BASS! HOW LOW CAN YOU GO?
偏愛を見せてきたマイク・シノダのストイックなヒップホップ観!

 DMXらとの大ヒット“Rollin'”を生んだリンプ・ビズキットがリミックス盤『New Old Songs』(2001年)で起用したのは、当時バリバリの旬だったティンバランドにネプチューンズ、ヒットメイカーのP・ディディ、大御所のDJプレミアら。そういった名前と『Reanimation』参加メンツを比較しただけで、好みの違いは明白だ。マイク・シノダが愛するヒップホップは、商業性よりもストイックにライム・サイエンスを追求するアート性の高い西海岸アンダーグラウンドのVIPが中心だった。仲の良いスタイルズ・オブ・ビヨンドの地下名盤『2000 Fold』(98年)ではマイクがアートワークを担当していたりもするが、恐らくその源泉にあるのはノトーリアスBIG(後にリンキンの“Until It Breaks”でマイクは“Who Shot Ya?”を引いている)らNYハードコアの王道だろう。後のリンキンは(引退中の)ジェイ・Zとの共演作『Collision Course』を発表するが、その手合わせもポピュラーな権威者としてではなく、ヘッズも一目置く実力者である点が重要だったはずだ(と思ったらやはり、それ以前の“Nobody's Listening”にてジェイとビギーの“Brooklyn's Finest”を引用してもいた)。

『Collision Course』収録曲“Numb/Encore”

 『Reanimation』での縁をエクセキューショナーズとの合体にも繋いだマイクらしく、そのラップ・プロジェクト=フォート・マイナーのアルバム『The Rising Tied』(2005年)は、生真面目なヒップホップ愛が全開で、コモンやブラック・ソート、ルーペ・フィアスコといったコンシャス系のメジャーな名前に加え、スタイルズ・オブ・ビヨンドを実に6曲でプッシュする暴挙に出てもいる。彼らとマシーン・ショップの蜜月は長くなかったが、近作にマイクが参加するなど、いまなお続く交流は微笑ましいところだ。

 以降は先述のルーペやサイプレス・ヒルと共演曲を残してもいるマイク。ツアーの前座にマシン・ガン・ケリーを抜擢するなど美意識にブレはなさそうだが、そう思うと現行シーンでもっともマイク好みなラッパーはラップ神ことエミネムしかいない気がする……。 *轟ひろみ