INTERVIEW

ササノマリイ『game of life EP』 ぼくのりりっくのぼうよみも参加の〈人生ゲーム〉、4種類の陰と陽を抱える〈僕〉を表現した新EPを語る

ササノマリイ『game of life EP』 ぼくのりりっくのぼうよみも参加の〈人生ゲーム〉、4種類の陰と陽を抱える〈僕〉を表現した新EPを語る

絵本の如く幻想的な歌世界を立ち上げるシンガー・ソングライターが、気の置けない相棒を迎えて制作した人生ゲーム。4種類の〈陰と陽〉を抱えた〈僕〉の行く末は……

 

俯瞰した歌世界

 生楽器とエレクトロニクスが混在するサウンドと、辛辣な内省を促すナイーヴな歌声でメランコリックかつノスタルジックな世界観を立ち上げるシンガー・ソングライター、ササノマリイが、新作『game of life EP』を完成させた。表題曲にフィーチャーしたのは、彼が“CITI”“Be Noble”などのサウンド・プロデューサーとして関与してきたぼくのりりっくのぼうよみ。互いの個性が等しく共鳴し合う“game of life”は、シリアスな音像のなかで〈焦燥〉がメロディアスにフロウする一曲だ。

ササノマリイ game of life EP ソニー(2017)

 

――今回ぼくりりさんをゲストに迎えた“game of life”はフィーチャリングありきで制作した曲なんでしょうか?

「そうですね。ワードバスケットのカードゲームをしながら(笑)、〈一緒に何かやりたいんだよね〉って言ったら〈やりましょ〉ってすぐにOKしてくれて」

――で、そこから曲を書きはじめて。

「はい。トラックと、僕が先に歌を入れてみたものを一緒に送って、それに対してリリックを考えてもらってっていうのをやり取りしつつ、という感じでした」

――ぼくりりさんには、何かリリックのテーマを伝えたんでしょうか?

「一緒によくゲームをしてるので、じゃあゲームっぽい感じにしようかなっていう。ゲームだけど、僕ららしい感じにできないかなっていうので、“game of life”――人生ゲームのことなんですけど、じゃあ僕らの、若い世代の葛藤や焦りみたいなものを書けるといいねっていう、そんな方向性でふんわりと歌詞を乗せていきました」

――〈誰かに望まれて生まれた/今までそう信じて生きてた〉という冒頭の一節から、非常にシリアスで。

「なんか、歌詞を書くとこういう感じになっちゃうんですよね(笑)。自分がそこまで悲観的ってわけでもないんですけど、たぶん自分の中の〈不安〉とか〈後悔〉みたいなものが言葉になって出てきやすいのかな?」

――“game of life”の主人公は、迷って、どこにも辿り着けないまま終わりますね。

「そうなんですよね(笑)。僕、救われない歌詞になってしまうことが多くて。この曲はタイトルが〈人生ゲーム〉だし、堂々巡りでもいいかなと思って、救いのないままにしてしまおうと。ただ、ぼくりり君に任せた部分は好きに書いてもらってて。〈どっちがいいですかね?〉って出してくれた案を両方とも別の部分で活かしたりして、かつ、お互い寄せ合うこともなくすごく奇麗にハマったんで、やったあと思って(笑)」

――(笑)普段ぼくりりさんとお話されてて、ここが合うなと思う点はありますか?

「明るい感じにするよりかは影があったほうが好きみたいな。悲観っていうか、暗かったとしても、捻くれた感じに持っていく気がするんですよね。皮肉というか。〈僕は生きてる意味がないんだ、死んでしまえ〉で終わるよりも、そこから投げやりな一発をぶち込もうとする感じがあるのかな」

――先ほど〈不安〉とおっしゃってましたが、そういうご自身のマインドも入りつつ、ササノさんの歌世界は物語然とした面もあって。

「そこは趣味ですね(笑)。好みです。人間が人間の身体のまま一対一でぶつかってくる曲も聴くんですけど、そういうものを自分で書くとなると、しっくりこなくて。自分の身体がそれに相応しくない気がするんですよね。それでオブラートに包みまくって、ってことを前は結構してたんですけど、最近は伝わらなすぎるのもなあと思って、少しずつ言葉の芯の部分を出すようには意識してきてるかな。ただ、自分が俯瞰している感じというか、曲の中で言う主人公、言葉を発してる子をちょっと見下ろしているような歌詞の書き方が好きなので、絵本のような感じにしたいなっていうのはありますね」

――これまでのMVも含めて、絵本感はありますよね。今のお話を聞いていて、その俯瞰した視点はぼくりりさんと通じるかもと思いました。それでリリックはすんなり完成したようですが、トラックのほうはいかがでした?

「ただ、カッコ良いオケを作ってやろうっていう感じで(笑)。本当に好き勝手、ノリノリで作ってしまったおかげでものすごいトラック数が増えちゃったんですよ。何が何やらっていう状態だったので(笑)、ちょっと音を抜く作業をして。暇があったら音を重ねていってしまうので、それをもうちょっと聴きやすくしようっていうことは努めました。だからその反比例というか、逆の衝動で作った“Halo Hello Continue”はものすごくスッキリとした、いままでにないぐらいに少ないトラック数で、構成も最小限に止めて作れたかなって思いますね。“歩道橋と走馬灯”と“空と散歩”のレコーディングをしていたときに曲数を数えてて、もうちょっとお腹一杯にしたいなと思ったので、〈もう一曲作ります〉って言って作った曲で。〈スタジオに泊まってっていいですか? 明日までに作るんで〉って(笑)」

――それで、一晩で出来てしまったと。

「そうなんです。しかも、今回の中でも明るい曲になったなと思って(笑)。キーボードは持ってきてなくてパソコンだけで作ったんですけど、キーボードをまったく使わずに完成まで持っていったのは“Halo Hello Continue”が初めてなので、伝わるかわかんないけど、自分のなかで新しいことしたなっていう感覚はありますね」

 

自分自身をカタログ化

 当人が〈新しいことをした〉と語る“Halo Hello Continue”は、軽快なドラムンベース上でリズミカルな歌が弾む、彼の楽曲にしてはサニーなムードのナンバー。その一方で、ゆったりとしたブレイクビーツを基盤にさりげないシューゲイズ要素とストリングスを配した“歩道橋と走馬灯”、優美に踊るピアノと力なくスキップするコーラスをアクセントにした“空と散歩”は、従来らしいサウンドと言えるだろう。

 

――“Halo Hello Continue”の最初のアイデアはどういうものだったんですか?

