ジョン・フェイヒーに愛を込めて

 「俺はギターを弾いていたが、頭の中ではオーケストラを聴いていた。つまり俺はフル・オーケストラのために作曲していたんだ」というカッコイイ言葉も残しているジョン・フェイヒーが、1950年代末に発明したアメリカン・プリミティヴ・ギター。90年代後半にシカゴ音響派によって再評価された、このアルペジオ&フィンガー・ピッキングを多用した(主に無伴奏の)ギター・ソロ・スタイルが、近頃じわじわ見直されはじめています。

 流れを作ったのはNY在住のスティーヴ・ガン。RVNGより登場したマイク・クーパーとの共演盤『Cantos De Lisboa』や、カート・ヴァイルのバックを務めたことで、インディー・リスナーからトレンディーな人として注目され、彼が昨年マタドール入りしたのを機に、PitchforkやUncut誌などでもこれ系のフォーク・ギタリストの名前を確認できるようになったのです。例えば、かつてスティーヴも籍を置いたスリー・ローデッドがイチオシするダニエル・バックマンはアパラチアン様式の素朴さをウリにし、デッド・オーシャンズに在籍するライリー・ウォーカーはニック・ドレイクと比較される繊細な歌声も魅力的で、ラムチョップの一員でもあるマージ所属のウィリアム・テイラーはクラシック音楽の素養を打ち出した美旋律に定評があり……と、各々の個性を探ってみるのも一興。なお、ここに挙げた演奏家はいずれも高いスキルを持ちながらテクに走りすぎず、しっかり歌心を備えていて聴きやすいので、ぜひ気軽に手を出してみてください。 *山西絵美

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