INTERVIEW

Yogee New Wavesは今、無敵の状態にある― バンドって超楽しくてミラクル! 新たな4人で生み出した、明日への温かな希望

Yogee New Waves『WAVE』

  • Share on Tumblr
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2017.05.25
(左から)粕谷哲司、角舘健悟、上野恒星、竹村郁哉 

 

この人たちは本当に自分の大切なもの、そしてリズムがわかっているなぁと思わせる作品である。Yogee New Wavesが2年半ぶりの新作『WAVES』を5月17日にリリースした。思えば、現在の東京におけるインディー・シーンの活況をさらに後押ししたファースト・アルバム『PARAISO』(2014年)は、“CLIMAX NIGHT”のアンセム化や〈フジロック〉への出演などで過熱し続けていた人気の上昇とは裏腹に、自分たちのペースを崩さずに作り上げた傑作であった。そして、メンバーの脱退や、新体制の始動など出来上がるまでにもさまざまな紆余曲折があったものの、焦ることなく〈今、このときしかない〉という瞬間を捉えた本作『WAVES』もまた、彼らの生活の記録である。

5月25日(木)の名古屋CLUB QUATTROから始まり全国8か所を巡る〈RIDE ON WAVE TOUR〉を控え、大忙しの彼ら。この日の取材も夜間遅くに始まった。しかし、キャッキャと楽しそうにじゃれあいながら話をしてくれる4人を見ていると、Yogee New Wavesというバンドが今、無敵の状態にあることを確信せざるを得なかった。明日への希望も見えず、冷笑に慣れた僕らの頬をそっと緩ませ、世界を眩しく輝かせる彼らの音楽と言葉のきらめき。『WAVES』は、今を生きるあなたへYogee New Wavesから届いた、美しくも温かい一通の親密な手紙である。角舘健悟(ヴォーカル/ギター)、粕谷哲司(ドラムス)、竹村郁哉(ギター)、上野恒星(ベース)、〈4人〉のYogee New Wavesに話を訊いた。

Yogee New Waves WAVES Roman/Bayon production(2017)

バンドって超楽しくてミラクル

――タワーレコードの〈NO MUSIC NO LIFE〉ポスターでのYogee New Waves、最高ですね。〈若気の至りと評されるとして。俺たちが楽しいのがいっちばん楽しい!〉って言葉と、満面の笑顔。久しぶりのアルバム『WAVES』への自信も感じられるし、ロック・バンドとしての反骨精神も表れていて。

角舘健悟「そうですね(笑)。自信もあるし、聴けば〈直したいなぁ〉って思うところも、もちろんあります。でも、俺はアルバムってYogee New Wavesというバンドの命の経過点でしかないと思っていて。もっといいものをどんどん作りたいなと今は思っています。あのコピーはバンドって超楽しくてミラクルで、それに対して四苦八苦することは超楽しいよねという宣言ですね。でも、今それが出来ている人たちはどれだけいるんだろう?という挑発でもある。〈今、俺たちは超楽しいよ〉っていう笑顔(笑)」

――なるほど。今の発言からも、バンドの良いムードが伝わってきました。今年の1月に、竹村郁哉さんと上野恒星さんの加入が発表されましたが、新体制が実際に稼働し始めたのはいつ頃からなんですか?

粕谷哲司「初めて全員で顔合わせしたのは去年の9月終わりぐらいですね。正式にアルバムの制作に取り掛かりはじめたのが10月半ばだと思います」

――上野さんはJappers竹村さんはampelと、それぞれサポートや他にバンドもやられているわけですが、Yogee New Wavesというバンドに加入して何か感じたことや他のバンドとの違いなどはありますか?

上野恒星「もう僕も28歳なんで(新しく)バンドをやることはないだろうなと思っていたんです。バンドを組むのは音楽をやるだけじゃなくて、一緒に生活することでもあるし。でも、Yogeeには可能性を感じたし、入る前に人生や仕事の話をいろいろ話して、共通する部分がたくさんあったので一緒にやれるかもと思ったんです」

竹村郁哉「おもしろい奴らだなぁ、と思いましたね。この4人で音を鳴らすのが、俺にとっては新鮮な経験でした。今までと求められるフレーズも全然違うし、それで〈どうしようかなぁー〉と悩んだりもしたんですけど。上野くんと同じで、音楽よりも先に人間関係ができたことで信頼が生まれて、いつの間にか小さな悩みはなくなりましたね。今は自由に音楽をできています」

角舘「もしかしたら60年後、こいつらの葬式に行って一曲歌う可能性だってあるわけじゃないですか。そうなると人間関係を築くうえでも音楽を作るってことに関しても、その過程で嘘はつきたくない。ビジネスライクなものじゃなくて、あったかいものが作りたいんですよね。俺は彼らの演奏を見て、醸し出している匂いが好きだったし、音楽に対しての姿勢に惹かれた。〈こういう顔して弾くのね。いいね!〉みたいな。(ライヴで)前に出て行って首を振っているようなエゴイストだったら、一緒にやろうとは思わないかも」

――人生の話、仕事の話をしてから加入という流れがすごくYogeeらしいですね(笑)。

粕谷「俺と上野くんは境遇が似ていて、2人とも普通に社会人として働いていた時期があったんですよ。俺は去年の9月に仕事を辞めて、音楽で食っていく決断をしたんですけど、上野くんは何年か前にそう決めていて、すでに音楽の道を歩んでいたんですよね。だから、すごく尊敬できたし、勉強できることがいっぱいあるだろうなと思えた。あのタイミングで上野くんと会って話せたのは良かったです」

