INTERVIEW

八百万の神々も思わず踊る!? 日常歌わないダブ・ポップで注目集める4人組、YAOYOROSの魅力に3P3B主宰・曽根功と迫る

YAOYOROS『We are so cool.』

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  • 2017.06.23
(左から)曽根功(3P3B)、黒澤司(YAOYOROS)
 

これまでにASPARAGUSやbedの作品群を世に送り出し、今年で設立18周年を迎えた3P3B。このインディー・シーンきっての良質レーベルから、結成4年目の4人組バンドが登場した。彼らの名はYAOYOROS。早くも〈ポストYogee New Waves〉〈21世紀のフィッシュマンズ〉などという謳い文句も聞こえてくる彼らだが、〈ヤオヨロズ〉というインパクトのあるバンド名同様、ロックやファンク、ソウル、レゲエにヒップホップなど多種多様な音楽要素をダブでコーティングしたかのようなその音楽世界はかなり独特。全6曲が収録されたファースト・ミニ・アルバム『We are so cool』にもまた、1曲ごとに異なるYAOYOROS像が展開されている。八百万の神々もニコリと微笑む注目のニューカマーのバックボーンに迫るべく、ヴォーカル/ギターの黒澤司と3P3Bの曽根功社長に話を聞いた。

YAOYOROS We are so cool. 3P3B(2017)

 

“風が強く吹いてる”に手応えがあって、この路線を軸にしていこうと思った

――バイオグラフィーによると〈2013年夏、インターネットで出会った4人で結成〉されたそうですが、結成の経緯を教えてください。

黒澤司(YAOYOROS、ヴォーカル/ギター)「その前まで弾き語りでライヴをやっていたのですが、友達から〈バンドでライヴをやってみない?〉と誘われたんです。でも、バンド界隈の友達がいなかったので、〈with9〉というインターネットのバンド・メンバー募集サイトに情報を載せてみた。それで最初に連絡をくれたのがドラムの中島で、なんとなく始まった感じです。当初は2ピースで活動していました」

――メンバー募集にあたってはどういうことを書いたんですか。

黒澤「まずは好きなバンドの名前を書きました。ビートルズや忌野清志郎とか、奥田民生、ウルフルズも書いたと思います。基本は歌が良いロックをやりたかったのかもしれません。あとはファンクですね」

――2ピース時代はどんなサウンドだったんですか?

黒澤「2人ともスライ&ザ・ファミリー・ストーンが好きなので、ファンクの要素が強かったですね。(演奏していたのは)ワンコードで引っ張っていく感じのオリジナル曲。当時はまだ〈黒澤司と中島雄士〉という名前でやってたんですけど、ベース(藤田裕貴)が入ったこともあって、そろそろちゃんとバンド名を決めようと。それでYAOYOROSという名前で活動し始めたんです」

――ところで、この謎めいたバンド名はどこから出てきたんですか?

黒澤「日本語のバンド名にしたかったんですけど、日本語のなかでも品格があって、日本人として誇れるような、日本独自の言葉にしたかったんです。あとは、ジャンルに囚われずにいろんな音をやりたかったので、イメージを固定しない名前が良いねと。そんな話をしながら、じっくり考えて〈八百万(ヤオヨロズ)〉という名前しました」

――ファンクから現在のダブ・ポップ路線へと音楽性が変化していくきっかけは何だったんでしょう?

黒澤「2015年にデモCD(『swim in the city』)を作ったんですけど、自分たちのなかでもやりたいことが多すぎて、当時は何をやりたいか見えていなかったんですよ。でも、『swim in the city』に入っていた“風が強く吹いてる”に自分たちなりの手応えがあって、この曲みたいなダブっぽいものをバンドの軸にしていこうと」

――みなさんのバックボーンにダブはあるんですか?

黒澤「いや、ほぼないんですよ。人並みに(オーガスタス・)パブロやMUTE BEAT、フィッシュマンズなどは聴いていたんですけど、そんなに深く聴いていたわけじゃなくて。“風が強く吹いてる”はエンジニアの池田(洋)さんがダブ風にイジってくれて、それでああいう雰囲気になったんです」

“風が強く吹いてる”デモ・ヴァージョン
 

――それにしても、最初はファンクをやっていたのに、気づいたらダブ・ポップ化していたというのはおもしろい進化の仕方ですよね。

黒澤「僕自身、最初は弾き語りをやってたので、自分としてはその延長でこういうふうに変わってきたという感覚もあるんですけどね。昔は今とでは歌い方自体違っていたと思います。もともと憂歌団みたいなブルースも好きなんですよ」

――当時は木村充揮さん(憂歌団)みたいな歌い方だった?

黒澤「そうかもしれないですね。ちょっとしゃがれた歌い方だったと思います」

――今は跡形もないけど(笑)。

黒澤「そうですね(笑)。気づいたらこういう歌い方になってました。たぶん前はちょっと無理していたと思うんですよ」

――だんだん自然になってきた、と。ちなみに、最近の音楽はあまり聴かないんですか?

