. ORANGE by カルメラ

「カルメラのファースト・アルバムに収録されていた楽曲の再録ヴァージョンということですが、まず鍵盤のメロウなイントロ、軽快なサンバのリズムに乗る楽しくも切ないメロディー、後半のアコースティック・ギターのメロから、ブレイクしてソロに流れるところは、グッとくる!以外の何物でもないです。今回の5曲のうち、この曲がなければ『HORNS RIOT』は完成しなかったな……と素直に思える、聴かせどころの一曲ですね。最高!」(伊藤)

「いまのメンバーでもたまに演奏していて、〈いつか再録したいね〉と考えていたところに今回のお話をいただいて、〈雰囲気が合いそうだし、“ORANGE”入れよう!〉と全員一致で再録しました。アレンジも変えすぎず、いまのカルメラらしくなって帰ってきてくれたという感じです」(西崎)

 

5. HORNS RIOT by TRI4TH & カルメラ

 ……というふうに両バンドが2曲ずつ披露したEPは、13人が一同に会したタイトル曲でホットすぎる大団円を迎えることに。

「まずヘッドアレンジを自分が作り、それをゴウシ君に投げる形で作曲しました。基本はデータのやり取りで作業を進めましたが、アレンジが返ってくるたびに、自分たちでは絶対に思いつかない大胆なアプローチに驚き、ワクワクしましたね! カルメラがどんなことを考えながら作曲をしてライヴに臨んでいるのか、そういった部分も垣間見られて興味深かったです」(織田祐亮)。

「ほぼ完成したデモが届いて、当初はメロディーの空白の部分を考えるということだったのですが、〈織田くん、ごめん! けっこう豪快に変えちゃいます!〉となりました。カルメラの中でも僕の曲は特に、一節にたっぷり小節数を使う長いメロディーにコードを進行させまくるのが好きで、場合によってはダサくなりすぎたりジャズに聴こえなくなったり一長一短なのですが、今回もけっこう自分の好きな感じに変えちゃったんですよね。少し心配になって〈大丈夫かな?〉と連絡したら、気に入ってくれたみたいで安堵しました。学びはたくさんありましたが、13人で演奏してみて〈とてつもない爆音だ〉と、あたりまえのことに気付きましたね(笑)」(西崎)。

「あたりまえですが音圧が凄い。うるさいです(笑)。まさに〈ホーンの暴動〉って言葉を掲げるのに相応しい一曲に仕上がりました。お互い結成10周年を迎えたタイミングで、共作で一曲作り上げることができたのは感慨深いし、本当に嬉しいです」(織田)。

 もともとは須永辰緒のイヴェント〈World Standard〉が梅田のNOONで開催された際、須永のプロデュースでアルバムを出したばかりのTRI4THと、レギュラー・バンドだったカルメラと出会ったのが交流のきっかけ。盟友/好敵手としての関係は今後も続く。

「これからもお互いの刺激であり続けていきたいし、今回さらに絆は深まったのでは?とカルメラ側は思っております(笑)」(西崎)。

「ずっとそう思ってもらえるようTRI4THも挑戦し続けていくし、これからも日本のジャズ・インスト・シーンを盛り上げるべく互いにがんばって、これまで以上に切磋琢磨していきたいです!」(伊藤)。