限りなく優しくて暖かいのに、一聴して「これは異質なものだ」と分かる音。1990年代の初め、ドイツのケルンでジム・オルークらによって発見された音楽はのちに彼のレーベルを通じて紹介され世界に大きな衝撃を与える。ポルトガルの作曲家ヌーノ・カナヴァーロによって88年に録音された今作は、その時点で既に現行のエレクトロニカや(実験指向ではない)アンビエントに比肩するものだった。グロッケンをメインに様々な音のコラージュが施された全体からは、正に印象派の絵画を前にした時のような感覚を覚える。現代の耳で聴いても感動と驚きを与え得る事が保証された、必然の再発です。