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「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」 リサ・ハニガンが声優&主題歌を担当、アイルランドの〈ポスト・ジブリ〉が贈る最新作

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  • 2017.05.31
Song of the Sea(C) 2014 - Cartoon Saloon - Melusine Productions - The Big Farm- Superprod - Nørlum

ポスト・ジブリ! アイルランドのアニメーションスタジオ〈カートゥーン・サルーン〉制作の最新作

 ケルト文化が色濃く残るアイルランドは神話や伝承の宝庫ともいわれていて、例えばハリー・ポッターシリーズにも登場する、宝物のありかを知っているレプラコーンや、死を予告する泣いた女の妖精バンシーなど、たくさんの民話が今でも語り継がれている。

トム・ムーア,デヴィッド・ロウル ソング・オブ・ザ・シー 海のうた ミッドシップ(2017)

 本作は、海ではアザラシ、陸では人間の姿となる妖精セルキーの神話を元にしたアニメ作品。そのセルキーの母親と人間の父親の間に生まれた兄妹の冒険物語を、どの場面からも目がはなせない美しい色と線で描く。アカデミー賞長編アニメ映画賞や、アニメ界のアカデミー賞と言われるアニー賞にノミネートされるなど世界中で注目を浴び、昨年夏には日本公開された。監督は日本アニメーションのファンでもあるという北アイルランド生まれのトム・ムーア。彼率いる“ポスト・スタジオジブリ”ともいわれるアニメーションスタジオ〈カートゥーン・サルーン〉で制作された。音楽は、ケルト音楽をベースにさまざまな要素を融合させたサウンドを聴かせるアイルランドのバンドKiLA、そして同じくアイルランドの歌姫リサ・ハニガンがセルキーの母親の声を担当し、作品のキーとなるテーマ曲で異次元とこちらの境目となる神話の世界観を演出する。

 全体的にすっきり晴れた青空、というよりもひとつトーンを落としたような色合いで展開され、だからこそ兄妹を導いていく光のつぶつぶが、とてもきらびやかで純粋なものに見える。兄のベンがやさしくなれない冒頭のシーンや、気を使って困ったように笑う妹シアーシャの表情などが、家族のかたち、関係を充分なまでにあらわしていて、印象的なシアーシャが髪をかきあげる仕草は、なにかに無意識に反応してしまう癖なのか、成長を意味するものなのか、想像をかき立てられる。家族の思いをそれぞれに見てとれることで、面倒くさくてあったかい人間の世界も悪くはないかなと、少し肩が軽くなる感覚。

 MVPはオールド・イングリッシュ・シープドッグの愛犬、クー。彼(彼女?)の滑走がストーリーを前に前にひっぱっていく。

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