サンパウロ出身のハファエル・ピッコロット・ヂ・リマが率いる“都会のオーケストラ”に注目!

 サンパウロは昔からジャズが盛んな都市だが、近年とみにジャズを基軸とするインストゥルメンタル音楽シーンが活況を呈している。昨年は、作編曲家/ギタリストのロウレンソ・ヘベッチスがアート・リンゼイをプロデューサーに迎え、モアシール・サントスからギル・エヴァンスやマリア・シュナイダーまで横断するホーンのアンサンブルと、アフロ・ブラジル宗教カンドンブレの儀式で演奏する打楽器隊のリズムを合体させた力作『O Corpo de Dentro』が大きな話題を呼んだ。そのロウレンソに続く俊英が、彼と同世代(30歳少々)の作編曲家/指揮者、ハファエル・ピッコロット・ヂ・リマだ。

 ハファエルはサンパウロ州カンピーナスの出身。マイアミ大学に学び、コスタリカ国立交響楽団に提供した自作がラテン・グラミーのコンテンポラリー・クラシカル作曲部門にノミネートされ、編曲した作品をチック・コリア、テレンス・ブランチャード、メトロポール・オーケストラなどが演奏するなど学生時代から国際的に活躍し、現在はニューヨークを拠点に活動している。

RAFAEL PICCOLOTTO DE LIMA,ORQUESTRA URBANA Pelos Ares independent(2017)

 この“都会のオーケストラ”を率いたファースト・アルバム『Pelos Ares』。2007年から書き始めた自作曲の指揮をつとめ、サンパウロの音楽家たちが演奏する。北東部のマラカトゥのリズムに根ざした1曲目と、サンパウロ・インスト界の巨人、ナイロール・プロヴェッタに捧げたサンバ(本人のクラリネット・ソロをフィーチャー)の他は、明快なブラジル成分はさほど強くないが、ロウレンソ同様にギルやマリアの路線を踏襲した作編曲術はクォリティが高く、アンサンブルとソロ・パートのバランスも見事。強弱のダイナミック・レンジも広く、やはり音楽のそこここにアメリカ人とは異なる出自の優美な色彩感がある。今後、ブラジル音楽/ジャズ/クラシックといった垣根を越えた活躍が期待できる逸材として、注目しておきたい。