90歳を超えた室内楽のレジェンド、プレスラーが、アメリカのパシフィカ四重奏団とともに驚異的な名演奏を成し遂げた。両者とも表現のニュアンスは譜面の発想標語を遥かに超えて細やかで、互いに陰になり日向になりながら、作品の情景変化を絶妙に描いてゆく。プレスラーのピアノはまさに「神業」だ。音色の明暗とタッチの緊張と弛緩を自在に操り、生命力豊かなリズム表現を行う、しなやかな技術とみずみずしい感性に驚かされるばかり。プレスラーに触発されたかのように、パシフィカも多彩な音色変化、迸るような旋律の歌、濃厚豊潤なハーモニーを響かせ、ブラームスの名作を徹底的に堪能させてくれる。