トライ・アングルから地上へ這い上がったウィッチたち

 2010年に産声を上げ、ウィッチ・ハウス人気をリードしたトライ・アングルと言えば、〈ホラー〉〈ゴシック〉〈インダストリアル〉な空気を纏った暗黒ダンス音楽を得意とする、アングラなイメージが強いのではないでしょうか? でもレーベル・オーナーのロビン・カロランは、もともとマドンナをはじめとするメインストリーム・ポップとワープ周辺のテクノに心酔していた人物。地下と地上の狭間を曖昧に彷徨うロビンの音楽趣向は、輪郭のぼやけた〈インディー的〉なサウンドが重宝されている昨今の音楽シーン全体の流れと、絶妙にフィットするものでした。

 それを裏付けるように、トライ・アングルの輩出したアクトが、その後、大舞台で成功を収めていく例もチラホラ。ビョークやゴールドフラップが全幅の信頼を寄せるハクサン・クロークもそうですし、ビート・ミュージックを背景にポップスの新たな形を提唱したハウ・トゥ・ドレス・ウェルやアルーナジョージ、エイサップ・モブ軍団との絡みでヒップホップの最前線に浮上したクラムス・カジノもそう。そして2017年、ニンジャへ籍を移したフォレスト・スウォーズも、これらの先達に続くことができるのか。可能性は大いにアリだと思います。 *山西絵美

ハウ・トゥ・ドレス・ウェルの2016年作『Care』収録曲“Lost Youth / Lost You ”