いま伝えたいこと、いま届けたい音楽を、もっと人間味のある言葉で——新たなフレイヴァーも加えて新たな薫りを放つ『chayTEA』。いまのchayはこんなに芳醇でスパイシーなのです!!

瞬間を大切にしたくて

 レトロ・テイストの華やかなポップソングを携えて、デビュー5年目を快調に迎えたシンガー・ソングライター、chay。2014年からは「CanCam」の専属モデルとしても活躍し、翌2015年に月9ドラマの主題歌となったシングル“あなたに恋をしてみました”がヒット──そんな活動スタンスは、両親の影響で幼い頃から聴いていたシンディ・ローパーに憧れ、〈耳でも目でも楽しませるアーティスト〉をめざしてきたという理想のスタイルを行くものだろう。そんな彼女が、軽妙なディスコ歌謡“好きで好きで好きすぎて”、ブライアン・メイばりのギターを響かせたビートル・ポップ“それでしあわせ”、ツイスト調のウェディング・ソング“運命のアイラブユー”、同曲のカップリングで鈴木茂や林立夫を招いた荒井由実のカヴァー“12月の雨”、そして、aikoなどでお馴染みの島田昌典が豪奢なストリングスを施した“恋のはじまりはいつも突然に”といった遊び心たっぷりのシングル群を詰め込んで、セカンド・アルバム『chayTEA』を完成させた。

chay chayTEA ワーナー(2017)

「前のアルバム『ハートクチュール』から約2年経っているので、楽曲のストックもたくさんありましたが、いま届けたい音楽、いま伝えたいこと、いまのchayを詰め込みたいなと思って、収録曲は最近になって作ったものが多くなりました。『ハートクチュール』を出した24歳の頃から、2年の間に自分の気持ち、考え方、恋愛観も変わりましたし、やはりその瞬間瞬間を大切にしたいと思っいます。以前と同じように恋愛をテーマにしていても、シングル“運命のアイラブユー”みたいに〈結婚〉と繋がっている曲になったのは、同級生が第一次結婚ラッシュだという近況を反映していたりしますし、今回のアルバムを作るにあたって(プロデューサーの)多保孝一さんとも〈2017年ヴァージョンにアップデートしたchayを聴いてもらいたい〉というのが共通認識としてありました。一度出来上がっていたものを作り直したり、アレンジの面で新たな挑戦をしてみたり、いままでやってきたものとはちょっと違うもの、まさに〈いまのchay〉が詰まってる一枚になったかなって思います」。

 

それもchayらしさ

 そんなアップデート感を象徴する新録曲が“真夏の惑星”。多保による親しみやすいメロディーに、新進気鋭のサウンド・クリエイターとして注目のYaffle(Tokyo Recordings)によるトロピカル・ハウス風味のアレンジが融け合ったナンバーだ。

「まさに〈2017年ヴァージョンのchay〉っていう思いがもっとも表れてる曲だと思います。私のいままでの曲にはない、良い意味で裏切ってくれたアレンジになりました。Yaffleさんは私と同い年なんですけど、レコーディングに集まったプレイヤーの方々も同世代の方々ばかりでアレンジ自体も新鮮ですけど、エネルギッシュというか、同世代ならではの感覚が不思議とサウンドに出るものなんだなって、新たな驚きでした。yaffleさんには“恋はアバンチュール”でも新鮮なアレンジをしていただいていて、いままでchayがやってなかったこと、でも、真逆のことをやっているわけはない絶妙なところを突いている感じが気に入っていまます。アレンジの大胆さで印象は変わっても、多保さんが書くメロディーのキャッチーで強いところは揺るがないですよね。それもあって今回は、自分で書いた曲も、挑戦というか、いままでやりたかったけど考えすぎてできなかったことを、思いっきりやれたところはあります」。

 そうして生まれた自作のナンバーは4曲。南国テイストの意匠とキッズ・コーラスがハートフルな“Be OK!”、すれ違いの多いカップルの恋愛事情を軽やかなカントリー・タッチで描いた英詞曲“Kiss me”、TVのドキュメンタリー番組を観て生まれた感情をファンキーな演奏に乗せていく“Don't Let Me Down”、そして、聴き手の背中を優しく押してくれるようなバラード“You”。

「デビューしてすぐの頃は、〈綺麗な言葉を書かなきゃ〉って思っていたり、格好悪いと思われそうなことや、自分のダメな部分とか他人に言いたくない恥ずかしい部分をすごく気にして隠していて、本当に伝えたいことがなかなかうまく言葉にできませんでした。でも、最近はパーソナルな部分というか、人間味のある言葉で書こうという気持ちに変わってきましたね。私が作詞作曲をした曲がアルバムに入ることによって、多保さんが書いてくださった曲とのバランスが崩れちゃったらどうしようとか、そういう考えも作りはじめる前にはありましたけど、私が歌ったらchayの曲になるわけだし、ヴァラエティーに富んだものを歌っていく、それもchayらしさのひとつとして、言葉にしてもアレンジにしても、いろいろな部分で振り切れたアルバムだと思います。アルバムのタイトルになった〈チャイティー〉という飲み物は、chayというアーティスト名の由来でもあるんですけど、その味の通り、今回は甘いだけじゃなくスパイシーな作品になったと思いますし、本当に自信作です」。

chayの作品。

 

『ハートクチュール』以降にリリースされたchayのシングル。