聖俗を股にかけ、エイコンに通じるヒップホップ×レゲエ的なスタイルを下地にしてジョン・レジェンド似の燻し声で歌う奇才が、ホセ・ジェイムズ近作への関与などを経て4年ぶりに放つメジャー2作目(通算4作目)。ハーモニー・サミュエルズと手掛けた冒頭曲からアクの強いヴォーカルは不変で、テイク6名曲のアカペラをイントロで引用したサラーム・レミ制作のシングル“Gonna Be Alright”も出世曲“Beautiful”をビルドアップしたようなピアノ伴奏のビート・チューンで前作との連続性を感じさせる。ジャズミン・サリヴァンを迎えた“Loved By You”や“Still”といったDマイルとの共同制作によるバラードではピラーナヘッドによる美しいストリングスに包まれて清らかに歌い込み、一方でラップを交えた曲やピート・マーティン制作のUK録音曲も披露。近年のゴスペルに顕著なギター弾き語りもあるが、ジェネイ・アイコとの“Contradiction”では、それをミニマルな方向に推し進めて熱演するなど、地味に革新的な一枚だ。