BRENT COBB Shine On Rainy Day Elektra(2016)

風貌からして〈生まれてくる時代を間違えたんじゃ?〉って印象が強いこの若造は、ナッシュヴィルを根城とするシンガー・ソングライター。熟練カントリー・ロッカーみたいなムードの漂う楽曲群が、US南部の静かな日常風景を豊かに描き出していく。プロデュースは従兄弟のデイヴ・コブが担当。 *桑原

 

IMELDA MAY Life. Love. Flesh. Blood Decca/ユニバーサル(2017)

ジェフ・ベックとの絡みなどで名を売った歌い手によるメジャー第4弾。これまではパンキッシュなロカビリー・クイーンといった在り方で個性を印象付けてきたが、T・ボーン・バーネットと組んだ本作でイメチェン。意外と透明感のある声を響かせ、まろやかなジャジー・ポップに挑戦している。 *内本

 

SAM COHEN Cool It 30th Century/Columbia(2016)

かつてアポロ・サンシャインやイエローバーズを率い、最近ではケヴィン・モービー作品などプロデュース仕事にも積極的なサム・コーエン。デンジャー・マウスのレーベルから発表されたこのソロ作は、レイドバックしたニール・ヤング&クレイジーホース……なんて雰囲気の黄昏サイケ・フォーク盤。 *赤瀧

 

THE MAGNETIC FIELDS 50 Song Memoir Warner Bros./ワーナー(2017)

50歳を迎えたフロントマンのステフィン・メリットが、自身の半生を1年につき1曲ずつ振り返る5枚組/全50曲の大作。カントリーやロックンロール、フォークにサイケにフリージャズなど、さまざまな要素が入り乱れた内容は、自叙伝的でありながら、US大衆音楽の見本市といった側面もある。 *北爪

 

SAMMY BRUE I Am Nice New West(2017)

ウディ・ガスリーとディランを聴いて育ったユタの15歳。スティーヴ・アールの息子に発掘され、この初作はアラバマ・シェイクスのベンが手掛け……とバックアップ体制もバッチリです。衝撃度の高さはジェイク・バグが出てきた時と同じくらい? 年相応に弾けてみせるドゥワップ調“Was I The Only One”が◎! *山西

 

NORAH JONES Day Breaks Blue Note/ユニバーサル(2016)

ノラがジャズ回帰した……とあちこちで話題になった最新作。キッチンの傍にあるピアノで作ったという楽曲はいずれもビターなテイストが強め。仄暗くメランコリックなムードを醸すヴォーカル、ウェイン・ショーターら大御所たちが紡ぐコクのある音色も作品に深みを与えていて素晴らしい。 *桑原

 

MAC DEMARCO This Old Dog Captured Tracks/ディスクユニオン(2017)

日常の中の非日常めいたフォーキーなサウンドを持ち味とする、現代最高峰のアシッド詩人。彼の楽曲には良い意味で微妙な違和感が常に漂っているのだが、それはニール・ヤングやザ・バンドと同じく、カナダ人ゆえの〈よそ者から見たアメリカ〉を描いているからなのかもしれない。 *北爪

 

VALERIE JUNE The Order Of Time Concord/HOSTESS(2017)

ダン・オーバックのプロデュースによる初作が広く話題を呼んだヴァレリー嬢。コンコードに移籍して発表したこの2作目でもアーシーでオーガニックなサウンドをどこまでもヒップに響かせてしまう、ユニークな才能は健在だ。ハイ・サウンドとカントリーを繋ぎ合わせた“Got Soul”とか最高すぎるね。 *桑原

 

HOWE GELB Future Standards Fire(2017)

〈砂漠のルー・リード〉なんて異名を持つヴェテラン歌手の最新作は、ニーコ・ケースも御用達のウェイヴラボにてレコーディング。従来のアウトロー・カントリー/フォークな表情はほどほどに、フランク・シナトラばりの歌唱を披露し、昨今のディランによるスタンダード集みたいな趣だ。 *赤瀧

 

COCO HAMES Coco Hames Merge/BIG NOTHING(2017)

エッツのヴォーカリストによる初のソロ作。旧知のジャック・ローレンス(ラカンターズ)も客演しているが、本隊のようなガレージ・ロック味じゃなく、パッツィー・クラインやボビー・ジェントリー由来のカントリー・ポップなアレンジが効いていて楽しい。現在の拠点がナッシュヴィルというのも納得。 *北爪

 

ANGELICA GARCIA Medicine For Birds Warner Bros.(2016)

ワーナーがプッシュするLA育ちの新世代シンガー・ソングライターが放ったデビュー作。ブルースやカントリー、オールド・ロックのエッセンスをベースにし、ダークで不穏な空気を醸し出していくあたり、もしくは夢幻的なサウンドスケープを広げていくあたりが魅力で、彼女の非凡さを感じる。 *桑原