最高傑作を作ったという満足感があるし、バンドの状態も今がいちばん

――微妙な体温の楽曲が続くなかで児玉奈央さんをフィーチャーした“Love Land”が入ってくるとたまらないものがありますね。去年のEP『DIVE』にも入っていた曲ですが、これはスパンキー・ウィルソンも歌っていた楽曲のカヴァーで。

※オリジナルはチャールズ・ライト&ワッツ・103rd・ストリート・リズム・バンド

Cross「セカンド・アルバム(2009年の『SEVEN GODS IN A…』)ではキャロル・キングの“I Feel The Earth Move”をカヴァーしたんですけど、そのときはズクナシのエミちゃんに歌ってもらったんですね。奈央ちゃんはその段階からフィーチャリング・シンガーの候補に上がっていたんです。僕の高校の先輩でもあるので、いつかやってもらいたいなと思っていて。選曲に関しては、候補曲をみんなで持ち寄るなかでダイちゃんがスパンキー・ウィルソンの最近の曲を持ってきたんだけど、〈それだったら“Love Land”のほうが良くない?〉と。レアグルーヴのクラシックだし、僕も大好きな曲だったので」

スパンキー・ウィルソンの70年作『Let It Be』収録曲“Love Land”
 

――原曲とは違うロックステディ・アレンジになっていて、アルバムのなかでもいいアクセントになっていますよね。

Cross「アレンジの案はいろいろあったんですけど、“Shanty Town”オマージュのギター・カッティングがすごく合いましたね」

※デスモンド・デッカーが67年に発表したロックステディ・クラシック“007 - Shanty Town”

TANAAMI「アレンジは多数決で決めた気がする(笑)。ソウル調とこのロックステディ調、あともうひとつアレンジ案があって」

――ゲストはもうひとりいて、スティールパンのタカヒロさん(チーナフィルハーモニックオーケストラ)が“Sunset Glow”に参加しています。この曲はカリプソ~アーリー・ソカ調の曲ですけど、ちょっとリンガラの雰囲気もあっておもしろいアレンジですよね。

Cross「タカヒロくんに参加してもらうという案は結構突発的に思いついたんです(笑)」

Akirag「ちょうどタカヒロくんと飲む約束をしていたので、レコーディングのときにふと思いついて誘ってみたんです(笑)。ちょっとトロピカル感が欲しくなって、いきなり呼んだんですけど、バチッといい演奏をしてくれましたね」

チーナフィルハーモニックオーケストラの2016年作『PUSH』収録曲“コーラス讃歌”
 

――この曲もカリビアン風なんだけど、やっぱり熱帯というよりクールな感覚があって、まさに今のRIDDIMATESという感じがしますね。

TANAAMI「そうですよね。ちょっと(力が)抜けているような感じがあって。『JOY』に入っていた“Twi-Titi”にも近い脱力系カリビアンというか」

――そうそう、話が前後しちゃいますけど、冒頭曲“For The Beats”もすごく〈抜け感〉がありますよね。力んでいる感覚がなくて、ポップで軽やか。

TANAAMI「ダンス・ビートですもんね。この曲はずっと“四つ打ち”っていう曲名だったんですよ(笑)」

Akirag「この曲もかなり紆余曲折がありました。Youくんが持ってきたんですけど、どうもしっくりこなくて。そんなときにYoshが突然(バスドラムを)ドン!ドン!って四つ打ちで踏み始めて。そうしたら、急にうまくいった」

Cross「四つ打ちの曲って作ったことがなかったんです。なんならNGだったぐらい(笑)。でも、やってみたらハマりましたね」

――ところで、アルバムの資料には、Crossくんのこんなコメントが書いてあります。〈本を読んでいて出会ったんだけど、想いが言葉を超えるって、いい言葉だなぁって。俺等の音楽もインストだから言葉を超える何か……が伝わって欲しいなと思って演ってるので〉と書いていますけど、ここでいう〈想い〉とはどういうものなんでしょうか?

Cross「RIDDIMATESをやりはじめたぐらい、確か新宿LOFTでライヴをやったときに、酔っぱらった女性にこう言われたことがあるんです。〈伝えたいことがあるということはすごく伝わってきたんだけど、何を伝えたいの?〉って。でも、自分でも何を伝えたいのか答えられなかったんですよ。それが悔しかった。なので、それはなんなんだろうとずっと探していて。 自分としては、音楽を通して汗をかいて自分を解放することで、生きていることを表現していると思っているけれど、それについてもメンバー6人全員みんな違っていると思うし、お客さんによって感じるものも違うと思うんですね。最終的にはそれでいいと思っていて、インスト・バンドとして言葉を超える何かがひとりひとりに伝わっていったらいいなと。でもね……やっぱりヴォーカリストのいるバンドは強いんですよ(笑)」

――でも、インスト・バンドだからこそ、言葉や意味を超えたところにあるものを掬い取ることもできるんじゃないかと。

Akirag「そうですね。言葉と歌があると、イメージや景色を限定するところもあると思うんですけど、インスト・バンドだからこそ限定しない。決めつけない」

――さっきの話に繋がってきますよね。今回のアルバムでいえば、ファンクをやろうとしてファンクをやったわけじゃなくて、自然にファンク的様式に近づいていった。だから、僕にはファンクに聴こえたけど、他の方にはまったくそう聴こえない可能性もありますよね。そこにこのアルバムのおもしろさがあると思う。

Akirag「そうなっているといいですね」

――ちなみに、CrossくんはRIDDIMATES以外の活動も盛んですよね。いまレギュラーで参加しているバンドはどれぐらいあるんですか?

Cross「REGGAELATION INDEPENDANCE、Hei Tanaka、あとはサポートとしてKeishi Tanaka、チーナ・フィル・ハーモニック・オーケストラとその他諸々ですね」

REGGAELATION INDEPENDANCEの2017年作『REGGAELATION ROCK』収録曲“レゲレーション・インディペンダンスと遊ぼ”
 

――どのバンドも頻繁にライヴをやっているし、並行して活動していくのは大変じゃないですか?

Cross「そうですね。でも、やっぱりリーダー・バンドだからRIDDIMATESは特別だし、どんどんやっていきたいと思ってます。ただ、そのぶん思うようにいかないときの苦しさもある。そういう苦しさは見せなくてもいいのかもしれないけど、続けていると足踏みの段階もあって、決して順風満帆じゃない。でも、RIDDIMATESは自分のアイデンティティーを出せる場所なんで、もっともっとできることがあると思っています。結果、今回自分たちでも最高傑作を作ったという満足感があるし、バンドの状態としても今がいちばんいいと思う。もっとイケると信じて進みます」

――メンバーも固まったし、すぐにでも作品を出したいんじゃないですか?

Cross「そうですね。さっきも言ったように、(サックスを)10分間吹きまくっているような曲もやりたいし。あとはセッションをずっとやっていたんで、Bサイド的な渋い曲がたくさん溜まっているんですよ。もしかしたらそのあたりの曲をまとめてすぐリリースするかも」

――それは、すごく聴きたいです。楽しみにしています!

 

Live Information

〈『OVER』RELEASE PARTY!! ONEMAN SHOW!!〉
2017年7月22日(土)東京・渋谷WWW
出演:RIDDIMATES
Guest Vocal:児玉奈央
Gueat Dj:角張渉
Decoration:大島エレク総業
Food:can cafe
開場/開演:18:00 /19:00
料金:前売 3,000円 当日 3,500円(いずれも1D別)
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