角舘「ボンちゃん(竹村)と俺は生き方が似ていると思うんですよね。風が吹いている方に流れるべき、っていう座右の銘みたいなものがあって、流れ着いた先で全力でがんばる。自然な流れっていうのは、ある意味運命のようなものですからね。彼とは音楽で飯を食うことの大切さについて話しました」

竹村「俺も誘われる1か月ぐらい前に就職しようかなぁ、とか思って仕事を探しはじめていて。そのタイミングで声がかかった。これからの生き方について話しました」

角舘「俺も仕事をせずに音楽をやると決めたタイミングがあって。音楽以外にもいろんな選択肢があったんだけど、ファンや友達の応援があったし、Yogeeみたいな感覚を持ったバンドはいないと自分でもわかっていたから、いろんな未来への選択肢のなかから、音楽を生業にすることを選んだんです。俺がYogee New Wavesでやりたい音楽はあったかくて、誰もバカにしないもの。そんな音楽は今、どこにもないと思うから、やり続けてきたんですよね。で、ようやくそれで暮らせるレヴェルになってきたって感じかな」

 

和気藹々でいれば、いい音が出る

――そんな4人で作り上げたアルバム『WAVES』が本当に素晴らしくて。これまでのYogeeのリリシズムやポエジーは保ちながらも、演奏と曲の強度が一段と上がっている。自分たちとしては、新しいバンドを作り上げたような気分なんでしょうか? それとも、Yogee New Wavesがようやく帰ってきたという感覚?

粕谷「後者の感覚の方が強いですね。健悟がいつもリーダーシップを取ってくれて、メンバー全員がそれに巻き込まれながら進むことを楽しんでいる、それが俺にとってのYogee New Wavesなんです。そういう感覚が戻って来たのは久しぶりだなって思いました。去年の年末ぐらいにメンバーで合宿に行ったんですけど、その時に追い風が吹いているのをすごく感じた。まぁ、自分たちで風を吹かしてるんですけど(笑)。うん、それはすごく久々でした」

上野「でも、ワンマン・バンドっていう感じはしないんですよね。健悟は誰が楽器を演奏するのかをある程度イメージして、曲を作っているんじゃないかな。一緒に時間を過ごしていくなかから曲が出来ているような気がする。そうすると結果的にみんなで過ごした時間が曲を作っているのかなと思うんです。それに、レコーディングしているときのアレンジに関しては、それぞれが〈あれがいい〉〈これがいい〉と主体的に意見を言い合いますからね」

角舘「『SUNSET TOWN e.p.』の時はメンバーみんなが違うこと考えてたから、俺がやんなきゃと思ってて、まったくわかんないなりに指示するしかなかったんだけど、このメンバーになってからは、やってくれるところは任せてグータラしてる(笑)。そのおかげで両手が空いて、風を起こす準備ができたのでうちわでパタパタ扇いでいる感じ」

『SUNSET TOWN e.p.』収録曲“Like Sixteen Candles”
 

――さっき、粕谷さんがお話されていた、いわゆる〈合宿〉がかなりストイックで大変なものだったというお話を聞きました。なんでも、1人になれる時間がほとんどなかったとか。

角舘「そうなんです。上野くんとか絶対1人の時間がないとダメなタイプらしいんですけど、〈これだけ一緒にいたらムカつくことも絶対あるし、1人になって考えごとをしたいときもあるはずなのに、全然この4人なら大丈夫だね〉と言ってくれて、それがすごく嬉しかった。俺的にはわりと荒技なワークショップだった気がしたんですけどね(笑)。でも、仲良くなりたかったんですよ、何よりも」

竹村「最初はアルバムのプリプロをするって話だったんですよ。でも、いつの間にか“C.A.M.P.”のミュージック・ビデオまで撮ることになっていて。気付いたときにはもうガッツリ撮影に入っていました。あれは……衝撃を受けましたね。〈これ、もしかして大変かも?〉となったときにはもう遅かった(笑)」

粕谷「バンドが合宿するとなったら、どっかの機材があるスタジオとかに行ってやるのが普通だと思うんですけど、僕らは何もないただの山小屋でやったんです。まず機材を調達するところからはじまったんですよ。その作業をしただけで、もう夕方。当初の予定から10時間押しぐらいで現地に到着して、全員やることいっぱいで疲労困憊って感じだったんですけど、寝る前になぜかみんなでトランプしちゃって。さらに、楽しいから誰も寝ようって言わない(笑)。その感じが今考えるとYogeeだなっていうか。Yogeeというバンドを体で実感したんです」

上野「メンバーみんながちゃんと人に対して思いやりがあるんですよね。バンドやるうえでそれって本当に大事なことなんで、それを確認できたことは良かった」

竹村「俺もわりと1人になりたいタイプなんですけど、合宿でぐちゃぐちゃの泥だんごみたいになった帰りの車で〈はぁ、終わっちゃったよ、寂しいなぁ〉と珍しく思ったことを覚えています。健悟は男子校出身なんですけど、俺はずっと共学で家族にも友だちにも女性が多かったから、生まれて初めて濃厚つけ麺みたいな出汁が出まくった男子校のノリを体験してしまい、めちゃくちゃ楽しかった(笑)」

角舘「和気藹々でいるほうが、いい音が出るのはわかっているんです。もちろん馴れ合いじゃダメで、〈ON〉にすべき場面は絶対にあるとは思うんですけど、楽しそうなのが俺らの良さだというのはありますよね。でも、無茶なことしたね。無茶なほうが楽しくて好きだけど(笑)」

 

次ページ50歳になったときに演奏していてもおかしくない作品
関連アーティスト