INTERVIEW

反田恭平『月の光~リサイタル・ピース第1集』 今の自分だからこその表現で、今の自分にしか残せない演奏を収めた新作を語る

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  • 2017.06.20
反田恭平『月の光~リサイタル・ピース第1集』 今の自分だからこその表現で、今の自分にしか残せない演奏を収めた新作を語る

今の自分だからこその表現で 今の自分にしか残せない演奏で

 反田恭平の新しいアルバム・タイトルは「月の光」。「リサイタル・ピース」という副題もある。実際に聴いてみると、冒頭に置かれているのは、シューベルトの《4つの即興曲op.90》。シューベルトが晩年に書いた、とても小品とはいえない作品だ。

反田恭平 月の光~リサイタル・ピース第1集 Columbia(2017)

 「この曲は大好きなんです。でも、学生のときに第2番や第4番をコンクールで弾く人が多く、それを聴きすぎたせいか、少し気持ちが離れました。しかし、ツィメルマンの演奏を聴いたときに、この曲に真剣に取り組まなければと思ったんです」

 第1番はオーケストラのために書かれた作品のようだという。「バーンと始まった後、フェルマータがあり、オーボエが入ってくるんです。次にコラールが四声で、まるで賛美歌のよう。そしてフルートによる旋律が入って、発展していく」。全体的に悲しい雰囲気を持ちながら、その裏に明るさや喜びが垣間見えるところに惹かれる。

 もっとも思い入れが深いのは、第3番アンダンテ。この曲は、難しい。生涯かけて弾くべき作品だという。「それを今の自分だからこその表現で、録音として残すことが大事だと思うんです」

 鮮やかな技巧でリストやラフマニノフを弾くイメージが強い反田だが、シューベルト作品にも大いに興味を示す。「後期のソナタにも取り組みたいですね。ソナタ第30番とか。半音の音程がたくさん出てくるんです。僕、半音がツボなので(笑)」

 このアルバムは、今年夏に行われるリサイタルの全国ツアーに向けて制作された。ツアーでは、二つのプログラムを用意している。「一つは、この即興曲やリストのソナタを含む、今自分が弾きたい、弾かなければならない作品」。もう一つは、ウェブで募集したファンからリクエストを曲から構成されている。

 「ショパンの練習曲のリクエストが一番多かったです。「革命」や「別れ」など単体で弾くよりも、練習曲op.10としてまとめて弾きたいと思ってそうしたんですが、これを全11回の公演で演奏するとなると、結構大変かもしれませんね」

 今年の4月には、佐渡裕指揮東京シティフィルと全国ツアーを行い、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を弾いた。全12公演で、反田は9曲のアンコール曲を披露している。

 「アンコールでは奏家の素が出てしまう。曲を決めるのは難しいですよ。当日のプログラムと一貫性をもたせるか、別のものとして考えるか、弾く直前まで悩みます。最終的に袖から出てくるときに決めますね。最後の曲を弾き終え、アンコールまでのピアニストの心情ってとても変なんです。終わったという気持ちのなか、また弾くぞとギアを切り替える瞬間、なんでも弾けちゃうような気もするんですよ。そこでモーツァルトなんか弾いたら、テンションが上がりまくりです(笑)」

 アンコールでは、モーツァルトの《トルコ行進曲》をファジル・サイ版とヴォロドス版などを組み合わせた自身の編曲で弾くことも。

 「自分の編曲による演奏もっと増やしたい。たとえば、ロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲。主題旋律がどんどん難しくなる変奏曲になるような。あと、作曲にも真剣に取り組みたいんです。今はハ短調のピアノ協奏曲を書いています」

 作曲をするのは、「仲間と一緒に弾けるものを書くため」。「ピアニストというのは孤独なんです。僕は11歳までサッカーやってましたから、みんなと一緒に何かをするということが大好きなんですよ。中学や高校のとき、合唱の伴奏をするのも好きでしたし、室内楽にももっと取り組みたいと思っています」

 「ピアノを弾けるだけでいい」と思っていた時代もあった。留学経験を経て、そうではないことに気づいた。今は「自分に必要なものをもっと勉強したい」。その最大の目標は、「学校を作りたいんです」と目を輝かせる。日本から世界に発信できるような音楽学校を目指すのだという。その物怖じしない野望が、みずみずしい彼のピアノ演奏と重なり合う。

 


LIVE INFORMATION

反田恭平 ピアノ・リサイタル2017 全国縦断ツアー
○7/8(土)19:00 開演 会場:ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川)
○7/13(木)18:30 開演 会場:静岡音楽館AOI(静岡)
○7/15(土)13:00 開演 会場:愛知芸術劇場コンサートホール(愛知)
○7/21(金)18:30 開演 会場:長岡リリックホール・コンサートホール(新潟)
○7/28(金)19:00 開演 会場:富山県教育文化会館(富山)
○8/3(木)19:00 開演 会場:札幌市コンサートホールKitara大ホール(北海道)
○8/4(金)19:00 開演 会場:函館市芸術ホール(北海道)
○8/6(日)13:30 開演 会場:福岡シンフォニーホール アクロス福岡(福岡)
○8/17(木)18:30 開演 会場:岩手県民会館中ホール(岩手)
○8/20(日)14:00 開演 会場:福島市音楽堂(福島)
○8/26(土)14:00 開演 会場:兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール(兵庫)
○8/31(木)18:30 開演 会場:秋田アトリオン音楽ホール(秋田)
○9/1(金)19:00 開演 会場:東京オペラシティ コンサートホール(東京)
soritakyohei.com/

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