ただ騒ぐだけの時間はもう終わりだ! 戦いの舞台をメジャーへ移し、20代最後の夏がいま始まる! この圧倒的な風格と仄かな感傷を纏った歌の力はどうよ!?

 2003年にボルティモアで産声を上げ、これまでに6枚のアルバムを発表してきたオール・タイム・ロウ(以下、ATL)。全米チャートでキャリア最高位となる2位を記録した前作『Future Hearts』(2015年)をステップに、この4人組がフェルド・バイ・ラーメンへ移籍して注目のニュー・アルバム『Last Young Renegade』を完成させた。「ATLを始めてから間もなく15年になる。しかも、今年はメンバーにとって20代最後の年だ。だから新しいことにトライして、自分たちの可能性をもっと広げたかった」(アレックス・ガスカース、ヴォーカル:以下同)との発言通り、十八番のポジティヴ&キャッチーなパンク・チューンのみならず、本作では音楽性の振り幅をグンと広げているのが印象的だ。

ALL TIME LOW Last Young Renegade Fueled By Ramen/ワーナー(2017)

 「アルバムを繋ぎ合わせている要素のひとつが〈ヴィンテージ感〉だ。古いアナログ・シンセを使って、80年代のサウンドを採り入れたよ」。

 その80s感は青春時代の恋愛模様を描いた表題曲で顕著に表れており、シンディ・ローパーを比較対象に挙げたくなるほど、カラフルな煌めきと切なさが同居した興味深い出来に。全体的にアップテンポで突っ走るよりもミディアムでしっかり聴かせる曲が目立ち、ワンリパブリックのお株を奪うゴスペリッシュなハイブリッド・ポップ“Life Of The Party”や、トロピカル・ハウス気分を漂わせた先行シングル“Dirty Laundry”などなど、きっとファンにとって今回はサプライズの連続なんじゃないだろうか。

 「過去数年で俺たちのショウの規模は大きくなり、アリーナや大型フェスでも演奏する機会が増えたんだ。そういう状況も踏まえ、このアルバムでは大きな会場に映えるサウンドをめざした。ATLがこれまでに発表してきた作品を超越するような、〈大作〉と呼べるナンバーを作りたかったんだ。制作に取り掛かるにあたって、まずそこにフォーカスしたよ」。

 『Last Young Renegade』での大作志向は、アレックスのヴォーカル・スタイルにもあきらかな変化をもたらしている。メランコリックなムードを湛え、スケール感も格段にアップしているのだ。

 「新作ではいままでよりもダークで、物悲しいテーマを開拓した気がしている。それは俺たちがあまりやってこなかった、ちょっと新しい領域なんだよ。うん、だからその雰囲気に合わせて俺のヴォーカルも少し変化させたんだ。曲に宿る感情をより正確に表現するためにね。俺はシンガーとして自分を向上させたいし、よりダイナミックなパフォーマーになりたいんだよ」。

 〈新しい領域〉という意味では、浮遊感のあるエレポップ・サウンドに乗せてティーガン&サラと声を交えた“Ground Control”も然り。意外な組み合わせのように思えるが、もともとアレックスは彼女たちの大ファンだったらしく……。

 「“Ground Control”を書き上げた瞬間、これはデュエットにする必要があると思ったんだ。と同時にティーガン&サラの名前が頭に浮かんだ。彼女たちの作る音楽要素がすでにこの曲の中から感じられたからな。でも面識は一切なく、とりあえずダイレクト・メールを送ってみたら、運良く2人も乗り気になってくれた。彼女たちのおかげで本当にフレッシュで素晴らしい曲になったよ」。

 メジャーの舞台で勝負するに相応しい間口の広さが魅力の本作を携え、8月には〈サマソニ〉出演のため今年2度目の来日を果たすATL。〈大きな会場に映えるサウンド〉を意識したと言うからからには、ぜひ生でも聴きたいものだ。

オール・タイム・ロウのアルバム。

 

関連盤を紹介。