70歳となった巨匠・クレーメルが奏でる音楽の世界は益々深みを帯び続けている。この先、一体どのような演奏を私たちに届けてくれるのか。本作のトリフォノフとの共演を聴いてしまうとその期待と楽しみは募るばかりだ。二人の一糸乱れぬ駆け引きは見事。互いの技巧と表現力を尊重しながら新しい「音」を響きだしている。一音一音の強弱も決して大きくなく、小さくもなく…まるで聴き手の心を眼の前で感じとっているかのようだ。時に激しく、時に甘美さ漂う心地よい演奏。共に演奏家として、それぞれその才能を認め合う彼らだからこそ生み出された音楽である。