角舘健悟の核には〈愛〉に対する盲目的な信頼があって、それはもはや信仰のレヴェルに達するほどなのだが、この新作においてもそのある種のロマンは炸裂している、どころか溜まりに溜まったルサンチマンを昇華し、爆発させている。彼のロマンとはつまるところ、この理不尽な世界を愛を原動力にして変革していくことであり、時に闇の奥底まで潜り、希望のおき火に静かに息を吹きかけることである。例えばそれは、“World is Mine”におけるロックンロールの魔法であり、“HOW DO YOU FEEL”で聖女マリアの如く無防備に佇む〈Sister〉へのメッセージなのである。初期衝動という概念をそのまま血肉化したような、前半の畳み掛けるようなポップソングの連続射撃を通り過ぎると、やがて後半に進むにつれてダビーかつフォーキーな夜の帳が降りる。そして気付けば、あなたは都市のど真ん中で色とりどりの花びらが舞う、春の嵐を前に立ちすくんでいるだろう。それでも恐れることは何もない。そう、愛ある世界は美しいのだから。