「一応、『game of life EP』に入れる曲だから、ゲームに関連したものを作りたいなっていうところで、ループものでいきたいなと。コード展開も構成もループっぽく、歌詞もループを仄めかす感じで書いてやれと思って(笑)。元になっている作品が二つあって、それを混ぜたりしてるんですけど、まずは『NieR:Automata』っていうゲーム。〈NieR〉シリーズっていうのがありまして、横尾太郎さんていう方が脚本を書いていらっしゃるんですけど、それにドハマリしまして、それっぽい形を入れたいなと思いつつ、ちょっと前にずーっと観てた『魔法少女まどか☆マギカ』の登場人物に暁美ほむらっていう子がいるんですけど、そっち視点でなんか書けないかなっていうのを、もうくっ付けて一個にしてしまったものがこれになりますね。その両方のシナリオを追いつつ、自分の言葉で、自分の中にある視点を歌詞にしてます。ほむらっていう子の視点を俯瞰して後ろから見てるというか、その子の気持ちになってっていうか、ゲーム感覚で作れたなっていう感じですね。元にしてるお話は、両方ともハッピーエンドと言えぬハッピーエンドになるんですけど。世界観は悲惨なんですよね。そういうどうしようもない世界の中での幸せを探してる。どっちを向いても絶望ばっかりだけど、その中でも一時の幸せがあるんですよね。これは、そのために何回も人生を繰り返してるっていう歌です(笑)」

――あとの2曲についても伺わせてください。まず“歩道橋と走馬灯”ですが……。

「この曲は珍しく〈歩道橋〉っていう言葉を入れたいなっていうのが最初にあったので、そこから膨らんで周りが出来ていったって感じがありますね。フィクションとノンフィクションが半々ぐらいなんですけど、歩道橋の上から16号線を見下ろしててぼんやりと思ったことを歌詞に落としていこうと。その場でサビが出来たので、そこを起点に最後まで完成させた曲ですね」

――ここにも〈生きた気になって〉という歌詞がありますけど、今作に収録のオリジナル4曲に登場する〈僕〉は同じ人ですか?

「同じであって、同じじゃないというか、言い表すならばパラレルワールドというか。同じ考えなり、価値観なりを持っていて、そういう意味では同一人物だけど、別な曲を経験したうえでのその人ではなくて」

――別の世界線で同時に存在してる感じ。

「そうですね。だから、4曲とも曲の形が違う作り方に出来たかなって」

――抱えてるものは同じものなんだけれども、異なる4パターンの楽曲になったと。

「たぶん、僕の根底にある言葉っていうのが、無意識に各曲に入ってっちゃうのかな(笑)。それを広げていったときに出てきた4人の〈僕〉の、陰と陽のバランスが各曲で違うことによって、違う表現になってるのかなって感じがしますね」

――では、“空と散歩”はどんな〈僕〉のイメージでしょう?

「なんか、儚い感じっていうとぼやっとしてるんですけど、これはそういう子が歌ってるイメージで作ってて。いろいろと諦めてそうな子が力なく歌う感じのものを作りたいなっていう」

――〈溶かしていく〉とか〈褪せた〉とか、その他の曲にも〈消える〉とか。希薄ですよね、存在感が。

「消えそうな存在感がやっぱ好きなのかな。そういう言葉を入れたくなっちゃうんですよね。生命力が溢れてると、僕から離れていくというか」

――……はい、そこは同意です(笑)。

「説得力がなくなるのは嫌だなと思って、僕が歌うからには〈らしく〉したいというか。それを踏まえて言葉を選んでる気がしますね。特に“空と散歩”は言葉の選び方も、曲の作り方も〈好みです!〉っていうもので」

――確かに“空と散歩”は……といいますか、“歩道橋と走馬灯”もサウンド面はササノさんらしさが全開です。

「こういうしっとりした、かつ、淡い雰囲気が好きなんですよね。対して“Halo Hello Continue”はデジタル色が強いというかシーケンスで動かしてる感じ、一番ゲームらしい感じでトラックのほうは生っぽさを薄めにしてあるんで、その代わりに歌はわりと生命感のある感じにしてみたり。で、“game of life”はがっしりした方向での好きな音っていう4種類の方向性を出して、そのリミックスでは淡々と、ガチャガチャ分解するのもできますよ、っていうのを表してみつつ、っていう感じになってますね」

――今作はご自身の特性がさまざま詰め込まれた一枚になったと。

「そうですね。初回盤にはピアノの即興曲も入ってて、曲の雰囲気は全部バラバラなんですけど、どれがメインっていうことではなくて、〈ササノマリイはこういう人間で、こういうものを作りますよ〉っていうことを示したカタログというか。これまではあんまり言ってこなかったけど、今回は全部の曲、自分ではだいぶ気に入っているので(笑)、聴いた人がひとつでも気に入ってくれたらいいなと思いますね」 

ササノマリイが参加した作品を一部紹介。

 

ササノマリイの作品。

 

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