黒澤「いや、聴きますよ。海外だとアーランド・オイエやコスモ・パイクが好きです。あと、夕暮れの動物園、キーチビール&ザ・ホーリーティッツ、ペドラザとか自分たちと近いバンドは好きですね。ほかのメンバーはメロコアを通ってる人もいればビートルズ好きもいて、本当にみんな嗜好性がバラバラなんです」

 

ヘンな歌詞でおもしろい

――ところで、曽根さんがYAOYOROSのことを知ったのはいつごろだったんですか。

曽根功(3P3B)「2016年の5月だったと思います。去年の3月後半に新しいバンドの音源をリリースしようと思い立って、ネットで探し始めたんです。ある日SoundCloudを流しっぱなしで仕事してたら、“とけだした夏に”が突然かかったんです」

――どう思いました?

曽根「ヘンな歌詞でおもしれえなと思いました(笑)。当時、ほかにも3曲デモがアップされてたんですけど、曲調はバラバラで、そこもまたおもしろかった。それでライヴを観に行って声をかけました。でも弊社のことを知らなかったんだと思います、怪訝な顔をされて(笑)」

黒澤「いやいや(笑)」

曽根「デモCDを買おうとしたら、〈今の音と違うから買わないでくれ〉って言われるし(笑)」

黒澤「お客さんのフリをして根掘り葉掘り聞かれたんですよ(笑)。〈レコーディングをしないのか〉とか〈デモは自分たちで録ったのか〉とか。この人、誰だろう?と思って(笑)」

曽根「どれぐらい真剣にバンドをやってるのかわからなかったので、バンドの今後の方向性とかをちょっと探ってみたんですよ。そしたら〈長くやっていきたい〉ということだったので、またライヴを観に行ったんです。そうしたらギターのワタナベ(アキヒロ)が弊社を知っていてくれて、それから話しやすくなりました」

黒澤「ワタナベはASPARAGUSが大好きなんですよ。〈えっ、3P3B? マジで?〉って驚いてた(笑)」

ASPARAGUSの2012年作『PARAGRAPH』収録曲“Analog Signal Processing”
 

――曽根さんはもともと新しいバンドを探していたとのことですが、どんなバンドを探してたんですか。

曽根「日本語詞のバンドを探してました。それこそ最初は、ウチのカラーと全然違うJ-Popっぽいギター・ロックのバンドを思い切って探したんです。ですが結局気になるバンドは自分の好きな音だったりジャンルだったり声だったり、趣味の域を出ないバンドばかりで。そういう流れがあってYAOYOROSのことを知るんです」

――3P3BのカラーとYAOYOROSはちょっと違いますよね。

曽根「それ、よく言われるんですよ。確かに過去YAOYOROSのようなバンドのリリースはありませんが、個人的に好きなタイプの音楽だし、最終的には僕の趣味がレーベルのカラーになると思ってるので、ウチのカラーと違うっていう意識はまったくないです」

――リリースにあたって曽根さんのなかではYAOYOROSのどういう部分を押していきたいと考えてました?

曽根「歌詞を聴いてもらいたいですね。彼(黒澤)も歌詞についてはかなり考えて作ってるし、実際、おもしろい歌詞だと思うんですよ。基本的にいろんなことをやりたいバンドなので、音楽性自体は今後も変わっていくと思うんですね。ただ、黒澤の言葉選びのセンスは今後も変わらないんじゃないかと思っていて。それがこのバンドの軸になっていると思うんですよ」

――歌詞の感じは弾き語りのころから変わらないんですか?

黒澤「そのころはもっと生活に近い感じというか、高田渡さんや友部正人さんみたいに自分の日常を歌ってました。それからは多少変わったと思いますね。一人称で自分の日常や内面のことを歌うのもいいんですけど、それだけだとおもしろくなくなってきちゃって」

――“風が強くふいてる”の歌詞なんておもしろいですよね。サビにきて突然〈国家とは/自由とは/自分とは何か/考える時間がある〉というフレーズが入ってくる。すごく耳が引っ張られる言葉ですよね。

黒澤「僕の場合、曲よりも先に詩を書くんですよ。読書が好きなので、何か気になるフレーズがあったらメモしておいたり、あとは呑んでて隣の席の話が気になってメモったり。そうやって日常的にメモするようにしてて、この曲もそうやってできたんです」

 

今の時代にあまりないものだからこそ、おもしろいんじゃないかな

――リリースされたばかりのファースト・アルバム『We are so cool』には6曲が収録されていますが、どれもすでにライヴでよくやっている曲なんですか。

黒澤「“とけだした夏に”“AURORA BEAT”“風が強くふいてる”“考えちゃうのさ”の4曲はライヴでもよくやってます。それに比較的最近作った“tadayoi swimmer”と、一番最近出来た“waiting girl”を入れて6曲にしました」

