INTERVIEW

YDIZZY『DIZZiNESS』 東京の新世代クルー・kiLLaの筆頭格が初のフィジカル作に詰め込んだ自信と確信を語る

YDIZZY『DIZZiNESS』

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  • 2017.07.11
YDIZZY『DIZZiNESS』 東京の新世代クルー・kiLLaの筆頭格が初のフィジカル作に詰め込んだ自信と確信を語る

 小学校に上がる前に、ラジオで聴いて初めてCDをねだったというブルーハーツや、後に知ったBOØWY、セックス・ピストルズ。10歳の頃、地元・渋谷で声をかけてきたKダブシャインに手渡された“オレはオレ”から聴きはじめた日本語ラップ。さらに、CMで知ったエミネムから辿ったUSヒップホップ、そして歌謡曲やJ-Pop……海外ともリンクしながら東京のカルチャーにフレッシュな風を吹き込むYDIZZYは、母親の影響もあって幼い頃から多様な音楽に接してきた。小学校の頃から熱中したのはバスケットボールだったが、現在の活動も小・中学校の仲間で作ったストリート・バスケのチームが発端だそう。後のYENTOWN加入も手伝って大きくなったその輪にあって、チームはkiLLaというクルーへと発展し、YDIZZYの音楽キャリアが始まった。わずか2年ほど前のことだ。

 「オシャレは昔から好きだからオシャレしてたら雑誌に載って、そのタイミングで曲を作る奴が出てきて、kiLLaになった感じ。別に興味なかったけど、夜に代々木公園で音楽を流してバスケやってた流れで、いつのまにか遊びでフリースタイルやってて……いい感じだったら、一緒に家に行って曲を録る、みたいな」。

YDIZZY DIZZiNESS bpm tokyo(2017)

 遊びのスタンスから広がってきた活動は、初のフィジカル作品となる今回の『DIZZiNESS』で、また新たなステージへ。アルバムのトータル・プロデュースを担うのはYENTOWNを後見するChaki Zuluだ。昨年冬のkiLLaのYENTOWN脱退を経てなおピースな関係にある両者だからこそ実現した今回のリリースだが、そもそもの計画は知り合って間もない頃にChaki Zuluが持ちかけたものだという。以来、制作は2年近くに及び、客演ナシという構成も彼の一言で決まったんだとか。

 「2人ともけっこうな時間を一緒に過ごして、制作中にいろいろあったことも互いに曝け出してできた。最初はせっかくだからkiLLaのメンバーも入れたかったんだけど、Chakiさんは〈全部一人でやれよ〉って。〈じゃあ、Chakiさんも一人でやってくださいよ〉って感じで、俺とChakiさんのアルバムみたいになった。ドクター・ドレーとエミネムみたいなイメージでできたらおもしろいかなって」。

 レコーディングでは「浮かんだフックを目の前で歌って、そこからトラック作ったやつもあったし、スタジオでいきなり〈こういうのやろうよ〉って音を聴かされてその場で書くっていう新しいチャレンジもあった」という。夢に向かう内なる思いも歌った『Syndrome III』を経て、YDIZZYのラップには自信と確信が満ちている。フレーズ一つからChaki Zuluと意見を闘わせたという歌詞を、鬱憤を晴らすように荒々しく叫ぶ“DAMARE”や、「みんな絶対これ好きでしょ?って思いながらChakiさんと一緒にフリースタイルして正解を探した」という“OMW”は、作品をエネルギッシュに飾るもの。〈世界を変える〉と誇示するリード曲“SuperrStarr”では、自信満々な口ぶりが己への鼓舞であることも窺わせつつ、そのラップをパワフルなものに昇華している。

 「“SuperrStarr”は自分でカッコいいと思わなくて。だけどChakiさんめっちゃ上がってるんすよ、〈ハンパないじゃん! ヤバイ、まだ処理できない!〉とか言って(笑)。あれのフックは大合唱に聴こえるように40ぐらい声を重ねてるんすよ。それが一番時間かかった」。

 これまでの配信作と同じくトラップ系のビートを中心としながら、曲調の幅を広げたこともトピックだ。90sの日本語ラップを思わせる音とラップが意表を突く冒頭の“MAZU”や、“WAKWAK”も然り。一方で、「出来た瞬間、俺自身が好きすぎてハンパなかった」と語る“TOKYO”ではディスコ風味のオケで甘いドライヴへとエスコート。チャンス・ザ・ラッパーを例にしたChaki Zuluからの提案でラップから歌に繋ぐスタイルを見せたという“Deep Love”では、ジャジーな演奏とソウルフルなコーラスを背にムーディーに愛を囁く。

 「Chakiさんが自分の知らなかった能力を引き出してくれて、このアルバムは自分がどんどん成長できた理由になった。めちゃくちゃいいよね。いままでで一番いい。CDの外見も超カッコいいし、いろんな場面で絶対ピッタリな曲があるはずだから、とりあえず聴いてもらわないと始まんないな」。

 2パックやノトーリアスBIGの曲を〈よく知らない〉と言ったリル・ヨッティの例とは違えど、東京の先端にいる彼から聞く「一人でいる時は昔の日本語の歌ばっか聴いてますね。最近ではWANDSかな」という言葉には、従来と違うラッパー像を見る思いが。kiLLaの動向と併せ、下半期もその動きは止まりそうにない。

 


YDIZZY
94年生まれ、東京は渋谷出身のラッパー。幼少時よりさまざまな音楽に親しむ。友人たちとの交遊からkiLLaを構成し、ラップ活動を開始。2015年に初の音源集『Syndrome』をフリーで公開し、YENTOWNメンバーとしてのマイクリレー曲“Seven Sinners”に登場して脚光を浴びる。2016年にはANARCHYの“NO FEAR”に客演し、10月にミックステープ『Syndrome II』を配信。其の後、kiLLaごとYENTOWNを離脱し、12月にkiLLaとしてのファーストEP『kiLLa EP vol.1』をリリースする。今年に入って、2月に『Syndrome III』を配信リリース。さらなる注目を集めるなか、このたび初のフィジカル作品となるニュー・アルバム『DIZZiNESS』(bpm tokyo)をリリースしたばかり。

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