〈エモカワイイ〉をカラフルに体現する新フェイス!

 好物のタピオカミルクティーを略したという、何ともユニークで可愛らしい語感の名前を持つたぴみる。彼女は、このたび「ゼロから始める魔法の書」のオープニング・テーマ“発見者はワタシ”でデビューしたばかりのシンガーだ。

 「高校生の時にハンドルネームを考えていて、〈ゆるい食べ物の名前にしたい!〉〈人と被らないものにしたい!〉と思ったんです。そこでこの名前を思い付きました」。

 子供の頃から歌うことが大好きだったという彼女は、supercellとの出会いをきっかけとして、アニメソングやボーカロイドの世界へ興味を抱くように。学生時代には軽音楽部でバンドを結成し、それらの楽曲をカヴァーしていたという。

 「(supercellの)“君の知らない物語”は難しくて、歌うことが初めてしんどくなりました(笑)。挫折して泣きながら歌った曲で、思い出がたくさん詰まってます」。

 そんな経験を経てますます音楽への情熱を高めた彼女は、好きなアニメやゲームの歌を歌うため、アニソン・シンガーをめざすことを決意。そこからソロでの歌手活動を始め、傍らで行っていた動画配信で注目を集めるようになり、縁が縁を呼んで夢を掴むこととなった。

たぴみる 発見者はワタシ ランティス(2017)

 今回のシングル“発見者はワタシ”は、魔女と傭兵の冒険譚となるアニメの内容にもリンクした、〈新しい出会い〉のワクワク感を快いエモーションに置換した開放的なロック・チューン。ドラマーでもある新進作曲家の石倉誉之が作/編曲しており、次々と組み替えられて熱を増していくリズム・パターンも聴きどころだ。たぴみるは初めて楽曲を聴いた時の印象を「とっても明るくて、どこか懐かしくて、物語が浮かんでくるような歌だと思いました!」と語るが、一方でこんな不安もあったという。

 「実はいままで、ライヴなどでは明るくて爽やかな歌よりも、バラードやしっとりとした歌を歌っていたんです。なので、自分が歌ったらどういう感じになるかをうまく想像できなくて」。

 だが、そんな心配はまったくの杞憂に。得意の細かいヴィブラートを効かせながら快活に羽ばたく歌声は、ハードだが耳馴染の良いカラッとしたギター・サウンドと重なり、心地良い伸びを見せる。

 「歌詞に出てくる主人公は、見るものすべてが初めてで、〈なんだこの世界は!〉みたいにキラキラしているんです。その気持ちって、私たちにもあると思うんですよ。例えば初めて渋谷に来た時は〈スクランブル交差点すげぇ〉とワクワクしたのに、1年も経てば平然と歩いてる(笑)。曲を聴いてくれる人には、いろいろなことに対する最初のキラキラ、ワクワクした気持ちを思い出してもらえたら嬉しいですね」。

 そして、カップリングの2曲“こころスタート!”と“心情コンプレックス”も同路線のパンキッシュなサウンドながら、前者では「スーッと入ってくるメロディーを活かして綺麗に歌うように意識しました」との言葉通り、よりしなやかな声で飛翔。たぴみる本人が作詞に挑戦した後者では、素直な気持ちをわざと隠す女の子の複雑な素振りを描き、みずからキャッチコピーに掲げる〈エモカワイイ〉感覚を表現してみせている。

 「女の子独特のモヤモヤした気持ちにスポットを当てて、本当は言いたいけど言えないとか、矛盾した心の中の葛藤や行動をちょっぴり可愛く表現しました。これが〈エモカワイイ〉感じです(笑)!」。

 上述の“君の知らない物語”を歌っていたやなぎなぎに影響を受け、「彼女のように幅広い曲調を歌いこなすのが、ヴォーカリストとしての理想」と語るたぴみる。夢の第一歩を踏み出したばかりだが、もちろんこれは冒険の序章に過ぎないはずだ。

 「カラフルなタピオカみたいに、いろんな色に染まれるアーティストになりたいなと思っているので、これからもさまざまな楽曲にチャレンジしていきたいです!」。