――曲調は幅広いですけど、ダブで全体をコーティングしたような音作りや各楽器の奥行きは統一されてますよね。

黒澤「レコーディングの段階ではそれほど(統一感を)意識してなかったんですけどね。今回のミックスも『swim in the city』をやってくれた池田さんにお願いしたんですけど、少しダブっぽい要素を入れてもらいました」

曽根「ドラムの中島とギターのワタナベも音に関してはかなり細かく気を遣ってやってますね」

――確かに“tadayoi swimmer”のドラムの質感もバンドのドラムっぽくないというか、ちょっと打ち込みの雰囲気があるんですよね。

黒澤「ああ、それはあるかも。基本的にデモは僕が自宅で作ってみんなに聴かせるんですけど、その段階では自分で打ち込みで作ってるんです。自分自身、ヒップホップも好きなので、打ち込みでは、そんな感じのリズムを入れたりしていますが、メンバーがそれをちゃんと解釈してくれて、密に話し合うことによってイメージしていた雰囲気になった時に、全員が〈来た!〉ってなる感じです(笑)」

――そうなんですね。ちなみに、ヒップホップはどのあたりを聴くんですか。

黒澤「SOUL SCREAMが好きなんですよ。海外だとA Tribe Called Quest。どちらかというと昔のもののほうが多いですね。今の人ではアンダーソン・パークとかが好きです」

アンダーソン・パークの2016年作『Malib』収録曲“Come Down”
 

――黒澤さんの年齢にしては、さっきから出てくる名前が渋めな感じもしますね。憂歌団であるとか高田渡さんだとか。

黒澤「親の影響があるのかな。ウチの親が音楽好きなんですが、母親はフォーク好きで、父親はソウルやディスコが好きなんですよ」

――まさに今のYAOYOROSの音楽性と直結してる感じがしますね。

黒澤「そうですね、確かに繋がってると思います」

――アルバムの話に戻ると、ちょっとディスコっぽい“waiting girl”は一番最後に出来た曲ということですが、これが現在のYAOYOROSの形を表した曲ということもできそうですね。

黒澤「“waiting girl”はほかの曲と違ったテイストのものが欲しくて作ったんですよ。ユルく踊れる感じのものというか。リズム的にはファンクですね。ただ、昔のファンクではなく、質感は今のものというイメージ」

――ラストの“考えちゃうのさ”はユルめのレゲエ/ダブ。

黒澤「まさにレゲエ/ダブっぽい歌が欲しくて、狙って作りました。歌詞やタイトルに関しては、居酒屋で呑んでるときに隣の席のオジさんが言ったんですよ、〈いやー、考えちゃうのさ〉って(笑)。何か引っかかるものがあって、その言葉を膨らませていきました。僕の場合、そうやって言葉を拾い上げたあとに、膨らませて歌詞を作ることが多いですね」

――〈We are so cool〉というアルバム・タイトルはどこからきたんですか。

黒澤「英語のタイトルがいいなと思ってて、いろいろ考えてたときにふと浮かんできたんです。今の時代あんまり言わないというか、一見ダサいと思われそうなタイトルじゃないですか」

曽根「僕もそう思いました(笑)。ダセエ!って(笑)」

黒澤「本当にこれでいいの?って言われましたもんね(笑)。今の時代にあんまり使われないタイトルだからこそおもしろいんじゃないかと思ったんです。おかしさもあり、本気で(We are so coolと)思っているところもあり、という感じですね。誰でもわかる言葉だし、あえて付けることによって、かっこいいんじゃないかなと」

――YAOYOROSって、いろんなところにちょっとした引っ掛かりを用意してますよね。アルバム・タイトルやバンド名もそうだし、曲にしてもソウルやファンク、ダブの定型をなぞっていくんじゃなくて、音作りやアレンジ、言葉のセレクトなどどこかに〈あれ?〉と思うようなところがある。そのセンスが独特で、なおかつ統一感があるんですよね。

黒澤「そうなってるといいんですけどね。そこが自分たちなりのYAOYOROSらしさになるんではないかと思います」

――今後の活動についてはどう考えてます?

黒澤「できるだけ早く次のアルバムを作りたいですね。曲はまだこれから作る感じですけど(笑)」

曽根「意外と1曲作るのに時間がかかるんですよ(笑)」

黒澤「作ってもすぐに自分たちで却下しちゃうんです(笑)。デモの段階では良くても、バンドでやるとどうもピンとこなくて却下したり」

――曽根さんはYAOYOROSのこれからについてはどう考えていますか?

曽根「このバンドは今後どんどん変わっていくと思うので、新しい曲が出来たらすぐにリリースできたらいいなと思ってます。フル・アルバムにこだわらずシングルでもいいので、その進化の過程も見ていきたい。時間は掛かるかもしれませんが、素晴らしい楽曲を作ってほしいです」

 


Live Information
〈We are so cool. release tour〉

日時:2017年7月15日 (土)
会場:大阪・地下一階

日時:2017年7月16日 (日)
会場:名古屋・K.Dハポン

日時:2017年8月6日 (日)
会場:東京・下北沢 Daisy Bar
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